とある英雄達の最終兵器
第95話 幼々女イン幼女
「ホホ、案ずるより産むが易し。まずは試してみるかの。その前にその状態になったからには、多少強くもなっとるじゃろ? むしろその状態で変わっていなかったら詐欺じゃの」
モヨモトのその言葉に大きく頷く師匠達4人。
(む、無駄なプレッシャーかけよって……)
ギュッギュとこっそり手の平を開け閉めするテュール。
「フ。そうだな、是非見てみたいな。ミア? パパが今から格好いいところを見せてくれるみたいだぞ? 見たいか?」
レフィーが今なおリビングをポメベロスと走り回っているウーミアに尋ねる。その言葉にキョトンと目を丸くしたウーミアは慌てて――。
「みるー! ぽめめとみぃいくー!」
「「「アウッ!」」」
テュールの胸に飛び込みながらそんなことを言う。
(ハ、ハードルが増えた……)
そのキラキラした笑顔にテュールは苦笑いを浮かべるのであった。
そして、テュール達は地下にある訓練用ダンジョンへと向かう。当然他のメンバーも野次馬根性全開でついてくる。
「楽しみだなぁー、強いんだろうなぁ。一児のパパになったテュールセンパイは強いんだろうなぁ」
「楽しみだねー。当然だよー。こんなキラキラした目のウーミアを前に頑張らないわけがないからねー」
「あぁ、楽しみだ。龍族の一員になったからにはそれなりのもんを見せてもらわねぇとなぁー」
テップ、ヴァナル、アンフィスは階段を下りている最中もテュールを煽る。ひたすらに煽る。
(クッ、こやつら……好き放題言いよってからにぃー……! ぐぬぬぬぬぬ)
「パパーどうちたの? いたいのー?」
額に皺を寄せ、口を固く結んだテュールに、腕の中のウーミアが手を伸ばし、心配そうにさすってくる。
「あぁ、ミアありがとう。ミアは優しいなぁ。後ろの男の人たちみたいに意地悪になっちゃダメだぞー?」
「? うん」
あまりピンときていない様子のウーミアは首を少し傾げた後、とりあえずの返事を返している。そして、テュールは自分の娘をミアと呼ぶことにしたようだ。対して重要ではないが。
(……。なんだか今失礼なことを誰かに言われた気が……。気のせいか……?)
「うぁー、ひろい!」
階段を降りきると、ウーミア達の目の前に広がる広大なダンジョン。
「ホホ。さて、んじゃまぁ早速性能ちえっくと行こうかの」
(なんだよ。ちえっくって……)
おちゃめなモヨモトの一言にげんなりした様子のテュールはやれやれとかぶりを振る。
「ま、ともかく戦ってみるのが一番早いじゃろ。誰か立候補する者はおらんか?」
モヨモトが一同を見渡し、テュールの訓練相手、もといイジメる相手を募る。
「はいはいはーい!」
「……」
猫撫で声の可愛らしい声色で元気よく手を上げた者が一人と、無言――されどその小さな手の平は天に届かんとばかりに突き上げ挙手するものが一人。
「ホホ、リオンとレーベか。適任じゃの。まずは肉体面のちえっくじゃな」
「うっしテュール。肉体の限界を確認すっぞ」
「ししょー倒す」
(あれ? ちょっと違わない? 限界なの? 限界までいくの? あと、レーベ? バトル展開になるときだけ急に目を輝かすのやめよ?)
言ったからには本気で試してくるリオンとすっかり闘志を燃やしているレーベを前に冷や汗を流すテュール。
「お、お手柔らかに頼むよ? その、ミアもいるし、あんまりな?」
「おう、任せろ。殺しはしねぇよ」
「大丈夫。ししょーは死なない」
(ダメだこりゃ。あとレーベさんその後に続く言葉は俺の祖国では、あたしが守るもの、なんですけど……。はい、守る気はないっすよねぇー)
そしてそんな二人を前に覚悟を決めたテュールは死んだ魚の目でレフィーを見つめ、ウーミアを託す。これが今生の別れにならないことを祈るばかりである。
「さ、ミア。パパを応援しような?」
「がんばえー!」
「うぅー、リリスがうーちゃん抱っこして応援したいのだー!」
そして、レフィーの隣でずっと物欲しそうな目をしていたリリスはついにこのタイミングで我慢できなくなり、ウーミアをねだる。レフィーは、一つ頷きウーミアをリリスにそっと手渡す。ウーミアはキョトンとするも特に抵抗はないようでされるがままだ。そして、ここに幼々女イン幼女が完成した。
(この絵は、何ていうかもうおままごとだな……)
「さて、じゃあ開始な」
テュールがそんなリリスとウーミアを眺めている間に開始の確認もせずリオンはそう言うや否やまっすぐに駆けていく。
「まずぁ挨拶だ。避けんなよ?」
