絶対守護者の学園生活記
告白と決着と爆発と
キンッと甲高い音と共に現れたのはリーゼであった。
「小娘、命が惜しくないのか」
「元々は無くなるはずだった命ですので。それに……」
リーゼはチラッとレオンを見やる。視線が交差する。
「女の子っていうのは、好きな人の為なら頑張れちゃう生き物なんですよ?」
「!!」
レオンは思わず目を見開く。
その言葉は、レオンが魔族と戦おうとするシャルを止めようとした際にリーゼに告げられたもの。
しかし今は状況が違う。
即ち、それが意味することも変わってしまう。
「私はあなたのことが好きです」
戦闘中であるにも関わらず、リーゼはレオンを見据えて告白する。
元々リーゼ自身は近接戦は得意としていない。それはレオンも分かっていたことだが、それでも彼女は前線に出てきた。
今もなお相手の攻撃を受け止めているが、長くは続かないのが彼女の様子から見て取れる。
そこまでしてまでも助けに来てくれた。それは人として当たり前のことをする為ではなく、惚れた男の為。
「ははっ……俺は本当に幸せ者みたいだ」
レオンは苦笑していた。自分を想ってくれる人がまた一人増えた。それはどんなにありがたいことか。
だから
「こんなとこで終わってたまるかよ……こんな痛み、カレンの折檻に比べたら屁でもねぇよ.....」
ゆっくりと、ただ確実にレオンは立ち上がる。
傷がどうした。痛みがどうした。
そんなことよりももっと大事なことがある。
「俺は、皆を守るって決めたんだっ!!!」
立ち上がると、すぐさまゴラムへと肉薄する。リーゼは微かに笑みを浮かべるとその場から即座に離脱した。
「これで終わりだ! ゴラム!」
レオンは斜めに刀を鋭く振り下ろす。ゴラムも負傷しながらも、再び受け止めようと腕を交差する。
そして
「なにっ!?」
確かに腕で防いだはずだった。
しかしレオンの斬撃はゴラムの腕を切り落とし、肩から腰にかけて走った。
袈裟斬りによって、ゴラムの身体にはレオンとは真逆の位置に同じ様な傷が出来る。
結果は、レオンの勝利だった。
※※※
どうにか……どうにか勝てた……。
かなりキツい戦いだった。呪いもそうだし、思った以上に相手が手強かった。
それでも、リーゼさんの告白を聞いた時に不思議と力が湧いてきた。
……ってそうだ!リーゼさんだ!
告白もそうだが、今回の目的の一つでもあるリーゼさんの活躍というのは見せられただろうか?殺されそうになった俺を助けたというのはどう評価されるのだろうか?
「リーゼさん、あの……」
「レオン君、話は後で。今は魔族の方に集中してください」 
「あ、はい」
そりゃそうか。今はそれより大事なことがあったよな。
とりあえずゴラムの容態を確認しようとすると、親父が女の方を連れてシャルと一緒にやってきた。シャルは左手を怪我したようだがそれ以外は特に無いとのこと。良かった……
「それで? これからどうするんだ?」
親父が魔族の女――シミルというらしい――をゴラムの横に並べ、俺に尋ねてきた。
「消すべき、だろうな……」
観客席を見ると俺達が勝利を収めたことで皆が興奮してるようだ。結界によって防音にしているので何を言ってるのかは聞こえないが。とにかく、国民が求めるのは魔族の討伐だろう。
「でも、出来れば俺はしたくない」
ゴラムは重症のため動けないし、シミルも降参したのか横たわったままだ。
守るための力、。ゴラムが言ったその言葉が俺の胸に突っかかっていた。
「私もレオンくんの意見に賛成です」
「シャル?」
シミルが消えない限り俺の呪いは解けない。だからこそシャルが賛成してくれたことは意外だった。
そしてシャルはシミルから聞きだした情報を俺に伝えてきた。
胸糞悪い話だ。無力な家族を襲い、娘を強姦。そして最終的には殺してしまう。そんな光景を目の前で見せつけられたら誰だって精神的な苦痛はかなりのものだろう。
復讐を考えてもおかしくない。
ただ、規模が大きすぎではあるが。
「親父」
「………とんだ甘ちゃんだな、お前は。分かったよ」
