絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

楽園と寂寥

 合宿初日の自由時間、生徒達はそれぞれに割り振られた部屋に荷物を置き、すぐさま海へと繰り出した。
 俺も同じでパパッと水着に着替えて、現在は皆を待っている状態だ。
 パラソルとシートも用意したし、ビーチバレー用のボールにスイカもあるのでまさに準備万端。
 マルクも誘ったんだが、お仕置きは嫌だ……と震えていたのでそっとしておいた。

 それにしても……遅い。
 やはり女の子の準備は長いんだな。水着選びに付き合ったが、あの時は周りの視線が気になりすぎて皆がどんなのを選んだのか覚えていないため、結構楽しみだ。
 だからこそ待ち時間が長く感じる。

 それからしばらく待つこと数分

「……お待たせ」
「おまたせなの~」

 す、スク水だと……!?
 最初にやってきたのはリリィとクーだったが、まさかのスク水姿での登場だった。
 二人が期待するような目でこちらを見てくるので、とりあえず頭を撫でながら似合ってるぞと褒めてやる。
 リリィは目を細めながら気持ちよさそうにし、クーはムフー!とご満悦そうである。

 ……初っ端から衝撃的すぎて他の皆の水着を見てもそこまで驚かなくなりそうな気がする。

 そして次にやってきたのはカレンとミーナ、それにアリスとソフィ先輩だった。

「……くっ」
「カレンちゃん.....その、ごめんね?」
「なぜカレンは落ち込んでいるんだ?」
「私も気になるな」

 ……カレン、後で慰めてあげないとな。アリスとソフィ先輩は気付いてないからこそ、その疑問が追い打ちになっている。なんでさっきの二人貧乳組じゃなくて三人巨乳組と来たんだよ……

 カレンは髪色に合わせたのか、淡いピンクのタンキニを。ミーナは黒と白の線が交互に入ったパンツタイプビキニ。アリスは赤、ソフィ先輩は黒の三角型のビキニである。

 普段は鍛錬などで動いているからか、キュッとしたくびれに、筋肉が付きすぎず無さすぎずといった程よい柔らかさを併せ持った肢体。
 そして何よりも目を引くのは、二つの大きなお山である。(カレンは除く)

「四人とも似合ってるぞ」
「……ありがと」
「えへへ……」
「うむ……嬉しいものだな」
「ふむ、惚れた男に褒められるというのは良いものだ」

 カレン、ミーナ、アリス、ソフィ先輩の順に反応を示してくれる。
 頬を染めて恥ずかしがる姿を見ていると、なんだかこちらまでドキドキしてくる。

 後はシャルだけなので、皆で準備運動しながら待っていたところ、シャルは知らない人を連れてやってきた。

「レオン君お待たせしました」
「そんなに待ってないが……その人は?」
「紹介しますね。私の幼馴染で公爵家の御令嬢のリーゼですよ」
「……リーゼリット=フロウズです。よろしくお願いします」

 ……いかにも不機嫌そうな声をしながら俺を睨んできてるんだが、どこかで会ったことあったっけ?

 リーゼリットさんは鮮やかなスカイブルーの髪をポニーテールにしており、同じ色の瞳。さらには眼鏡をかけており、眼鏡美人といった言葉が当てはまる様な容姿である。

「訳あって連れてきました。混ざっても大丈夫ですよね?」
「大丈夫じゃないか? 嫌がる奴なんていないと思うし」
「それを聞いて安心しました。それはそうとレオン君? 私に何か言うことがあるんじゃないですか?」

 シャルがそう言ってその場でくるりと回る。
 ……あぁそうか、水着か。
 シャルは純白のパレオを選んだようだ。シャルから溢れる気品さや整った容姿と合わさって、最早ズルいと思わせるほどに似合っている。

「その、綺麗だぞ」
「……ふふ、やっぱり照れますね」

 見惚れるような綺麗な笑みを浮かべるシャルは、どことなく恥ずかしそうにしている。
 リーゼリットさんはパーカーを羽織っているのであまりよく見えなかった。

 リーゼリットさんのことを皆にも紹介したところで、俺は改めてメンバーを見渡す。
 水着姿の美少女達と愛する娘が揃っているこの光景は、まるで楽園のようである。生きててよかった……

 そして最初は各々でしたいことをしようということになった。
 リリィとクーは砂でガルーダ王国の王城を作ろうとしているようだが……やたらクオリティが高かった。どうやら二人で土魔法を使っているようで、やたら細部まで表現されており、コンテストがあれば絶対に優勝出来るような造りになっている。あ、騎士団まで作り始めた。
 アリスとソフィ先輩は競泳をしているようだ。かなりガチでやっているのか、物凄い速さだ。他の生徒のギャラリーまでいて、かなりの盛り上がりを見せている。
 カレンとミーナとシャルは、浅いところで水をかけあいながらキャッキャと遊んでいる。物凄くこの中に混ざりたい気持ちでいっぱいだが、ここは我慢する。

 そして俺はリーゼリットさんとパラソルの下で座ってのんびりとしている。
 なぜならこの眼福な光景を脳裏に焼き付けるためだ。美少女が楽しそうに戯れてる光景、男なら誰だって一生の宝物にするであろう。

「あの……レオンさん。聞かなくてもいいんですか?」

 俺が色々と楽しんでいるとリーゼリットさんが話しかけてきた。

「何をですか?」
「私が連れてこられた訳です。気にならないんですか?」
「うーん。気になるといえば気になりますけど、聞かれたくないことなんて誰だってあるでしょうし興味本位で聞いたりはしませんよ」
「……そうですか。お願いですレオンさん、どうかシャルを、シャルを大事にしてあげてください」

 幼馴染だからシャルの過去を知っているのだろう。アリスと同じでシャルの幸せを願っているからこそ、俺がどんな奴か確かめるためにさっきの質問をしたのだろうか。
 少し寂しげな笑みで俺にそう言ってくるリーゼリットさん。その笑みに俺はなぜか違和感を覚えた。まるで何かを諦めているかのような……

「さて、私達も行きましょうか」
「え、えぇ……そうですね」

 その後俺達は皆でビーチバレーを楽しんだり、スイカ割りなどをして過ごした。
 魔法を利用した最早何でもありになったビーチバレーや、普段なら俺がガン見するであろう嫁達の揺れるアレも、なぜかあまり気にならなかった。

 さっきのリーゼリットさんの寂しげな笑みが、俺の脳裏をにちらついていた。











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