絶対守護者の学園生活記
約束
リリィを自分のクラスへと送り、次なる相手はアリスだ。まだ少し待ち合わせ時間まで余裕があるし迎えに行こう。
「あ、レオン君だよね? こっちこっち」
昨日と変わらず2-Aには行列が出来ていたため、大人しく列に並んでいると、このクラスの人?に声をかけられそのまま調理室へと連れていかれた。移動中に聞いた話だと、ここでクレープを作っているらしい。
さあ早く入った入ったと先程の人に急かされ、室内に押し込まれると、それではごゆっくりと言われ扉を閉められた。
「む、来たか」
中にいたのはエプロン姿のアリスだった。凄く新鮮な姿だ。
「なんか連れてこられたんだが……」
「私が頼んだからな」
「なるほど。それじゃ早速行くか?」
「少し待ってくれ。食べてもらいたい物がある」
そう言ってアリスはクレープを手渡してきた。昨日食べたのとは違って、多めのクリームにフルーツが沢山入っていてずっしりとした重さを感じる。しかし皮は焦げた部分が少しあった。
「もしかしてアリスが作ったのか?」
「そうだ。レオンに、その、食べてもらいたくて……」
恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてもじもじしている。普段の鍛錬の時の凛々しい姿とのギャップが凄くてやばい。なんていうか、やばい。
実はアリスは料理含め、家事スキルがあまり高くない。それはリリィとクーにも言えることなのだが、それ以外の嫁達は完璧と言ってもいい。
カレンは村にいた時からよく手伝いをしていたし、ミーナも愛する夫を亡くし落ち込んでいた母を少しでも助ける為に身に着けたらしい。さらにシャルは呪いによって武の道を諦め、完璧な王女を目指した際に出来るようにしたという。リーゼさんは性格からして出来るだろうなとは思ってたが、案の定だった。
クーは分かるがリリィが家事を出来ないのは、大抵ボーっとしているからだ。
そしてアリス。アリスは姉であるシャルを守る為にひたすら剣を振り続けてきた。村が消えたと聞き、俺が死んだと思ったアリスは、それを忘れる為にさらに剣を振り続けた。だからこそ家事スキルが低いのだろう。
そんなアリスだが、相棒でありライバルでもあるソフィが俺の『良き妻』であろうと女としての自分を磨き始めたことに気付き、危機感のようなものを抱いたとのこと。それは女として、そして嫁としてのプライドであるらしい。別に出来なくても俺はいいと思うんだけどな。
「んじゃ、いただくよ」
そんなアリスの頑張りを無駄には出来ないだろう。
俺はクレープにかぶりついた。
ぶっちゃけよう。結局食材は昨日と同じものだし、恐らく作り方もそのままなので味はほとんど変わらない。しかしアリスの手作りという一点が味を変える調味料となっているのか、凄く美味しく思えた。
「……私の愛情入りだ。どうだ?」
「最高やで……」
口調が変わってしまうほど萌えてしまった。萌え死ぬ寸前だった。アリス……恐ろしい子!
俺の感想を聞いて安心したのか胸をなでおろしている。
「ふふふ、私がこんな事になるとはな」
「こんな事?」
「こんな、いかにも女の子らしいことをするようになるとはな。……本当に感謝しているぞ、レオン」
最近感謝されすぎてる気がするなあ。嫌なわけではないが、むず痒い。
それにしても……女の子らしい、ねぇ……
「どういたしまして。ていうか、アリスは元々女だろ」
「それはそうだが……レオンと会ったばかりの頃の私はガサツだったというか……」
俺が村の子供たちを守る為に剣を習い始め、朝早くに素振りをしていた時に、村に視察に来ていたアリスに声をかけられた。あの頃のアリスはシャルの事もあり、今振り返ってみるとどこか無理をしていたように思えた。
「恋をすれば女は変わるとお姉さまは言っていたが、どうやら本当だったようだ」
アリスが俺に抱き着いてくる。抱きしめ返したいところだが、持っているクレープのクリームやらが付くといけないので出来ない。アリスはそのことに気付いたようだ。
「私も食べる」
クレープを持っている方の腕を掴むと、自分の口元へと引き、食べ始める。くっつきながら俺があーんをしている状態となる。
しばらく二人で食べ続け、最後の一口をアリスが口に含んだ。が、なぜかそこで動きを止めた。
「最後は一緒に味わおう」
目を閉じ、恥ずかしさを我慢するかのように顔をぷるぷる震わせながら唇を突き出してくる。
……もしかして口移しをしようとしてる?