「頼む」
親父は言葉にしなくとも俺が何を伝えたかったのかを理解してくれた。
さて……
俺は特大の火球を創りだす。それは、人間二人を包み込めるほどの大きさ。
「それじゃ、終わりだ」
火球を魔族二人の元へ飛ばす。火球が当たる、その瞬間。
俺は転移を発動し、二人を飛ばした。
そして火球が地面へと当たる。その跡には何も残ってはいなかった。
俺はすぐに親父も転移させる。
「レオンくん、もしかして……」
「ああ、火球が当たる前に転移で二人を母さんのところに飛ばした。火球の陰に隠れて魔族が飛んだ様子は観客には見えなかったはずだし、焼き消されたと思ってるはずだ。魔族は親父に任せて俺達は皆の元へ急ごう」
っと、その前に。
俺は結界を解除してもらい、刀の切っ先を天に向けて高く上げる。
「魔族はレオン=ガーディア、リーゼリット=フロウズ、シャルロット=フィル=ガルーダの三名が討ち取った!!!」
大声で宣言する。
俺の宣言を聞いて、うおおおおおお!!と盛り上がる観客達。これでよし、と。
俺とシャルとリーゼさんは急いで第一訓練場を出て、第二訓練場へと向かった。
そして第二訓練場の前に辿り着いたその時。
ドオォォォン!!
爆発の音と思われる爆音が中から聞こえてきた。
俺達は一瞬だけ目を合わせてアイコンタクトをすると、急いで中へと入った。
そこに広がっていた光景は。
倒れ伏す人々。その姿は、見るも無残な程にボロボロで。
俺は、その人達に見覚えがあった。
昔から変わらぬふわっふわの桃色の髪。動きやすさを重視した、燃えるような赤の髪。さらさらの銀色の髪。何度も触らせてもらった、垂れ気味の犬耳。親子揃って同じクリーム色の髪。
忘れもしないあの日と同じ様な地獄が、俺の目の前には広がっていた。
「小娘、命が惜しくないのか」
「元々は無くなるはずだった命ですので。それに……」
リーゼはチラッとレオンを見やる。視線が交差する。
「女の子っていうのは、好きな人の為なら頑張れちゃう生き物なんですよ?」
「!!」
レオンは思わず目を見開く。
その言葉は、レオンが魔族と戦おうとするシャルを止めようとした際にリーゼに告げられたもの。
しかし今は状況が違う。
即ち、それが意味することも変わってしまう。
「私はあなたのことが好きです」
戦闘中であるにも関わらず、リーゼはレオンを見据えて告白する。
元々リーゼ自身は近接戦は得意としていない。それはレオンも分かっていたことだが、それでも彼女は前線に出てきた。
今もなお相手の攻撃を受け止めているが、長くは続かないのが彼女の様子から見て取れる。
そこまでしてまでも助けに来てくれた。それは人として当たり前のことをする為ではなく、惚れた男の為。
「ははっ……俺は本当に幸せ者みたいだ」
レオンは苦笑していた。自分を想ってくれる人がまた一人増えた。それはどんなにありがたいことか。
だから
「こんなとこで終わってたまるかよ……こんな痛み、カレンの折檻に比べたら屁でもねぇよ.....」
ゆっくりと、ただ確実にレオンは立ち上がる。
傷がどうした。痛みがどうした。
そんなことよりももっと大事なことがある。
「俺は、皆を守るって決めたんだっ!!!」
立ち上がると、すぐさまゴラムへと肉薄する。リーゼは微かに笑みを浮かべるとその場から即座に離脱した。
「これで終わりだ! ゴラム!」
レオンは斜めに刀を鋭く振り下ろす。ゴラムも負傷しながらも、再び受け止めようと腕を交差する。
そして
「なにっ!?」
確かに腕で防いだはずだった。
しかしレオンの斬撃はゴラムの腕を切り落とし、肩から腰にかけて走った。
袈裟斬りによって、ゴラムの身体にはレオンとは真逆の位置に同じ様な傷が出来る。
結果は、レオンの勝利だった。
※※※
どうにか……どうにか勝てた……。
かなりキツい戦いだった。呪いもそうだし、思った以上に相手が手強かった。
それでも、リーゼさんの告白を聞いた時に不思議と力が湧いてきた。
……ってそうだ!リーゼさんだ!