ニヤっと獰猛に笑ったリオンが大きく振りかぶったテレフォンパンチをテュールの腹に突き刺そうとする。
「無茶言いやがって。オラッ!!」
この状況でリオンがフェイントなどを入れることなどないと分かっているテュールは指示通り避けずに軌道そのままの位置、つまり腹に全力で力を入れる。
「うわぁ」
拳と腹がぶつかった時に生じる音と衝撃とは思えないものが、50m程離れて見ていた者たちまで届き、ウーミアがその驚きに声を上げる。
「ほーぅ。突き抜けてねぇか。まずは丈夫にはなったみてぇだな」
(え? 突き抜かす気でかましたんですか? 正気ですか? いえ、今更ですよねぇ)
「次は反応速度だ。レーベ合わせろ」
「ん」
リオンの言葉にレーベが頷くとトップスピードに乗った二人の乱打が始まる。
「ぬっ、がっ、い、や、む、り、だけ、ど、む、り、じゃ、ない!」
流石は祖父と孫という息のあった連携で攻撃をしてくる二人を捌き切るテュール。
「ししょー速い、あと硬い」
(速くて、硬いか……。速いは不本意だが硬いのは良しとしよう。いやぁ柔らかいじゃなくてよかった……)
「だが、短いな」
「何が!?」
まるで心を読んだようなタイミングのリオンの声に思わず声をあげてしまうテュール。
「ナニがって、そりゃぁ――手足だよ」
そう言うとレーベのハイキックを防いだ腕のその上からリオンが殴り掛かる。当然テュールの腕は伸びないため、リオンの振り下ろす一撃を喰らうかに思われたが――。
「ほぅ。中々便利じゃねぇか。それに腕よりかてぇな」
テュールは翼でその一撃を防ぐ。
「うらやましい。私も欲しい」
(いやいやいや、やめなさい)
「そこだ! えい! やあ!」
遠くの方で観戦しているウーミアはリリスの上に立ち上がり、蹴ったり殴ったりとシャドーボクシングをし始めたようだ。リリスはどうしていいか分からず、やめるのだー、座るのだー、とあたふたしている。当然誰も助けようとはしていない。そう、ここは修羅の国なのである。
(いや、セシリアとカグヤあたりは助けてやれよ……。いや、カメラ型魔道具で動画撮ってやがりますね……はい)
「ほぅ。わりと本気だが、よそ見する余裕まであるのか。なら、いいな? おいレーベ」
「ん」
二人は一度下がり――。
「レーベ40倍だ」
「ん」
その4つの手の平に幾重もの魔法陣を描く。
「さ、テュール。ここからが本番だぜ?」
「あ、あの俺も獣王拳使って――。いえ、なんでもないです、はい」
リオンとレーベ、そして周りからの無言のプレッシャーに逆らえずテュールは何度めかの覚悟を決め、気合を入れ直す。
(き、気合でどうにかなるんかなぁ……)
モヨモトのその言葉に大きく頷く師匠達4人。
(む、無駄なプレッシャーかけよって……)
ギュッギュとこっそり手の平を開け閉めするテュール。
「フ。そうだな、是非見てみたいな。ミア? パパが今から格好いいところを見せてくれるみたいだぞ? 見たいか?」
レフィーが今なおリビングをポメベロスと走り回っているウーミアに尋ねる。その言葉にキョトンと目を丸くしたウーミアは慌てて――。
「みるー! ぽめめとみぃいくー!」
「「「アウッ!」」」
テュールの胸に飛び込みながらそんなことを言う。
(ハ、ハードルが増えた……)
そのキラキラした笑顔にテュールは苦笑いを浮かべるのであった。
そして、テュール達は地下にある訓練用ダンジョンへと向かう。当然他のメンバーも野次馬根性全開でついてくる。
「楽しみだなぁー、強いんだろうなぁ。一児のパパになったテュールセンパイは強いんだろうなぁ」
「楽しみだねー。当然だよー。こんなキラキラした目のウーミアを前に頑張らないわけがないからねー」
「あぁ、楽しみだ。龍族の一員になったからにはそれなりのもんを見せてもらわねぇとなぁー」
テップ、ヴァナル、アンフィスは階段を下りている最中もテュールを煽る。ひたすらに煽る。
(クッ、こやつら……好き放題言いよってからにぃー……! ぐぬぬぬぬぬ)
「パパーどうちたの? いたいのー?」
額に皺を寄せ、口を固く結んだテュールに、腕の中のウーミアが手を伸ばし、心配そうにさすってくる。
「あぁ、ミアありがとう。ミアは優しいなぁ。後ろの男の人たちみたいに意地悪になっちゃダメだぞー?」
「? うん」
あまりピンときていない様子のウーミアは首を少し傾げた後、とりあえずの返事を返している。そして、テュールは自分の娘をミアと呼ぶことにしたようだ。対して重要ではないが。
(……。なんだか今失礼なことを誰かに言われた気が……。気のせいか……?)
