絶対守護者の学園生活記
誓い
「なぁミーナ。明日の放課後、ミーナの家族に挨拶しに行ってもいいか?」
「……ふぇ?」
「だから、ミーナの家族に婚約報告しに行かないか?」
「ええええええええええ!!!」
俺の言葉にかなりの驚きを隠せないミーナ。
流石に親御さんに挨拶無しではいかんだろうと思ってこんな提案をしてみたんだが、ここまで驚かれるとは。
それに、これにはもう一つ目的がある。
「ミーナの親父さんに、この前の報告もしなきゃな」
「あ……」
報告するのはこの前のロウガ戦で勝利したこと。そこで起きた、ミーナの成長を。
「復讐でも、かたきを取ったでもない。ミーナは変われた、立派になれたってことを伝えなきゃな」
「……うん!」
俺の意図をしっかり理解したのか、力強く頷くミーナ。うん、大丈夫そうだな。
それより問題なのは俺だ。俺から言い出したことだから行かないという選択肢は無いが、やはり緊張する。
カレンの両親はもう、いない。アリスはそもそもあっちの親の方から婚約を言い出されたのですることは無かった。だから初めての挨拶となる。
「娘さんをください?これだと単純すぎるな。なら娘さんは預かった?いや、これだと誘拐犯か。うーん……」
「あはは。そこまで考える必要はないと思うよ? なんというか、適当なお母さんだし」
「そうか? ならいいんだが」
ともかく、心構えをだけでもしっかりしておこう。
「ところで、どうやって獣人国まで行くの? レオン君の魔法?」
「転移は行ったことある場所か目視出来る場所にしか移動出来ないんだ。だからある人に頼む」
どうせ暇してるだろ。
※※※
というわけでやってまいりました獣人国。
転移を使える且つ獣人国に行ったことがありそうな人ということで学園長の元を訪れたところ、見事にビンゴだった。代わりにまた今度学園長とバトることになったが。
「こっちだよ、レオン君」
ミーナが俺の腕に抱き着きながら案内をしてくれている。俺はここら辺の地理は全く知らないからな。
そして俺はフード付きのローブを着ている。顔を隠すためにかなり深めにフードを被っている影響で周りがあまり見えないため、ミーナに腕を引っ張ってもらってるわけだ。
この姿にはちゃんと意味があり、この前の親父との決闘で俺の情報が出回ったことで、俺を見つけ次第決闘を申し込んでくる獣人が現われるかもしれないからだ。そんな面倒事は避けたい。
しばらく歩くと、ミーナが腕を離した。
「着いたよ。周りに誰もいないし脱いでもいいよ」
どうやらミーナの家に着いたようだ。ローブを脱いで亜空間倉庫にしまう。
トントンと玄関の扉を叩くミーナ。
「はーい……ミーナじゃない! お帰りなさい!」
「うん、ただいお母さん」
しばらくして扉が開き、中からミーナをそのまま成長させたような女性が姿を見せる。もちろんアレも零れ落ちそうなほどだ。やっぱり遺伝だったのね。
「ここで話すのもなんだから、中に入りなさい。そこの彼もね」
「失礼します」
中へと案内され、リビングであろう部屋のソファへと座る。
「それで、急に帰ってきてどうしたの?」
「えーっと、先にこの人を紹介するね」
「レオンといいます」
「あらご丁寧にどうも。私はルミナといいます。もしかして今回の帰省は彼が関係してるのかしら?」
反応からして俺の事は知らないみたいだな。
ミーナがこちらを見てくる。まあ俺がちゃんと言うべきだ。
「はい、実はルミナさんにお話がありまして」
「話?」
「単刀直入に言います。娘さんを僕にください!」
「ええ、いいわよ」
「えっ」
軽っ! 考える素振りも見せずに即答したぞ!?
