とある英雄達の最終兵器
第10話 マサチューセッツ工科大学!マサチューセッツ工科大学!マサチューセッチュ──
それから数日間テュールはリハビリがてら身体を軽く動かし、獣王拳の魔法陣をせっせと覚える。ちなみに軽く動かし、が文字通り軽いわけがないのは言うまでもない。
そんなテュールだが魔法陣には幼少の頃から慣れ親しんでいるため五m級の二重詠唱まではあっという間に覚えることができた。ニ十倍になる三重詠唱、四十倍になる四重詠唱は、難易度が桁違いに上がるため、またしばしの時間がかかりそうだ。
だが、とりあえず五m級の獣王拳を覚え調子に乗ったテュールは──。
「アンフィスー。勝負しようぜ?」
「ん? いいぜ!」
大人げなくアンフィスに喧嘩を売った。
当然、アンフィスはテュールが獣王拳を使うという情報を知らなかったため、目を白黒させ地面を舐めることとなった。
「ふふん。アンフィス君? まだまだ修行が足らんようだね。ヴァナル! 勝負だ!」
「う~ん。いいよー?」
先の戦いを見て警戒したヴァナルは最初から巨大な銀狼へと姿を変えていた。当然、身体能力が十倍になったくらいでは勝てるはずもなかった。ちなみにベリトには挑むことすらしていない。
(いや、しかし四十倍まで覚えればこの怪物コンビを倒せるんじゃないか? それでもベリトには勝てるビジョンが浮かばないが……)
世代ランキングに対し希望が見えたことに喜びを覚えるテュールだが、それでも尚執事には及び腰である。
ちなみにルチアにボコボコにされたリオンは自然治癒力のみで全快した。それも一日で……。ルチアも当然リオンの自然治癒力は知っているので念入りにぶっ叩いたのだが流石はリオンと言うほかない。
さて、そんなルチアが今日は子供たち四人を集めて話があるということで居間に集合をかけた。
「ルチア揃ったよ」
テュールが他の三人とともに居間へと入る。
「あぁ、ほら四人とも座りな。お茶でも飲みながら話そうかね」
そう言われるより前にベリトが手際よく五人分の茶器を用意し、紅茶を淹れていたのは誰もツッコまなかった。そしてベリトがそれぞれの前に紅茶を置いていく。
「ん、ありがとう」
ルチアはそう言ってから紅茶を一口飲み、ベリトにいつも通り美味しいと褒めてみせた後、言葉を続ける。
「テュール、あんたはこの先の人生どうしたいか考えているかい?」
(この先……? この先か……)
テュールは唐突な質問に少し驚く。だが、そんなことを考えていなかったわけでもない。
「正直なところを言えば……まだ分からない。ただ、漠然とこの島以外の場所も見てみたいとは思っている」
「フフ、そうかい。まぁ、はっきり決まってないならそれでもいいさね。さて、これはあたしからのお節介な提案だが……十五になったら学校に通ってみるってのはどうだい?」
「学校……」
その言葉を聞き、テュールは気持ちが少し昂揚する。ロディニア大陸には学校がいくつかあることは文献で知っていた。もし行けたら前世での灰色の青春時代を鮮やかに塗り替えられる。そう思ったこともあったのだ。
「そう、学校さ。あんたと同じくらいの子達がたくさんいるね。もちろんその学校がある街に住めばそれ以外のヤツだってたくさんいるさね。どうだい?」
そう尋ねてくるルチア。その表情はニヤけている。テュールがワクワクしているのを隠せていないのが可笑しいのだろう。
「みんなはどうしたい? 俺は正直学校行くのもアリっていうより、まぁ、その、行ってみたい気持ちが大きいんだが……」
「俺はいいぜ! 強いヤツがいるならもっといいな!」
そう答えるアンフィス。
「テュールが行くならボクも当然付いていくよー? 折角こっちの世界に来たからこの島以外も見てみたいしねー」
続くヴァナル。
「当然私もテュール様にお伴しますからね? 護衛から身の回りのお世話まで任せて下さい。何と言っても執事ですからフフフフ」
よほど執事ごっこが楽しいのかベリトはあくまでテュールに仕えている体でいる。
「そうかい、あんた達が乗り気であたしも嬉しいよ」
そんな無邪気な子供たち四人を見て、ルチアは優しい目で微笑む。