告白もそうだが、今回の目的の一つでもあるリーゼさんの活躍というのは見せられただろうか?殺されそうになった俺を助けたというのはどう評価されるのだろうか?
「リーゼさん、あの……」
「レオン君、話は後で。今は魔族の方に集中してください」 
「あ、はい」
そりゃそうか。今はそれより大事なことがあったよな。
とりあえずゴラムの容態を確認しようとすると、親父が女の方を連れてシャルと一緒にやってきた。シャルは左手を怪我したようだがそれ以外は特に無いとのこと。良かった……
「それで? これからどうするんだ?」
親父が魔族の女――シミルというらしい――をゴラムの横に並べ、俺に尋ねてきた。
「消すべき、だろうな……」
観客席を見ると俺達が勝利を収めたことで皆が興奮してるようだ。結界によって防音にしているので何を言ってるのかは聞こえないが。とにかく、国民が求めるのは魔族の討伐だろう。
「でも、出来れば俺はしたくない」
ゴラムは重症のため動けないし、シミルも降参したのか横たわったままだ。
守るための力、。ゴラムが言ったその言葉が俺の胸に突っかかっていた。
「私もレオンくんの意見に賛成です」
「シャル?」
シミルが消えない限り俺の呪いは解けない。だからこそシャルが賛成してくれたことは意外だった。
そしてシャルはシミルから聞きだした情報を俺に伝えてきた。
胸糞悪い話だ。無力な家族を襲い、娘を強姦。そして最終的には殺してしまう。そんな光景を目の前で見せつけられたら誰だって精神的な苦痛はかなりのものだろう。
復讐を考えてもおかしくない。
ただ、規模が大きすぎではあるが。
「親父」
「………とんだ甘ちゃんだな、お前は。分かったよ」
「頼む」
親父は言葉にしなくとも俺が何を伝えたかったのかを理解してくれた。
さて……
俺は特大の火球を創りだす。それは、人間二人を包み込めるほどの大きさ。
「それじゃ、終わりだ」
火球を魔族二人の元へ飛ばす。火球が当たる、その瞬間。
俺は転移を発動し、二人を飛ばした。
そして火球が地面へと当たる。その跡には何も残ってはいなかった。
俺はすぐに親父も転移させる。
「レオンくん、もしかして……」
「ああ、火球が当たる前に転移で二人を母さんのところに飛ばした。火球の陰に隠れて魔族が飛んだ様子は観客には見えなかったはずだし、焼き消されたと思ってるはずだ。魔族は親父に任せて俺達は皆の元へ急ごう」
っと、その前に。
俺は結界を解除してもらい、刀の切っ先を天に向けて高く上げる。
「魔族はレオン=ガーディア、リーゼリット=フロウズ、シャルロット=フィル=ガルーダの三名が討ち取った!!!」
大声で宣言する。
俺の宣言を聞いて、うおおおおおお!!と盛り上がる観客達。これでよし、と。
俺とシャルとリーゼさんは急いで第一訓練場を出て、第二訓練場へと向かった。
そして第二訓練場の前に辿り着いたその時。
ドオォォォン!!
爆発の音と思われる爆音が中から聞こえてきた。
俺達は一瞬だけ目を合わせてアイコンタクトをすると、急いで中へと入った。
そこに広がっていた光景は。
倒れ伏す人々。その姿は、見るも無残な程にボロボロで。
俺は、その人達に見覚えがあった。
昔から変わらぬふわっふわの桃色の髪。動きやすさを重視した、燃えるような赤の髪。さらさらの銀色の髪。何度も触らせてもらった、垂れ気味の犬耳。親子揃って同じクリーム色の髪。
忘れもしないあの日と同じ様な地獄が、俺の目の前には広がっていた。
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