「あなたが娘を任せられるような人かなんて、あの様子を見れば分かるわよ」
そう言ってルミナさんがミーナの方を向く。俺も釣られてそちらを向く。
「うぅ……」
……顔を真っ赤にして、縮こまるようにしながら恥ずかしがっているミーナがそこにはいた。……どうしたんだよ。
「ミーナったら、あなたが話し始めてからずっとあんな感じだったのよ。いざ親に報告されるとなって相当恥ずかしかったようね」
「……可愛いですね」
「ええ、可愛いわね」
どうやらミーナの可愛さは親ですら魅了するようだ。ルミナさんとは上手くやっていけそうな気がする。
「ねえミーナ。あなたは彼の事は好き?」
「……うん」
「そう。彼、よく見たら結構格好いいし私も狙っちゃおうかしら」
「ふぇ!? 駄目! 絶対駄目ええええええ!!」
「別にいいじゃない。やることやった訳じゃないでしょ?」
「やることって……」
「そりゃもう、若い男女がやることといったら、ねぇ?」
「だ、男女の……うぅ」
おぉ……ミーナが面白いぐらいに動揺している。流石親なだけあって扱いには長けているようだ。ミーナ検定があったら一級は余裕だろうな。
「本当にやってないみたいだし、頑張っちゃおうかしら」
「う、うううううううう!! もうお母さんなんて知らない! お父さんの所に行ってくる!」
湯気が出そうなくらいに真っ赤になったミーナが、そう言って部屋を飛び出して行ってしまった。かなり怒ってるようであったが、なぜか見ていて微笑ましかった。文字で表すとぷんぷんといった怒りかただ。
「流石にやりすぎだったんじゃ……」
「あんなミーナは久しぶりすぎて、楽しくなっちゃって」
「久しぶり?」
「父親が亡くなってから、ミーナは抜け殻みたいになってしまっていたの。だから、前みたいに元気になってるミーナを見れて嬉しかった。それに、女の子らしくなっちゃって。全てあなたのおかげ」
そう語るルミナさんの表情は、とても優し気な、娘を思いやる一人の母親のものであった。
「だから、あなたには礼を言わなきゃいけないわね。ありがとう」
俺に対して頭を下げるルミナさん。しばらくして顔を上げ、再び優し気な表情を浮かべる。
「ミーナを任せたわよ、レオン君」
「はい、任せてください」
「よし! ほら、さっさとあの子を追いかけてあげて」
「分かりました」
そして俺はルミナさんに見送られ、ミーナの元へ向かった。
※※※
少し歩くと、一つの墓の前でしゃがんで手を合わせているミーナを見つけた。恐らく父親の墓であろう。
「お父さん、久しぶりだね。僕は元気だよ。学園では色んなことがあったんだ。友達がいっぱい出来たんだ。毎日が楽しくて楽しくて。あ、そういえばね――」
ミーナは止まることなく、次々と今までの事を細かく報告している。
「それに、好きな人が出来たんだ。苦しんでいた僕に手を差し伸べてくれて、助けてくれて、とっても頼りになって。たまーにふざけたりするのはちょっとアレだけどね。頑張って告白して、受け入れてもらえた。僕は今、すっごく幸せなんだ。だから心配しないでねお父さん。僕はもう、もう……」
大丈夫だから。きっとそう言いたいのであろう。それでも、父親の事を思い出して、涙を流してしまって上手く言葉を紡ぐことが出来ないミーナ。
そんなミーナに近づき、頭の上にポンと手を置く。
「あ……レオン君……」
「心配しないでって言ってるくせに泣くなんておかしいだろ? ほら、笑って伝えてやれ。俺も一緒にいてやるから」
「……うん」
ミーナは涙をゴシゴシと拭うと、墓へと向き直る。
「お父さん。彼がさっき言っていた僕が好きになった人。僕を、救ってくれた人。彼が、レオン君がいるから、心配しないでね」
ミーナはいつもと同じ、華が咲くかのような温かな笑顔を見せ
「もう、大丈夫だから」
そう、はっきりと告げた。
……さて、俺も挨拶させてもらおうかな。
ミーナの隣にしゃがみこみ、俺も手を合わせる。
「先ほどご紹介に預かりましたレオンと申します。ミーナさんは僕には勿体ないくらいの良い娘で、本当に僕でいいのかなって思うこともあります」
「レオン君……?」
「それでも、ミーナを想う気持ちは誰にも負けるつもりはありません。絶対に幸せにすると誓います。だから……」
俺は隣にいるミーナの手を取る。
「だから、安心してお眠りください」
