絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

閑話 第3回女子会

「緊急開催! 第3回女子会の始まりよ!」
「うむ」
「……ぱちぱちぱち」
「わ、わー!」
「……もう何も言うことはないわ」

 かろうじてミーナが盛り上げようとしてくれてるのが救いだ。リリィは口でぱちぱち言ってるだけで手は動いてないし、アリスに限っては前と全く同じ反応だ。ミーナは後で撫でてあげよう。
 時はレオンに衝撃の誘いを受けた後。私の自室での開催である。

「今回の議題は皆分かってるわね?」
「レオン君と一緒に住むことだよね」
「そうよ! はっきり聞くわ。皆はどう思ってるの?」

 私だってレオンの婚約者とはいえ年頃の女の子。同年代の男の子と一つ屋根の下で過ごすというのは色々と問題があるだろう。例えば、えっちなこととか。
 私はレオンとならしてもいいと思っている。むしろレオンとしかそういうことはしたくないとさえ。
 今回の同棲はチャンスでもあるだろう。どれだけ積極的なんだと思うかもしれないが、普段のレオンがヘタレすぎて、キスさえほぼしていない。私を大事にしてくれているのが伝わってくるからこそ罪深いというかなんというか。だからこっちから攻めないことには進展しないであろう。よほどのことがない限りは。
 それに、私はレオンの物だという証拠が欲しい。愛されているという証拠が欲しい。レオンの私への気持ちを疑っているわけではない。レオンは無自覚のうちに多くの女の子を落としている。レオンは簡単に婚約者を増やすようなことはしないだろうが、やはりこちら側としてはどうしても不安になってしまう部分があるのだ。
 私は、この同棲生活の間にレオンと――
 そんな決意を固めた私は、考え始めていた皆の言葉を待つ。
 一番最初に発言したのはアリスだった。

「考えてみたが、特に問題はないな」
「えっ?」
「特に問題はないな」
「いや、聞こえなかったわけじゃないわよ」

 王族はそういうことは教えていないのだろうか。流石にそんなことはないだろう。気付いてないだけなのかも?

「アリス。もしかして気付いてないのかもしれないから教えてあげる」

 そしてアリスの耳元でそのようなことが起きるかも?と話した。レオンがヘタレだということは皆分かっているが、レオンだって男の子。あちらからくる可能性だって否定できない。私が考えてたのはあくまでもこっちから攻めた方が確実だと思ったからだ。

 私の言葉を聞いて、想像してしまったのか顔がリンゴのように真っ赤になってしまうアリス。どうやら知識が無いわけではないようだ。

「れ、レオンが私と……。ん、ごほん。べ、別に私はそれでも構わにゃいぞ」

 落ち着いてるように見せたいのだろうけど、全然駄目であった。にゃって……。

「王族って婚前交渉は駄目なんじゃかったかしら」
「あ、ああ。それなら前に父上にレオンと致す時は決まりだとかは気にするなと言っていた。当時は意味が分からなかったが、今やっと理解した」
「相変わらずね国王様は……」

 とにかくアリスはオーケーと。
 さて次はミーナ……

「れ、レオン君。そこは駄目だよ……」

 両手を頬に当て、くねくねしている犬っ娘がそこにいた。
 うん、触れない方がいいわね。
 ミーナって意外とムッツリだったのね……。

 次はリリィなんだけど……

「……私も問題はない」
「ま、そうよね」

 妹であるリリィなら何も気にすることは無いだろう。恋さえ知らないような子が、あっちの事を知ってるとも思えないしね。なんというか、この場で唯一のまともな人って感じがする。

「……それより、気になることがある」
「なにリリィ?」

 リリィの言葉に、全員が耳を傾ける。ミーナは耳を掴んで無理矢理元に戻した。ちょっと涙目になっているが。

「……レオ兄が、褒美を欲しがるとは思えない。ましてや屋敷なんて」
「「「たしかに」」」

 私を合わせた三人が同時に頷く。
 レオンは善意の塊と言うか、見返りを求めることはほとんどない。そんなレオンが褒美を要求、さらに屋敷を貰う? あり得ないと思った。見た感じ、アリスとミーナも同じ考えのようだ。
 その、そういうことばかり考えてしまい、頭がそこまで回らなかった。
 別に私は普段からそういうことを考えているわけではない。信じてほしい。
 とにかく

「これは聞き出す必要があるわね」

 明日、その屋敷とやらに着いたらレオンとお話しする必要がありそうね。


 


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