とある英雄達の最終兵器
第27話 大魔王は仲間を呼んだ。大魔王Bが現れた。大魔王Cが現れた。
テュール達は西の森に身を潜めほとぼりが冷めるのを待つ。
その間に簡単に自己紹介をし、時間を潰す。
「それでレフィー、いつにするんだ?」
テュールは、レフィーの裸を見た償いとしての一日レンタルの日取りを確認する。
「あぁ、すまない。まだ正確な日付が分からない。今日明日の話ではないな。分かり次第ギルドに言付けでも頼むとしよう」
「ん、了解した」
それからは暫く他愛もない会話が続き、平原から人がいなくなったことを確認すると──。
「さて、じゃあ俺達もそろそろ戻るか。レフィーはどうする?」
「そうだな。私は別行動を取るとしよう。テュール、アンフィス、ヴァナル、ベリト、本当に助かった。ありがとう」
そう言って頭を下げた後、レフィーは歩き出す。レフィーを見送ってから四人も市門へと向かう。
「ん、止まれ。身分を証明できるものを見せてもらおう」
見たことのない門兵がそう言う。
はい、と言って四人は仮の入場パスを見せる。それを受け取った門兵は少し待っていろと四枚の入場パスを調べ──。
「よし、通っていいぞ。にしてもお前たちこんな日に外にいて無事とは運がいいな」
「何かあったんですか?」
テュールが素知らぬ顔で尋ねる。
「あぁ、滅多にないことなのだが今日西の平原に成龍になったばかりの龍が現れてな。幸い街や人の被害はなかったようだ。どうやら高位の魔術師が相手したみたいだが詳しい話は俺のとこには来てないな。お前らも気をつけろよ?」
「へぇ、そんなことが……それは怖いですね。ありがとうございます。気をつけます」
神妙な顔つきでテュールがそう答え、一行は街へと入る。
「ふぅー……。さて、なんとかなったな。これからどうしようか」
テュールの問いかけにとりあえず次の仕事を見つけるためにギルドへ行こうと三人は言い出す。
しかし、テュールはこめかみから一筋の汗を流し、その提案に反対する。
「ギルドは明日でもいいんじゃないか? 今日は戦闘もしたし、結構走ったし? お金はほらお前ら稼いだ分で一泊くらいなんとでもなるだろ? な?」
ガシッ。
しかし、実に楽しそうな笑みでヴァナルとアンフィスが両側からテュールの腕を拘束する。ズルズルと引かれはじめるテュール。まるで市場へと出荷されていく仔牛の如き、深い悲しみを覚えたテュールは日本にいた頃の歌を口ずさむ。謎の歌詞と悲しい旋律がリバティに響き渡った瞬間であった。
そしてギルドの前に到着する四人。キィ、ほんの少し隙間を開け中を覗き見るテュール。かなりカッコ悪い。
後ろからアンフィスがテュールの尻を蹴る。
バタンっ。扉が押されテュールがたたらを踏みながらギルドという名の戦場に戻ってくる。
「あー、テューくん!」「テュールさんっ!」「テュール君!」
どうやら三人はまだギルドにいたようだ。
「や、やぁ」
と、引きつった顔で片手を上げるテュール。
そして、そんなテュールに三人は近寄ってきて目をキラキラさせながら──。
「「「リリスたち友達になったのだ!(なりましたの!)(なったの!)」」」
と宣言してくる。ネー! とかいいながらキャピキャピワイワイしている。
とりあえず先程までの不穏な空気はないようでテュールは安心した。
「そ、そりゃ良かった! それがいい! うんうん、友達ってのはいいもんだよな! 俺もみんなが仲良くなってくれて嬉しいよ、ハハハハー」
ピクッ。しかし、平穏はいつでも危ういバランスの上に成り立っているものだ。
先程まで仲良く楽しげに笑っていたリリスが動きを止めて怪訝な表情をする。
「テューくんから知らない女の匂いがする──」
キィ、ギルドの扉が開く音がしてベリト達は今入ってきた人物と話し始めたようだが、テュールはそんなことに意識を割く余裕はない。
