とある英雄達の最終兵器
第00話 青は藍よりい出て藍よりあべしっ!
それは特にいつもと変わらない朝。強いて言えばよく晴れていたとかその程度の違いだろう。
そんな日にブラック会社に勤める成人男性は会社をサボる決意をする。
毎朝六時半に起き、七時に家を出て、八時半に職場に着けばそこからは、ひたすら仕事仕事仕事、そして運が良ければ終電で帰り、運が悪ければ職場の近くのサウナで一晩を過ごす。大学を出て今の会社に勤めてから八年そんな毎日だった。
昨日は運が良かった。仕事が二十三時に片付き、自宅のベッドで休むことができたのだから。そして今朝は運が悪かった──。
もう限界だったのだ。
現在時刻は八時半、枕元に置いてあるスマートフォンがやかましく鳴り響く。男はスマホを手繰り寄せアラームを切ろうとし、そこで初めて気付く。
カーテンから漏れる光はいつもより明るく、アラーム停止ボタンの代わりに表示されている勤め先からの電話番号。
心臓が激しく高鳴る──。
(やばい、やばい、やばい、やばい、やばい!!)
とりあえず一回冷静になるためにもスマホを布団の上に投げる。深呼吸──。
(スーハー、スーハー、どうする……。体調不良でした? いやだったら出勤前に連絡するのは当然のこと。寝坊? いやいや寝坊が許されるのはホワイト企業までだ……。いや、よく考えろ、そもそもこんな生活に無理があったじゃないか? そうだよ、俺は悪くない……。オレワルクナイ、オレワルクナイ……。──よし! 今日はサボろう!)
そう決めるや否や男はスマホを手にし、相手の言葉を待たず──。
「ずみ゛ま゛ぜん゛!熱が四十一度ま゛で上がっでじま゛い゛ゲフンゲフンっ!! 意識が朦朧と……う゛ぅっ……」
プツッ、プープー。
向こうからの怒鳴り声には耳を貸さず、すぐさま通話を終わらせる。
「よし、もう知らん知らん! 後はスマホの電源切ってしまえ。はははー! これで自由だ! 俺は自由だ!! フハハハー!!」
小さなアパートの一室には不気味な高笑いが木霊していた。
さて、そんな振り切った行動を起こした男は、開き直り自由を謳歌しようと外へ出る。
雲ひとつない青空の下、閑静な住宅街にコツコツと小さな靴音だけが響く。
五分程歩いたろうか、公園が見えてくる。姿は見えずとも聞こえてくる子ども達のはしゃぎ声。
(あぁ、そうか世は日曜日だったか……。日曜日って休んでよかったのかぁ……。)
ちょっぴり情緒不安定で泣きそうになった男は日光浴でもしようと公園に入ることを決めた。
だがしかし、それは果たされずに終わることとなる。
車が二台すれ違うのも難しい路地を宅配便のトラックがすごい速さで近づいてくる。
(あ~、運送会社の運ちゃんも俺と同じブラック戦士だもんなぁ……。って、スマホいじりながら運転すんなっての……)
同情しつつもどこか他人事でトラックを視界の外にはじき、公園に入ろうとする。
ぽんっぽんっ……。
ふとそんな音が聞こえた。男は音のした方を何気なく見ると、サッカーボール程の大きさのゴムボールが公園から道路に飛び跳ねてくるのが映る。そしてそれを一心不乱に追う少女の姿も──。
(ヤバイ!!)
