絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

選抜メンバー発表

 合宿が終わればあっという間に学園が始まる。俺は現在、始業式に出ていた。
 今日は始業式の日でもあるが、それと同時に武闘大会においてうちの学園から出される選抜メンバーの発表の日でもある。

 各大陸を代表する学園から五人の選抜メンバー、つまりは最強の五人が大陸の名を背負って今年の開催地であるこの国へとやってくる。次代を担っていくであろう各大陸の優秀な若者達を競わせる、それは現時点で最も強いとされる大陸を決めるのと同義であり、それだけにかなりの注目を集めている。

 という説明は事前に生徒たちにされていたわけだが、俺の考えは違った。
 ただ娯楽が欲しいだけだろうと。
 実際に今までの武闘大会はお祭りのように賑わっていたらしい。

 そんなことを考えてる間にも始業式は進み、ついに選抜メンバーの発表がされるようだ。
 学園長がステージに上がった。

「今年のメンバー選びには本当に困ったぞ。五人に絞るのは大変すぎて、今年はワシのわがままでルールを変えることとなった。選抜メンバー五人に加え、入れ替えられる予備メンバーとして二人の計七人体制とすることになった」

 ほほう、七人か。入れ替わりってことは要は補欠ってことか?それよりも他大陸にわがままが通る学園長やばくない?
 そして選抜メンバーの発表が始まった。

「まずは一人目、シャルロット=フィル=ガルーダ。お主には主将を務めてもらう」

 うん、安定の人選だな。シャルなら役職含めて申し分ないだろう。やはり俺との手合わせでの手抜きは通用しなかったらしい。呼ばれた本人は、はい!と返事をし、他の生徒は頑張れーと拍手をしている。もちろん俺もだ。

「二人目、アリス=フィル=ガルーダ」

 これも納得の人選だ。学園最強を入れないわけがない。王女二人が選出されて、メンバーに華やかさが出てきたな。

 その後も発表が続く――かと思いきや

「ええい面倒臭い! 掲示しておくから全員見るように!」

 まさかの職務放棄である。学園長は戦闘狂なだけあってこういう仕事は性に合わないようだ。だからって面倒臭いと言い切ってしまうのはどうなんだろうか。

 そんなわけで始業式が終わった後、掲示されたメンバー表を屋敷の皆&マルクで見に来た。
 書かれていた内容はこんな感じだ。

――――――――――――

武闘大会選抜メンバー

主将.シャルロット=フィル=ガルーダ(3-C)

二.アリス=フィル=ガルーダ(2-A)

三.ソフィ=クリエイン(2-A)

四.カレン(1-A)

五.リリィ(1-A)

予備メンバー

一.ミーナ(1-B)

二.クーフィ(特別枠)

補助メンバー

一.リーゼリット=フロウズ(3-A)

二.レオン=ガーディア(1-B)

――――――――――――

 ん?んんんん?? 
 まあ待て、落ち着け俺。取り敢えず明らかにおかしなところ以外を見ていこう。
 まずは選抜メンバーだが、まぁ妥当だな。知り合いばかりというか、女の子しかいないのはどうなんだろうか。もっと頑張れよ男共。

 補助メンバーは選抜メンバーの体調管理やメンタルケアなどを担当する、いわばサポーターだ。
 俺は魔族の事があるため、裏で色々と動きたいから選抜メンバーには入れないでくれと頼み込んだから代わりにここに入れられたのだろう。
 リーゼさんは治癒魔法をかなり得意としているため選ばれたのであろう。

 そして問題の予備メンバー。
 ミーナは分かる。二学年で三番目の実力を持つロウガ先輩を倒した実績もあるしな。
 そして……なんでクーが入ってんだろなぁ.....。
 特別枠というのは、学園生でなくとも大丈夫というものだ。本当に上を目指そうとする学園なら、絶対に使うであろう枠。二十歳以下ではならないという決まりはあるが、卒業してから二年という時間は馬鹿にできない。その期間でまた実力を伸ばす人はいる。そんな人を入れれば勝率は当然上がる。
 なのに見た目幼女のクーを入れるとは、誰しもが想像していなかっただろう。

「やっぱりクーちゃんが入ってたか」

 だが、俺の予想を裏切るようなことをマルクが呟いていた。

「やっぱり? どういうことだ?」
「お前は知らなくても無理ないか。お前とシャルロット先輩が模擬戦してる時に学園長とクーちゃんもやってたんだよ」

 ああ、そういえばクーがそんなこと言ってたな……

「かなりの逸材だ! いい! いいぞ!とか言って滅茶苦茶はしゃいでたらしいぞ、学園長」

 あぁ、クーは気に入られちゃったのね。
 サポーターとして、パパとしてしっかり見守んなくちゃな。なんせ、愛する娘の晴れ舞台なんだから!!!

※※※

 そして放課後になった。
 選抜メンバーは色々と説明を受けなければ行けないらしく、学園に残った。
 一方俺は孤児院へと向かっていた。
 屋敷に住んでいる者で、唯一クーだけは学園に通っていない。そうなると当然クーは家で一人ぼっちとなってしまう。
 そのため、学園生組がいない間は孤児院に預けることにしたのだ。近い歳の子もいるし、良い経験になるかもなとも思ったからだ。
 そして俺はクーを迎えに行ってるというわけだ。
 それにしても……前世では俺が保育士として子供を見送る側だったのに今では迎えに行く側になったんだよな。なんだか新鮮だ。

 そして孤児院に着いたが、外にまだ誰もいなかったので中にいるのだろうと思い、俺は玄関の扉を開けたが――

 俺は何故か、見覚えのある白い空間にいた。



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