「流石にそれはアウトな気が……」
「ん!」
分かった!分かったから背中を抓るのはやめて!
「ん……」
アレを始めるわけではないので軽く触れ合う程度に唇を合わせた。するとぬるりとした感触と共に甘さを感じさせるものが口内へと侵入してくる。しっかりと受け取ったところで俺は唇を離そうとするが、アリスはさらに強く抱き着き、唇を押し当ててくる。そして俺の舌が蹂躙され始めた。激しさはどんどん増していき、俺はただただ受けに回るので精一杯だった。
「ぷはっ」
集中していたあまり呼吸を忘れていたのか、深いキスを終えたアリスは呼吸を整えている。
「アリス、いきなりどうしたんだ?」
「……絶対に帰ってこい」
「え?」
「もう、私に悲しい思いをさせないでくれ! 絶対に私の元に帰ってくると約束しろ!」
……そうか。俺は一度死んだことになっていた。その時、俺に好意を抱いていたアリスはひどく悲しんだ。だからこそ危ない戦いに赴こうとする俺を本当は引き止めたいはずなのだ。でもそれはワガママだと分かっているからこその約束。
さっきのキスも、俺という存在を確かめたかったが故のものだったのではないか。
「約束するよ。帰ってきたら腹減ってるだろうし、なんか作って待っててもらえると助かる」
口約束だというのは分かっている。そこに確実性というものはない。
でも
「任せろ!」
信じてくれる人がいるというのは、嬉しいものだ。
「あ、レオン君だよね? こっちこっち」
昨日と変わらず2-Aには行列が出来ていたため、大人しく列に並んでいると、このクラスの人?に声をかけられそのまま調理室へと連れていかれた。移動中に聞いた話だと、ここでクレープを作っているらしい。
さあ早く入った入ったと先程の人に急かされ、室内に押し込まれると、それではごゆっくりと言われ扉を閉められた。
「む、来たか」
中にいたのはエプロン姿のアリスだった。凄く新鮮な姿だ。
「なんか連れてこられたんだが……」
「私が頼んだからな」
「なるほど。それじゃ早速行くか?」
「少し待ってくれ。食べてもらいたい物がある」
そう言ってアリスはクレープを手渡してきた。昨日食べたのとは違って、多めのクリームにフルーツが沢山入っていてずっしりとした重さを感じる。しかし皮は焦げた部分が少しあった。
「もしかしてアリスが作ったのか?」
「そうだ。レオンに、その、食べてもらいたくて……」
恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてもじもじしている。普段の鍛錬の時の凛々しい姿とのギャップが凄くてやばい。なんていうか、やばい。
実はアリスは料理含め、家事スキルがあまり高くない。それはリリィとクーにも言えることなのだが、それ以外の嫁達は完璧と言ってもいい。
カレンは村にいた時からよく手伝いをしていたし、ミーナも愛する夫を亡くし落ち込んでいた母を少しでも助ける為に身に着けたらしい。さらにシャルは呪いによって武の道を諦め、完璧な王女を目指した際に出来るようにしたという。リーゼさんは性格からして出来るだろうなとは思ってたが、案の定だった。
クーは分かるがリリィが家事を出来ないのは、大抵ボーっとしているからだ。
そしてアリス。アリスは姉であるシャルを守る為にひたすら剣を振り続けてきた。村が消えたと聞き、俺が死んだと思ったアリスは、それを忘れる為にさらに剣を振り続けた。だからこそ家事スキルが低いのだろう。
そんなアリスだが、相棒でありライバルでもあるソフィが俺の『良き妻』であろうと女としての自分を磨き始めたことに気付き、危機感のようなものを抱いたとのこと。それは女として、そして嫁としてのプライドであるらしい。別に出来なくても俺はいいと思うんだけどな。
「んじゃ、いただくよ」
そんなアリスの頑張りを無駄には出来ないだろう。
俺はクレープにかぶりついた。
ぶっちゃけよう。結局食材は昨日と同じものだし、恐らく作り方もそのままなので味はほとんど変わらない。しかしアリスの手作りという一点が味を変える調味料となっているのか、凄く美味しく思えた。
「……私の愛情入りだ。どうだ?」
「最高やで……」
口調が変わってしまうほど萌えてしまった。萌え死ぬ寸前だった。アリス……恐ろしい子!