「うぁー、ひろい!」
階段を降りきると、ウーミア達の目の前に広がる広大なダンジョン。
「ホホ。さて、んじゃまぁ早速性能ちえっくと行こうかの」
(なんだよ。ちえっくって……)
おちゃめなモヨモトの一言にげんなりした様子のテュールはやれやれとかぶりを振る。
「ま、ともかく戦ってみるのが一番早いじゃろ。誰か立候補する者はおらんか?」
モヨモトが一同を見渡し、テュールの訓練相手、もといイジメる相手を募る。
「はいはいはーい!」
「……」
猫撫で声の可愛らしい声色で元気よく手を上げた者が一人と、無言――されどその小さな手の平は天に届かんとばかりに突き上げ挙手するものが一人。
「ホホ、リオンとレーベか。適任じゃの。まずは肉体面のちえっくじゃな」
「うっしテュール。肉体の限界を確認すっぞ」
「ししょー倒す」
(あれ? ちょっと違わない? 限界なの? 限界までいくの? あと、レーベ? バトル展開になるときだけ急に目を輝かすのやめよ?)
言ったからには本気で試してくるリオンとすっかり闘志を燃やしているレーベを前に冷や汗を流すテュール。
「お、お手柔らかに頼むよ? その、ミアもいるし、あんまりな?」
「おう、任せろ。殺しはしねぇよ」
「大丈夫。ししょーは死なない」
(ダメだこりゃ。あとレーベさんその後に続く言葉は俺の祖国では、あたしが守るもの、なんですけど……。はい、守る気はないっすよねぇー)
そしてそんな二人を前に覚悟を決めたテュールは死んだ魚の目でレフィーを見つめ、ウーミアを託す。これが今生の別れにならないことを祈るばかりである。
「さ、ミア。パパを応援しような?」
「がんばえー!」
「うぅー、リリスがうーちゃん抱っこして応援したいのだー!」
そして、レフィーの隣でずっと物欲しそうな目をしていたリリスはついにこのタイミングで我慢できなくなり、ウーミアをねだる。レフィーは、一つ頷きウーミアをリリスにそっと手渡す。ウーミアはキョトンとするも特に抵抗はないようでされるがままだ。そして、ここに幼々女イン幼女が完成した。
(この絵は、何ていうかもうおままごとだな……)
「さて、じゃあ開始な」
テュールがそんなリリスとウーミアを眺めている間に開始の確認もせずリオンはそう言うや否やまっすぐに駆けていく。
「まずぁ挨拶だ。避けんなよ?」
ニヤっと獰猛に笑ったリオンが大きく振りかぶったテレフォンパンチをテュールの腹に突き刺そうとする。
「無茶言いやがって。オラッ!!」
この状況でリオンがフェイントなどを入れることなどないと分かっているテュールは指示通り避けずに軌道そのままの位置、つまり腹に全力で力を入れる。
「うわぁ」
拳と腹がぶつかった時に生じる音と衝撃とは思えないものが、50m程離れて見ていた者たちまで届き、ウーミアがその驚きに声を上げる。
「ほーぅ。突き抜けてねぇか。まずは丈夫にはなったみてぇだな」
(え? 突き抜かす気でかましたんですか? 正気ですか? いえ、今更ですよねぇ)
「次は反応速度だ。レーベ合わせろ」
「ん」
リオンの言葉にレーベが頷くとトップスピードに乗った二人の乱打が始まる。
「ぬっ、がっ、い、や、む、り、だけ、ど、む、り、じゃ、ない!」
流石は祖父と孫という息のあった連携で攻撃をしてくる二人を捌き切るテュール。
「ししょー速い、あと硬い」
(速くて、硬いか……。速いは不本意だが硬いのは良しとしよう。いやぁ柔らかいじゃなくてよかった……)
「だが、短いな」
「何が!?」
まるで心を読んだようなタイミングのリオンの声に思わず声をあげてしまうテュール。
「ナニがって、そりゃぁ――手足だよ」
そう言うとレーベのハイキックを防いだ腕のその上からリオンが殴り掛かる。当然テュールの腕は伸びないため、リオンの振り下ろす一撃を喰らうかに思われたが――。
「ほぅ。中々便利じゃねぇか。それに腕よりかてぇな」
テュールは翼でその一撃を防ぐ。
「うらやましい。私も欲しい」
(いやいやいや、やめなさい)
「そこだ! えい! やあ!」
遠くの方で観戦しているウーミアはリリスの上に立ち上がり、蹴ったり殴ったりとシャドーボクシングをし始めたようだ。リリスはどうしていいか分からず、やめるのだー、座るのだー、とあたふたしている。当然誰も助けようとはしていない。そう、ここは修羅の国なのである。
(いや、セシリアとカグヤあたりは助けてやれよ……。いや、カメラ型魔道具で動画撮ってやがりますね……はい)
「ほぅ。わりと本気だが、よそ見する余裕まであるのか。なら、いいな? おいレーベ」
「ん」
二人は一度下がり――。
「レーベ40倍だ」
「ん」
その4つの手の平に幾重もの魔法陣を描く。
「さ、テュール。ここからが本番だぜ?」
「あ、あの俺も獣王拳使って――。いえ、なんでもないです、はい」
リオンとレーベ、そして周りからの無言のプレッシャーに逆らえずテュールは何度めかの覚悟を決め、気合を入れ直す。
(き、気合でどうにかなるんかなぁ……)
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