絶対守護者の学園生活記
あなたを、倒す
ついに学内最強決定戦当日となった。
………はぁ。
空はこんなに青いのに……。
「……なぁ。あいつどうしたんだ?」
「学園長に学内最強決定戦に出るなって言われたらしいよ」
ミーナの言う通り、俺は出禁をくらった。なんでもお主が優勝するに決まっておろう、それではつまらんとのことだ。
今回はミーナのことに集中しようと思ってたから別に気にしてないが。
………はぁ。
「そんなことより、ミーナは勝てそうなの?」
「……気になる」
「そんなことよりって……大丈夫だ。今のミーナなら絶対に勝てる」
ミーナの肩に手を置き答える。
やれることは全てやった。あとはミーナ次第である。
相当特訓はきつかったはずだが、ミーナは諦めずについてきてくれた。それは自信にも繋がっていくだろう。
俺の言葉に力強く頷くミーナ。
「んじゃ、行きますか」
そしていつものメンバーで第一訓練場へと向かう。ここが会場となる。
まずは対戦表を確認しにいかないとな。
今回の学内最強決定戦はランダムに決められた組み合わせから始まるトーナメント方式で行われる。これを聞いたときは狼野郎と当たらない可能性があるのでは? と焦った。なんせアリスとソフィ先輩も参加しているからだ。
そんなわけで裏技を使った。学園長と今度バトることにはなったが、これで大丈夫なはずだ。
ズルじゃないかって? 僕知らない。全ては戦闘狂な学園長がいけない。
「いい仕事だ、学園長」
トーナメント表を見て、俺はほくそ笑む。
学内最強決定戦 一回戦 第一試合 1-B ミーナ 対 2-C ロウガ
まさかの初戦。燃える展開じゃないか。
「私達は先に行ってるわね」
カレンがそう言うと、俺とミーナを除いた三人が一足先に観客席へと向かう。
……変な気使いやがって。
「なあミーナ、まだ不安か?」
俺はミーナと向かい合う
「本当は無理なんじゃないか。こんな短期間で何が出来るというんだ。結局は何も変われない」
俺の言葉を聞いて顔を伏せてしまう。やっぱりな……。
「不安が拭いきれないんだろう? そりゃそうだ。長い間、ずっと耐え忍んできたんだ。それがたかだか一週間の特訓で変えられるわけない。そう思うのは当たり前だろう」
いざ本番を前にして、やはり不安になってしまうのだろう。
それでも。
「それでも、ミーナなら出来る。特訓だって真面目に取り組んでいただろう?」
「だって、レオン君に悪いと思って……」
「はい黙りなさい」
「えっ?」
なーに言ってるんだこの犬娘。頬擦りしてやろうか。
「あのな、前にも言っただろ? 友達をもっと頼れって。俺だって嫌々やってたわけじゃない」
「分かってるよ。でも……」
め、面倒臭ぇ……。
もしかしてカレンとアリスが俺に対して感じていた面倒臭さってこんな感じだったのだろうか。
……後で二人には謝っておこう。
「な、なんで撫でてるの?」
「そこにミーナがいるからだ」
「訳分かんないよ!」
「なんでだ! そこにケモッ娘がいたら普通は撫でるだろう!」
「撫でないよ!」
「ぐふっ!」
い、いいブローだ……。
「や、やっと元気になったな」
「?」
ミーナに暗い顔なんて似合わない。
「ミーナは俺の事を信じてるか?」
「うん。大切な友達だもん」
「なら俺だってミーナを信じてる。ミーナが勝つことを信じてる。そんな俺を裏切るつもりか?」
正直俺ですら何言ってんだこいつ状態だ。でもここで止まってはいけないんだ。ミーナはやっぱり笑ってなきゃな。
「……はぁ。レオン君。支離滅裂なこと言ってるの分かってる?」
「おう。後悔はしてないぞ」
「なんか、馬鹿らしくなっちゃった」
「なにが?」
「レオン君を見てたら、色々と考えてた僕が馬鹿らしく思っちゃって」
え? 急にディスられたんですが。
「だから」
暗い顔をしていたミーナはどこかに消え、そこには可愛らしい笑顔をした一人の女の子がいた。