ピタッ。リリスの言葉を受け、セシリアとカグヤの動きが止まる。そして無言でつかつかとクロスレンジまで距離を詰めてくる。そしてスンスンと鼻をひくつかせる。
「ホントですね──」
「ホントね──」
至近距離からどういうことなの? という目つきで見上げてくる二人。
「あはははー、アレかな? 住民の避難を手伝っている時お婆さんを背負ったからかなー? あのお婆さんいい匂いだったなー。確か薬師してるって言ってたなー。そこで色々なハーブを取り扱ってるみたいでな? ハハハハー」
テュールは会心の言い訳をする。テュールにしてみれば、よくこれがスラッと出てきたもんだ、と褒めて欲しいくらいだ。しかし当然三人はジト目で疑惑の眼差しをテュールに向ける。テュールはまるで裁きを下される犯罪者のような気持ちで手のひらに汗が溜まっていくのが分かる。
「うしっ、ガキどもそこまでだ。おいテュール? その住民の避難の話をききてぇ。詰め所まで来てくれるか?」
どうやら先程扉から入ってきたのはウェッジだったようだ。テュールに有無を言わぬ声でそう言い、不自然なくらいニッコリと笑っている。
「おや、テュール様お呼びみたいですね? いってらっしゃいませ」
「「いってらっさーい」」
他人事のようにベリト達三人が送り出そうとする。
「おめぇらもだからな?」
ウェッジがこめかみに青筋を立てて笑いながら宣言する。
三人は半ば覚悟してたからかヤレヤレといった様子で従う。
そしてリリス、セシリア、カグヤの三人も笑顔でテュール達一行を見送る。有耶無耶になんてなりませんからね~? 帰ってきてから話を聞くのだ! フフ、待ってるねっ! そう言い残して……。
テュールはこれならウェッジについていった方がいいな、とそう思ってしまった。それがほんのひと時の逃避だと分かっていても。
「んじゃ、行くぞ?」
こうしてウェッジと四人は何度目かの詰め所へと向かうのであった。
その間に簡単に自己紹介をし、時間を潰す。
「それでレフィー、いつにするんだ?」
テュールは、レフィーの裸を見た償いとしての一日レンタルの日取りを確認する。
「あぁ、すまない。まだ正確な日付が分からない。今日明日の話ではないな。分かり次第ギルドに言付けでも頼むとしよう」
「ん、了解した」
それからは暫く他愛もない会話が続き、平原から人がいなくなったことを確認すると──。
「さて、じゃあ俺達もそろそろ戻るか。レフィーはどうする?」
「そうだな。私は別行動を取るとしよう。テュール、アンフィス、ヴァナル、ベリト、本当に助かった。ありがとう」
そう言って頭を下げた後、レフィーは歩き出す。レフィーを見送ってから四人も市門へと向かう。
「ん、止まれ。身分を証明できるものを見せてもらおう」
見たことのない門兵がそう言う。
はい、と言って四人は仮の入場パスを見せる。それを受け取った門兵は少し待っていろと四枚の入場パスを調べ──。
「よし、通っていいぞ。にしてもお前たちこんな日に外にいて無事とは運がいいな」
「何かあったんですか?」
テュールが素知らぬ顔で尋ねる。
「あぁ、滅多にないことなのだが今日西の平原に成龍になったばかりの龍が現れてな。幸い街や人の被害はなかったようだ。どうやら高位の魔術師が相手したみたいだが詳しい話は俺のとこには来てないな。お前らも気をつけろよ?」
「へぇ、そんなことが……それは怖いですね。ありがとうございます。気をつけます」
神妙な顔つきでテュールがそう答え、一行は街へと入る。
「ふぅー……。さて、なんとかなったな。これからどうしようか」
テュールの問いかけにとりあえず次の仕事を見つけるためにギルドへ行こうと三人は言い出す。
しかし、テュールはこめかみから一筋の汗を流し、その提案に反対する。