俺の感想を聞いて安心したのか胸をなでおろしている。
「ふふふ、私がこんな事になるとはな」
「こんな事?」
「こんな、いかにも女の子らしいことをするようになるとはな。……本当に感謝しているぞ、レオン」
最近感謝されすぎてる気がするなあ。嫌なわけではないが、むず痒い。
それにしても……女の子らしい、ねぇ……
「どういたしまして。ていうか、アリスは元々女だろ」
「それはそうだが……レオンと会ったばかりの頃の私はガサツだったというか……」
俺が村の子供たちを守る為に剣を習い始め、朝早くに素振りをしていた時に、村に視察に来ていたアリスに声をかけられた。あの頃のアリスはシャルの事もあり、今振り返ってみるとどこか無理をしていたように思えた。
「恋をすれば女は変わるとお姉さまは言っていたが、どうやら本当だったようだ」
アリスが俺に抱き着いてくる。抱きしめ返したいところだが、持っているクレープのクリームやらが付くといけないので出来ない。アリスはそのことに気付いたようだ。
「私も食べる」
クレープを持っている方の腕を掴むと、自分の口元へと引き、食べ始める。くっつきながら俺があーんをしている状態となる。
しばらく二人で食べ続け、最後の一口をアリスが口に含んだ。が、なぜかそこで動きを止めた。
「最後は一緒に味わおう」
目を閉じ、恥ずかしさを我慢するかのように顔をぷるぷる震わせながら唇を突き出してくる。
……もしかして口移しをしようとしてる?
「流石にそれはアウトな気が……」
「ん!」
分かった!分かったから背中を抓るのはやめて!
「ん……」
アレを始めるわけではないので軽く触れ合う程度に唇を合わせた。するとぬるりとした感触と共に甘さを感じさせるものが口内へと侵入してくる。しっかりと受け取ったところで俺は唇を離そうとするが、アリスはさらに強く抱き着き、唇を押し当ててくる。そして俺の舌が蹂躙され始めた。激しさはどんどん増していき、俺はただただ受けに回るので精一杯だった。
「ぷはっ」
集中していたあまり呼吸を忘れていたのか、深いキスを終えたアリスは呼吸を整えている。
「アリス、いきなりどうしたんだ?」
「……絶対に帰ってこい」
「え?」
「もう、私に悲しい思いをさせないでくれ! 絶対に私の元に帰ってくると約束しろ!」
……そうか。俺は一度死んだことになっていた。その時、俺に好意を抱いていたアリスはひどく悲しんだ。だからこそ危ない戦いに赴こうとする俺を本当は引き止めたいはずなのだ。でもそれはワガママだと分かっているからこその約束。
さっきのキスも、俺という存在を確かめたかったが故のものだったのではないか。
「約束するよ。帰ってきたら腹減ってるだろうし、なんか作って待っててもらえると助かる」
口約束だというのは分かっている。そこに確実性というものはない。
でも
「任せろ!」
信じてくれる人がいるというのは、嬉しいものだ。
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