「そんなお馬鹿さんの期待に応えなきゃね!」
笑顔で、そう告げるミーナ。
もう心配はなさそうだ。
最後に俺が言えるのは一つだけ。
「行ってこい!」
「うん! 行ってきます!」
※※※
レオン君と別れ、控室へと入る。
試合時間が来るまで精神統一をしようとするが、どうしても彼の事を考えてしまう。
レオン君。
最初の彼に対する印象は不思議な人だった。なぜか僕をやたら撫でたがったり、普段はふざけた感じだが、二人の女の子に好かれるくらいには素敵な魅力を持っていて。
そして何より、僕にはない圧倒的な力を持っている。そんな力を持っている人は大抵傲慢になる。
僕が差別を受けていたのにもそれが関わっていただろう。
それでも彼は変わらずに僕と接してくれて、とても嬉しかった。
彼は獣人ではないからそれは当たり前なのかもしれないが、それでも嬉しかった。
さらに彼は、ロウガ先輩から僕を守ってくれた。
僕の事情を全て聞いたうえで、親身になって考えてくれた。
……僕の事を可愛いと言ってくれたが、彼の周りにはかなり綺麗な子が揃っているので自信が持てない。
僕にもチャンスはあるのかな?
僕は鈍感じゃないから、既に僕の本当の気持ちは分かっている。
でもそれを彼に伝えるのは今ではないと思う。
全ては、彼の期待に応えてから――
「ミーナ選手、時間です」
控室を出て、舞台へと上がる。
「まさか汚らわしい犬っころが相手とはなぁ。これは楽々二回戦進出だな」
相変わらずの男だ。
昔なら何も言い返せなかったであろう。だが、昔の僕とはもう違う。
「僕は可愛いみたいだよ? そんな可愛い犬っころに、あなたは負ける」
誰かさんの影響でも受けちゃったかな? こんなこと、普段の僕なら言わないんだけどなぁ。
「……潰す」
「僕は、負けない」
僕を支えてくれた人たちのためにも。
「試合開始!」
絶対に、あなたを倒す!
………はぁ。
空はこんなに青いのに……。
「……なぁ。あいつどうしたんだ?」
「学園長に学内最強決定戦に出るなって言われたらしいよ」
ミーナの言う通り、俺は出禁をくらった。なんでもお主が優勝するに決まっておろう、それではつまらんとのことだ。
今回はミーナのことに集中しようと思ってたから別に気にしてないが。
………はぁ。
「そんなことより、ミーナは勝てそうなの?」
「……気になる」
「そんなことよりって……大丈夫だ。今のミーナなら絶対に勝てる」
ミーナの肩に手を置き答える。
やれることは全てやった。あとはミーナ次第である。
相当特訓はきつかったはずだが、ミーナは諦めずについてきてくれた。それは自信にも繋がっていくだろう。
俺の言葉に力強く頷くミーナ。
「んじゃ、行きますか」
そしていつものメンバーで第一訓練場へと向かう。ここが会場となる。
まずは対戦表を確認しにいかないとな。
今回の学内最強決定戦はランダムに決められた組み合わせから始まるトーナメント方式で行われる。これを聞いたときは狼野郎と当たらない可能性があるのでは? と焦った。なんせアリスとソフィ先輩も参加しているからだ。
そんなわけで裏技を使った。学園長と今度バトることにはなったが、これで大丈夫なはずだ。
ズルじゃないかって? 僕知らない。全ては戦闘狂な学園長がいけない。
「いい仕事だ、学園長」
トーナメント表を見て、俺はほくそ笑む。
学内最強決定戦 一回戦 第一試合 1-B ミーナ 対 2-C ロウガ
まさかの初戦。燃える展開じゃないか。
「私達は先に行ってるわね」
カレンがそう言うと、俺とミーナを除いた三人が一足先に観客席へと向かう。
……変な気使いやがって。
「なあミーナ、まだ不安か?」
俺はミーナと向かい合う
「本当は無理なんじゃないか。こんな短期間で何が出来るというんだ。結局は何も変われない」
俺の言葉を聞いて顔を伏せてしまう。やっぱりな……。