「さて、そんなあんたたちにオススメの学校があるさね。学校の名前はハルモニア、この世界で唯一の種族による差別がない都市国家リバティにある学校だよ。ただし、この学校はこの世界で最も優秀な学校だ。それとだけあって試験がとても難しい。だが、まぁあんた達なら受かると信じているさね。どうせなら一番の学校で一番をとってくるくらいしてきな」
(世界一か……。前世で言えば東大じゃなくマサチューセッツなんたらとか言うレベルか? Fラン大卒の俺が、ね……。ま、折角強くてニューゲームしてそっからブラック修行を続けてきたんだ。やってやろうじゃん)
「フフ、いい顔つきさね。そうと決まれば残りたった五年だ。あと五年であたし達が出来る限りあんた達を鍛えてやるさね、楽しみにしてな」
(あれ? まだ訓練キツくなるの? さっき決意したけど、ほら、オーバーワークはよくないって前世から身に沁みてるし……、って言っても無駄なんだろうなぁ)
さっきの決意の表情はどこ吹く風で、遠い目をして明日からの修行を想像しげんなりするテュールであった。
こうして、イルデパン島の戦力はどんどん上がっていく。なんだかんだで過保護な家族兼師匠達は自重を知らず鍛え続ける。
イルデパン島の子供四人達は自分たち四人しか子供という存在を知らないため、世界の基準がどこにあるかが分かっていない。
ましてやイルデパン島の住人はある意味でレベルが近い者ばかりのため、この世界の人間にも弱い人がいるということは知りようがなかった。
もちろん師匠たちは世界を知っているため、子供たちの力が既に規格外であることは分かっていた──が、それはあえて教えない。慢心し腐るには若すぎる、そう思っているからだ。
今は全力で鍛える。大きすぎる力に何も罪はない。その力の振るい方だけなのだ。そしてその振るい方を間違える子はウチにはいない、そして万が一間違ってしまったら全力でぶん殴って止めてやる。
そんな風にテュール達は親の愛と拳を受け止めつつ、まだ見ぬ広い世界を夢見て、今日も走り続ける。
そんなテュールだが魔法陣には幼少の頃から慣れ親しんでいるため五m級の二重詠唱まではあっという間に覚えることができた。ニ十倍になる三重詠唱、四十倍になる四重詠唱は、難易度が桁違いに上がるため、またしばしの時間がかかりそうだ。
だが、とりあえず五m級の獣王拳を覚え調子に乗ったテュールは──。
「アンフィスー。勝負しようぜ?」
「ん? いいぜ!」
大人げなくアンフィスに喧嘩を売った。
当然、アンフィスはテュールが獣王拳を使うという情報を知らなかったため、目を白黒させ地面を舐めることとなった。
「ふふん。アンフィス君? まだまだ修行が足らんようだね。ヴァナル! 勝負だ!」
「う~ん。いいよー?」
先の戦いを見て警戒したヴァナルは最初から巨大な銀狼へと姿を変えていた。当然、身体能力が十倍になったくらいでは勝てるはずもなかった。ちなみにベリトには挑むことすらしていない。
(いや、しかし四十倍まで覚えればこの怪物コンビを倒せるんじゃないか? それでもベリトには勝てるビジョンが浮かばないが……)
世代ランキングに対し希望が見えたことに喜びを覚えるテュールだが、それでも尚執事には及び腰である。
ちなみにルチアにボコボコにされたリオンは自然治癒力のみで全快した。それも一日で……。ルチアも当然リオンの自然治癒力は知っているので念入りにぶっ叩いたのだが流石はリオンと言うほかない。
さて、そんなルチアが今日は子供たち四人を集めて話があるということで居間に集合をかけた。
「ルチア揃ったよ」
テュールが他の三人とともに居間へと入る。
「あぁ、ほら四人とも座りな。お茶でも飲みながら話そうかね」
そう言われるより前にベリトが手際よく五人分の茶器を用意し、紅茶を淹れていたのは誰もツッコまなかった。そしてベリトがそれぞれの前に紅茶を置いていく。
「ん、ありがとう」
ルチアはそう言ってから紅茶を一口飲み、ベリトにいつも通り美味しいと褒めてみせた後、言葉を続ける。
「テュール、あんたはこの先の人生どうしたいか考えているかい?」
(この先……? この先か……)