俺は誓った。ミーナを絶対に幸せにすると。
「さて、そろそろ帰るか」
立ち上がりながらミーナに告げる。ミーナも頷き立ち上がる。
ミーナの家に向かって歩いていたが、会話がなく静かである。なんというか、本心を伝えたとはいえ、内容自体はかなり恥ずかしいことを言ってしまった。ミーナの顔が直視できない……。
だがそんなことは関係なしと、ミーナが軽く走って俺の前に回り、少し屈んで上目遣いで見つめてくる。
「レオン君! これからもよろしくね! 絶対に僕を幸せにしてよね!」
そして、そんなことを言ってくる。
……分かってるよ、当たり前だろ。絶対に幸せにする。
「ああ、こちらこそよろしくな」
「うん!」
元気に返事をするミーナを見て、来て良かった。そう素直に思えた。
「……ふぇ?」
「だから、ミーナの家族に婚約報告しに行かないか?」
「ええええええええええ!!!」
俺の言葉にかなりの驚きを隠せないミーナ。
流石に親御さんに挨拶無しではいかんだろうと思ってこんな提案をしてみたんだが、ここまで驚かれるとは。
それに、これにはもう一つ目的がある。
「ミーナの親父さんに、この前の報告もしなきゃな」
「あ……」
報告するのはこの前のロウガ戦で勝利したこと。そこで起きた、ミーナの成長を。
「復讐でも、かたきを取ったでもない。ミーナは変われた、立派になれたってことを伝えなきゃな」
「……うん!」
俺の意図をしっかり理解したのか、力強く頷くミーナ。うん、大丈夫そうだな。
それより問題なのは俺だ。俺から言い出したことだから行かないという選択肢は無いが、やはり緊張する。
カレンの両親はもう、いない。アリスはそもそもあっちの親の方から婚約を言い出されたのですることは無かった。だから初めての挨拶となる。
「娘さんをください?これだと単純すぎるな。なら娘さんは預かった?いや、これだと誘拐犯か。うーん……」
「あはは。そこまで考える必要はないと思うよ? なんというか、適当なお母さんだし」
「そうか? ならいいんだが」
ともかく、心構えをだけでもしっかりしておこう。
「ところで、どうやって獣人国まで行くの? レオン君の魔法?」
「転移は行ったことある場所か目視出来る場所にしか移動出来ないんだ。だからある人に頼む」
どうせ暇してるだろ。
※※※
というわけでやってまいりました獣人国。
転移を使える且つ獣人国に行ったことがありそうな人ということで学園長の元を訪れたところ、見事にビンゴだった。代わりにまた今度学園長とバトることになったが。
「こっちだよ、レオン君」
ミーナが俺の腕に抱き着きながら案内をしてくれている。俺はここら辺の地理は全く知らないからな。
そして俺はフード付きのローブを着ている。顔を隠すためにかなり深めにフードを被っている影響で周りがあまり見えないため、ミーナに腕を引っ張ってもらってるわけだ。
この姿にはちゃんと意味があり、この前の親父との決闘で俺の情報が出回ったことで、俺を見つけ次第決闘を申し込んでくる獣人が現われるかもしれないからだ。そんな面倒事は避けたい。
しばらく歩くと、ミーナが腕を離した。
「着いたよ。周りに誰もいないし脱いでもいいよ」
どうやらミーナの家に着いたようだ。ローブを脱いで亜空間倉庫にしまう。
トントンと玄関の扉を叩くミーナ。
「はーい……ミーナじゃない! お帰りなさい!」
「うん、ただいお母さん」
しばらくして扉が開き、中からミーナをそのまま成長させたような女性が姿を見せる。もちろんアレも零れ落ちそうなほどだ。やっぱり遺伝だったのね。
「ここで話すのもなんだから、中に入りなさい。そこの彼もね」
「失礼します」
中へと案内され、リビングであろう部屋のソファへと座る。
「それで、急に帰ってきてどうしたの?」
「えーっと、先にこの人を紹介するね」
「レオンといいます」
「あらご丁寧にどうも。私はルミナといいます。もしかして今回の帰省は彼が関係してるのかしら?」
反応からして俺の事は知らないみたいだな。
ミーナがこちらを見てくる。まあ俺がちゃんと言うべきだ。
「はい、実はルミナさんにお話がありまして」
「話?」
「単刀直入に言います。娘さんを僕にください!」
「ええ、いいわよ」
「えっ」
軽っ! 考える素振りも見せずに即答したぞ!?