「不安が拭いきれないんだろう? そりゃそうだ。長い間、ずっと耐え忍んできたんだ。それがたかだか一週間の特訓で変えられるわけない。そう思うのは当たり前だろう」
いざ本番を前にして、やはり不安になってしまうのだろう。
それでも。
「それでも、ミーナなら出来る。特訓だって真面目に取り組んでいただろう?」
「だって、レオン君に悪いと思って……」
「はい黙りなさい」
「えっ?」
なーに言ってるんだこの犬娘。頬擦りしてやろうか。
「あのな、前にも言っただろ? 友達をもっと頼れって。俺だって嫌々やってたわけじゃない」
「分かってるよ。でも……」
め、面倒臭ぇ……。
もしかしてカレンとアリスが俺に対して感じていた面倒臭さってこんな感じだったのだろうか。
……後で二人には謝っておこう。
「な、なんで撫でてるの?」
「そこにミーナがいるからだ」
「訳分かんないよ!」
「なんでだ! そこにケモッ娘がいたら普通は撫でるだろう!」
「撫でないよ!」
「ぐふっ!」
い、いいブローだ……。
「や、やっと元気になったな」
「?」
ミーナに暗い顔なんて似合わない。
「ミーナは俺の事を信じてるか?」
「うん。大切な友達だもん」
「なら俺だってミーナを信じてる。ミーナが勝つことを信じてる。そんな俺を裏切るつもりか?」
正直俺ですら何言ってんだこいつ状態だ。でもここで止まってはいけないんだ。ミーナはやっぱり笑ってなきゃな。
「……はぁ。レオン君。支離滅裂なこと言ってるの分かってる?」
「おう。後悔はしてないぞ」
「なんか、馬鹿らしくなっちゃった」
「なにが?」
「レオン君を見てたら、色々と考えてた僕が馬鹿らしく思っちゃって」
え? 急にディスられたんですが。
「だから」
暗い顔をしていたミーナはどこかに消え、そこには可愛らしい笑顔をした一人の女の子がいた。
「そんなお馬鹿さんの期待に応えなきゃね!」
笑顔で、そう告げるミーナ。
もう心配はなさそうだ。
最後に俺が言えるのは一つだけ。
「行ってこい!」
「うん! 行ってきます!」
※※※
レオン君と別れ、控室へと入る。
試合時間が来るまで精神統一をしようとするが、どうしても彼の事を考えてしまう。
レオン君。
最初の彼に対する印象は不思議な人だった。なぜか僕をやたら撫でたがったり、普段はふざけた感じだが、二人の女の子に好かれるくらいには素敵な魅力を持っていて。
そして何より、僕にはない圧倒的な力を持っている。そんな力を持っている人は大抵傲慢になる。
僕が差別を受けていたのにもそれが関わっていただろう。
それでも彼は変わらずに僕と接してくれて、とても嬉しかった。
彼は獣人ではないからそれは当たり前なのかもしれないが、それでも嬉しかった。
さらに彼は、ロウガ先輩から僕を守ってくれた。
僕の事情を全て聞いたうえで、親身になって考えてくれた。
……僕の事を可愛いと言ってくれたが、彼の周りにはかなり綺麗な子が揃っているので自信が持てない。
僕にもチャンスはあるのかな?
僕は鈍感じゃないから、既に僕の本当の気持ちは分かっている。
でもそれを彼に伝えるのは今ではないと思う。
全ては、彼の期待に応えてから――
「ミーナ選手、時間です」
控室を出て、舞台へと上がる。
「まさか汚らわしい犬っころが相手とはなぁ。これは楽々二回戦進出だな」
相変わらずの男だ。
昔なら何も言い返せなかったであろう。だが、昔の僕とはもう違う。
「僕は可愛いみたいだよ? そんな可愛い犬っころに、あなたは負ける」
誰かさんの影響でも受けちゃったかな? こんなこと、普段の僕なら言わないんだけどなぁ。
「……潰す」
「僕は、負けない」
僕を支えてくれた人たちのためにも。
「試合開始!」
絶対に、あなたを倒す!
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