「ギルドは明日でもいいんじゃないか? 今日は戦闘もしたし、結構走ったし? お金はほらお前ら稼いだ分で一泊くらいなんとでもなるだろ? な?」
ガシッ。
しかし、実に楽しそうな笑みでヴァナルとアンフィスが両側からテュールの腕を拘束する。ズルズルと引かれはじめるテュール。まるで市場へと出荷されていく仔牛の如き、深い悲しみを覚えたテュールは日本にいた頃の歌を口ずさむ。謎の歌詞と悲しい旋律がリバティに響き渡った瞬間であった。
そしてギルドの前に到着する四人。キィ、ほんの少し隙間を開け中を覗き見るテュール。かなりカッコ悪い。
後ろからアンフィスがテュールの尻を蹴る。
バタンっ。扉が押されテュールがたたらを踏みながらギルドという名の戦場に戻ってくる。
「あー、テューくん!」「テュールさんっ!」「テュール君!」
どうやら三人はまだギルドにいたようだ。
「や、やぁ」
と、引きつった顔で片手を上げるテュール。
そして、そんなテュールに三人は近寄ってきて目をキラキラさせながら──。
「「「リリスたち友達になったのだ!(なりましたの!)(なったの!)」」」
と宣言してくる。ネー! とかいいながらキャピキャピワイワイしている。
とりあえず先程までの不穏な空気はないようでテュールは安心した。
「そ、そりゃ良かった! それがいい! うんうん、友達ってのはいいもんだよな! 俺もみんなが仲良くなってくれて嬉しいよ、ハハハハー」
ピクッ。しかし、平穏はいつでも危ういバランスの上に成り立っているものだ。
先程まで仲良く楽しげに笑っていたリリスが動きを止めて怪訝な表情をする。
「テューくんから知らない女の匂いがする──」
キィ、ギルドの扉が開く音がしてベリト達は今入ってきた人物と話し始めたようだが、テュールはそんなことに意識を割く余裕はない。
ピタッ。リリスの言葉を受け、セシリアとカグヤの動きが止まる。そして無言でつかつかとクロスレンジまで距離を詰めてくる。そしてスンスンと鼻をひくつかせる。
「ホントですね──」
「ホントね──」
至近距離からどういうことなの? という目つきで見上げてくる二人。
「あはははー、アレかな? 住民の避難を手伝っている時お婆さんを背負ったからかなー? あのお婆さんいい匂いだったなー。確か薬師してるって言ってたなー。そこで色々なハーブを取り扱ってるみたいでな? ハハハハー」
テュールは会心の言い訳をする。テュールにしてみれば、よくこれがスラッと出てきたもんだ、と褒めて欲しいくらいだ。しかし当然三人はジト目で疑惑の眼差しをテュールに向ける。テュールはまるで裁きを下される犯罪者のような気持ちで手のひらに汗が溜まっていくのが分かる。
「うしっ、ガキどもそこまでだ。おいテュール? その住民の避難の話をききてぇ。詰め所まで来てくれるか?」
どうやら先程扉から入ってきたのはウェッジだったようだ。テュールに有無を言わぬ声でそう言い、不自然なくらいニッコリと笑っている。
「おや、テュール様お呼びみたいですね? いってらっしゃいませ」
「「いってらっさーい」」
他人事のようにベリト達三人が送り出そうとする。
「おめぇらもだからな?」
ウェッジがこめかみに青筋を立てて笑いながら宣言する。
三人は半ば覚悟してたからかヤレヤレといった様子で従う。
そしてリリス、セシリア、カグヤの三人も笑顔でテュール達一行を見送る。有耶無耶になんてなりませんからね~? 帰ってきてから話を聞くのだ! フフ、待ってるねっ! そう言い残して……。
テュールはこれならウェッジについていった方がいいな、とそう思ってしまった。それがほんのひと時の逃避だと分かっていても。
「んじゃ、行くぞ?」
こうしてウェッジと四人は何度目かの詰め所へと向かうのであった。
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