「あなたが娘を任せられるような人かなんて、あの様子を見れば分かるわよ」
そう言ってルミナさんがミーナの方を向く。俺も釣られてそちらを向く。
「うぅ……」
……顔を真っ赤にして、縮こまるようにしながら恥ずかしがっているミーナがそこにはいた。……どうしたんだよ。
「ミーナったら、あなたが話し始めてからずっとあんな感じだったのよ。いざ親に報告されるとなって相当恥ずかしかったようね」
「……可愛いですね」
「ええ、可愛いわね」
どうやらミーナの可愛さは親ですら魅了するようだ。ルミナさんとは上手くやっていけそうな気がする。
「ねえミーナ。あなたは彼の事は好き?」
「……うん」
「そう。彼、よく見たら結構格好いいし私も狙っちゃおうかしら」
「ふぇ!? 駄目! 絶対駄目ええええええ!!」
「別にいいじゃない。やることやった訳じゃないでしょ?」
「やることって……」
「そりゃもう、若い男女がやることといったら、ねぇ?」
「だ、男女の……うぅ」
おぉ……ミーナが面白いぐらいに動揺している。流石親なだけあって扱いには長けているようだ。ミーナ検定があったら一級は余裕だろうな。
「本当にやってないみたいだし、頑張っちゃおうかしら」
「う、うううううううう!! もうお母さんなんて知らない! お父さんの所に行ってくる!」
湯気が出そうなくらいに真っ赤になったミーナが、そう言って部屋を飛び出して行ってしまった。かなり怒ってるようであったが、なぜか見ていて微笑ましかった。文字で表すとぷんぷんといった怒りかただ。
「流石にやりすぎだったんじゃ……」
「あんなミーナは久しぶりすぎて、楽しくなっちゃって」
「久しぶり?」
「父親が亡くなってから、ミーナは抜け殻みたいになってしまっていたの。だから、前みたいに元気になってるミーナを見れて嬉しかった。それに、女の子らしくなっちゃって。全てあなたのおかげ」
そう語るルミナさんの表情は、とても優し気な、娘を思いやる一人の母親のものであった。
「だから、あなたには礼を言わなきゃいけないわね。ありがとう」
俺に対して頭を下げるルミナさん。しばらくして顔を上げ、再び優し気な表情を浮かべる。
「ミーナを任せたわよ、レオン君」
「はい、任せてください」
「よし! ほら、さっさとあの子を追いかけてあげて」
「分かりました」
そして俺はルミナさんに見送られ、ミーナの元へ向かった。
※※※
少し歩くと、一つの墓の前でしゃがんで手を合わせているミーナを見つけた。恐らく父親の墓であろう。
「お父さん、久しぶりだね。僕は元気だよ。学園では色んなことがあったんだ。友達がいっぱい出来たんだ。毎日が楽しくて楽しくて。あ、そういえばね――」
ミーナは止まることなく、次々と今までの事を細かく報告している。
「それに、好きな人が出来たんだ。苦しんでいた僕に手を差し伸べてくれて、助けてくれて、とっても頼りになって。たまーにふざけたりするのはちょっとアレだけどね。頑張って告白して、受け入れてもらえた。僕は今、すっごく幸せなんだ。だから心配しないでねお父さん。僕はもう、もう……」
大丈夫だから。きっとそう言いたいのであろう。それでも、父親の事を思い出して、涙を流してしまって上手く言葉を紡ぐことが出来ないミーナ。
そんなミーナに近づき、頭の上にポンと手を置く。
「あ……レオン君……」
「心配しないでって言ってるくせに泣くなんておかしいだろ? ほら、笑って伝えてやれ。俺も一緒にいてやるから」
「……うん」
ミーナは涙をゴシゴシと拭うと、墓へと向き直る。
「お父さん。彼がさっき言っていた僕が好きになった人。僕を、救ってくれた人。彼が、レオン君がいるから、心配しないでね」
ミーナはいつもと同じ、華が咲くかのような温かな笑顔を見せ
「もう、大丈夫だから」
そう、はっきりと告げた。
……さて、俺も挨拶させてもらおうかな。
ミーナの隣にしゃがみこみ、俺も手を合わせる。
「先ほどご紹介に預かりましたレオンと申します。ミーナさんは僕には勿体ないくらいの良い娘で、本当に僕でいいのかなって思うこともあります」
「レオン君……?」
「それでも、ミーナを想う気持ちは誰にも負けるつもりはありません。絶対に幸せにすると誓います。だから……」
俺は隣にいるミーナの手を取る。
「だから、安心してお眠りください」
俺は誓った。ミーナを絶対に幸せにすると。
「さて、そろそろ帰るか」
立ち上がりながらミーナに告げる。ミーナも頷き立ち上がる。
ミーナの家に向かって歩いていたが、会話がなく静かである。なんというか、本心を伝えたとはいえ、内容自体はかなり恥ずかしいことを言ってしまった。ミーナの顔が直視できない……。
だがそんなことは関係なしと、ミーナが軽く走って俺の前に回り、少し屈んで上目遣いで見つめてくる。
「レオン君! これからもよろしくね! 絶対に僕を幸せにしてよね!」
そして、そんなことを言ってくる。
……分かってるよ、当たり前だろ。絶対に幸せにする。
「ああ、こちらこそよろしくな」
「うん!」
元気に返事をするミーナを見て、来て良かった。そう素直に思えた。
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