テュールは唐突な質問に少し驚く。だが、そんなことを考えていなかったわけでもない。
「正直なところを言えば……まだ分からない。ただ、漠然とこの島以外の場所も見てみたいとは思っている」
「フフ、そうかい。まぁ、はっきり決まってないならそれでもいいさね。さて、これはあたしからのお節介な提案だが……十五になったら学校に通ってみるってのはどうだい?」
「学校……」
その言葉を聞き、テュールは気持ちが少し昂揚する。ロディニア大陸には学校がいくつかあることは文献で知っていた。もし行けたら前世での灰色の青春時代を鮮やかに塗り替えられる。そう思ったこともあったのだ。
「そう、学校さ。あんたと同じくらいの子達がたくさんいるね。もちろんその学校がある街に住めばそれ以外のヤツだってたくさんいるさね。どうだい?」
そう尋ねてくるルチア。その表情はニヤけている。テュールがワクワクしているのを隠せていないのが可笑しいのだろう。
「みんなはどうしたい? 俺は正直学校行くのもアリっていうより、まぁ、その、行ってみたい気持ちが大きいんだが……」
「俺はいいぜ! 強いヤツがいるならもっといいな!」
そう答えるアンフィス。
「テュールが行くならボクも当然付いていくよー? 折角こっちの世界に来たからこの島以外も見てみたいしねー」
続くヴァナル。
「当然私もテュール様にお伴しますからね? 護衛から身の回りのお世話まで任せて下さい。何と言っても執事ですからフフフフ」
よほど執事ごっこが楽しいのかベリトはあくまでテュールに仕えている体でいる。
「そうかい、あんた達が乗り気であたしも嬉しいよ」
そんな無邪気な子供たち四人を見て、ルチアは優しい目で微笑む。
「さて、そんなあんたたちにオススメの学校があるさね。学校の名前はハルモニア、この世界で唯一の種族による差別がない都市国家リバティにある学校だよ。ただし、この学校はこの世界で最も優秀な学校だ。それとだけあって試験がとても難しい。だが、まぁあんた達なら受かると信じているさね。どうせなら一番の学校で一番をとってくるくらいしてきな」
(世界一か……。前世で言えば東大じゃなくマサチューセッツなんたらとか言うレベルか? Fラン大卒の俺が、ね……。ま、折角強くてニューゲームしてそっからブラック修行を続けてきたんだ。やってやろうじゃん)
「フフ、いい顔つきさね。そうと決まれば残りたった五年だ。あと五年であたし達が出来る限りあんた達を鍛えてやるさね、楽しみにしてな」
(あれ? まだ訓練キツくなるの? さっき決意したけど、ほら、オーバーワークはよくないって前世から身に沁みてるし……、って言っても無駄なんだろうなぁ)
さっきの決意の表情はどこ吹く風で、遠い目をして明日からの修行を想像しげんなりするテュールであった。
こうして、イルデパン島の戦力はどんどん上がっていく。なんだかんだで過保護な家族兼師匠達は自重を知らず鍛え続ける。
イルデパン島の子供四人達は自分たち四人しか子供という存在を知らないため、世界の基準がどこにあるかが分かっていない。
ましてやイルデパン島の住人はある意味でレベルが近い者ばかりのため、この世界の人間にも弱い人がいるということは知りようがなかった。
もちろん師匠たちは世界を知っているため、子供たちの力が既に規格外であることは分かっていた──が、それはあえて教えない。慢心し腐るには若すぎる、そう思っているからだ。
今は全力で鍛える。大きすぎる力に何も罪はない。その力の振るい方だけなのだ。そしてその振るい方を間違える子はウチにはいない、そして万が一間違ってしまったら全力でぶん殴って止めてやる。
そんな風にテュール達は親の愛と拳を受け止めつつ、まだ見ぬ広い世界を夢見て、今日も走り続ける。
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コメント
ペンギン
全員で行くのか〜予想外だな〜w
さて、どうなることやら...w
世界るい
誤字報告ありがとうございます!イルデパン島に修正しました!(*´ω`*)
冬狸
イルデパン島がイルデパン等になっている所があります
故意的なものでしたらすみません