考えるより先に身体が動いた。
少女までの数メートルを全身発汗しながら詰める。掴む。身体を入れ替える。少女は公園の入り口まで転がる。そして代わりに男はもつれ、つまづき、道路へと転がり込む。甲高いブレーキ音が響き、音の発生源が背中に近づいてくることが分かる。
──しかし、身体が動かない。
近づいてきているのが分かるのに金縛りにあったかのように動けないでいた男の身体が遂にその瞬間を迎えてしまう。
閑静な住宅街に響く鈍い打撲音、小さな女の子の泣き声、空は憎らしいまでに青かった。
そんな日にブラック会社に勤める成人男性は会社をサボる決意をする。
毎朝六時半に起き、七時に家を出て、八時半に職場に着けばそこからは、ひたすら仕事仕事仕事、そして運が良ければ終電で帰り、運が悪ければ職場の近くのサウナで一晩を過ごす。大学を出て今の会社に勤めてから八年そんな毎日だった。
昨日は運が良かった。仕事が二十三時に片付き、自宅のベッドで休むことができたのだから。そして今朝は運が悪かった──。
もう限界だったのだ。
現在時刻は八時半、枕元に置いてあるスマートフォンがやかましく鳴り響く。男はスマホを手繰り寄せアラームを切ろうとし、そこで初めて気付く。
カーテンから漏れる光はいつもより明るく、アラーム停止ボタンの代わりに表示されている勤め先からの電話番号。
心臓が激しく高鳴る──。
(やばい、やばい、やばい、やばい、やばい!!)
とりあえず一回冷静になるためにもスマホを布団の上に投げる。深呼吸──。
(スーハー、スーハー、どうする……。体調不良でした? いやだったら出勤前に連絡するのは当然のこと。寝坊? いやいや寝坊が許されるのはホワイト企業までだ……。いや、よく考えろ、そもそもこんな生活に無理があったじゃないか? そうだよ、俺は悪くない……。オレワルクナイ、オレワルクナイ……。──よし! 今日はサボろう!)
そう決めるや否や男はスマホを手にし、相手の言葉を待たず──。
「ずみ゛ま゛ぜん゛!熱が四十一度ま゛で上がっでじま゛い゛ゲフンゲフンっ!! 意識が朦朧と……う゛ぅっ……」
プツッ、プープー。
向こうからの怒鳴り声には耳を貸さず、すぐさま通話を終わらせる。
「よし、もう知らん知らん! 後はスマホの電源切ってしまえ。はははー! これで自由だ! 俺は自由だ!! フハハハー!!」
小さなアパートの一室には不気味な高笑いが木霊していた。
さて、そんな振り切った行動を起こした男は、開き直り自由を謳歌しようと外へ出る。
雲ひとつない青空の下、閑静な住宅街にコツコツと小さな靴音だけが響く。
五分程歩いたろうか、公園が見えてくる。姿は見えずとも聞こえてくる子ども達のはしゃぎ声。
(あぁ、そうか世は日曜日だったか……。日曜日って休んでよかったのかぁ……。)
ちょっぴり情緒不安定で泣きそうになった男は日光浴でもしようと公園に入ることを決めた。
だがしかし、それは果たされずに終わることとなる。
車が二台すれ違うのも難しい路地を宅配便のトラックがすごい速さで近づいてくる。
(あ~、運送会社の運ちゃんも俺と同じブラック戦士だもんなぁ……。って、スマホいじりながら運転すんなっての……)
同情しつつもどこか他人事でトラックを視界の外にはじき、公園に入ろうとする。
ぽんっぽんっ……。
ふとそんな音が聞こえた。男は音のした方を何気なく見ると、サッカーボール程の大きさのゴムボールが公園から道路に飛び跳ねてくるのが映る。そしてそれを一心不乱に追う少女の姿も──。
(ヤバイ!!)
考えるより先に身体が動いた。
少女までの数メートルを全身発汗しながら詰める。掴む。身体を入れ替える。少女は公園の入り口まで転がる。そして代わりに男はもつれ、つまづき、道路へと転がり込む。甲高いブレーキ音が響き、音の発生源が背中に近づいてくることが分かる。
──しかし、身体が動かない。
近づいてきているのが分かるのに金縛りにあったかのように動けないでいた男の身体が遂にその瞬間を迎えてしまう。
閑静な住宅街に響く鈍い打撲音、小さな女の子の泣き声、空は憎らしいまでに青かった。
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コメント
ノベルバユーザー601400
続きが気になって面白いですね
コイズミ
続きが気になってます!
明日
パロディ要素が多くて面白かったです!イラストはプロ並みですね!
ノベルバユーザー601712
ランキングから来ました
ノベルバユーザー601233
表紙良いですね。