Creation World Online
86話
重たい音を立てて巨大な扉が開く。
休憩を終えた俺達はボス部屋に足を踏み入れる。
「何もいないな…」
「みんな!警戒だけはするんだ!」
キョウラクがそう言うと同時に魔法陣が現れ、そこから聖女の顔と胴体に無数の触手がついた浮遊する巨大なバケモノが現れた。
【鑑定眼】を使用すると、各種ステータスと名前がわかった。
名前は『アフロディーテ』、あれで美の女神とか本物にマジギレされるレベルだと思う。
ステータスもバケモノ並に高く、正直ソロで討伐しろと言われたら全力で断る程度には強敵だと思う。
「散開!」
キョウラクの掛け声と共に、前衛と後衛に分かれ、アフロディーテを囲むように陣形を組む。
「弱点は火、風、地属性だ!魔法職
詠唱開始!前衛は全力で抑えるぞ!」
キョウラクの指示と共に俺を含めた魔法使い達は、詠唱を開始する。
前衛は聖騎士を中心に束縛を放って動きを止めつつ、スキルでダメージを与えていく。
詠唱をしながら俺はボスを油断なく観察する。
それにしても…86界層のボスにしては弱くないか?
「魔法職!放て!」
おっと、もう撃っていいのか。
見て見れば、前衛もアフロディーテから全力で距離を取っているところだった。
「いきますよ!【フレイム・オブ・メテオライト】」
「凍れ【フローズン・オブ・メテオライト】」
アンリとナクの上空に、紅く燃え盛る隕石と冷たく輝く隕石が現れると、大気を揺らしながらアフロディーテ目掛けて飛んでいく。
アフロディーテと同じくらいのサイズの隕石が炸裂すると、その衝撃で暴風が発生する。
プレイヤーの殆どは何かしらのスキルで風を無効化していたが、何人かのプレイヤーは風を受けてコロコロ転がっていた。
ちなみにアンリとナクだったりするのだが、あいつらは魔法を撃ったくせに何をやっているんだろうか。
俺は追尾型の雷魔法で追撃を加えつつその様子を眺める。
アフロディーテを見ると、7割半程体力を削れていた。
どうやら先程の魔法で気絶が入ったようで、フラフラとしていた。
「今だ!総攻撃!」
まるで砂糖に群がる蟻のようにアフロディーテに殺到するプレイヤー達によって、アフロディーテのHPを削っていく。
それはその時起こった。
『ーーーーーー!』
聞き取れない程の高音で何かを叫んだかと思うと、触手が次々と硬化していき、折り畳まれると顔を中心に箱状に変形する。
なんだあれ…。ダサすぎやしないだろうか。
そう思った次の瞬間、アフロディーテから光線が放たれた。
「うああああああ!」
「腕が!離れろ!」
「なんだよ、これ…」
目の前に広がる光景はまさに地獄絵図。
身体が融合してしまい、異形と化したプレイヤー達が無数に存在していた。
幸いにも俺やアンリ達は光線に当たらなかったため、無傷だが恐ろしいものだと思う。
「うわあああ!やめろ!やめっ_」
そんな声が聞こえた方角に目を向けると、そこには先程融合したプレイヤー達がのたうち回っていた。
何事かと見ていると、融合部分がピシリと音を立てて裂けていく。
次の瞬間、ドパッと湿ったものが弾ける音がして、融合プレイヤーが完全に裂け、その中から血や臓物に塗れた肉色の人型が現れる。
なんだあれ、寄生卵的なものなのか?
鑑定してみると、名前は『人臓生命体』と出た。
こうしている間にも次々と人臓生命体が産まれては近くのプレイヤーに襲いかかる。
「せやああああ!」
キョウラクが気合の篭った声を出して人臓生命体を斬りつける。
真っ二つに割れると人臓生命体は、グチャっと湿った音を立てて地面に崩れ落ちる。
「みんな!落ち着くんだ!一体一体は大したことはない!」
「キョウラク!後ろだ!」
俺がそう叫ぶと、キョウラクは後ろを振り返る。
そこには先程倒したはずの人臓生命体がぐちゃぐちゃと音を立てて再生している姿があった。
「チッ!トドメだ!」
キョウラクが人臓生命体の首を撥ねとばす。
瞬間、閃光、爆発。
大気を震わせて人臓生命体が爆発したのだ。
即座に近づき、ポーションを振りかけながら俺は尋ねる。
「キョウラク、大丈夫か?」
「ああ、うん。大丈夫だよ…。ッ!他のみんなは!?」
こんな状況でも自分の心配より他人の心配をするとか、こいつマジで勇者に相応しいわ。
周囲を見渡すと、爆発音を聞いて人臓生命体の攻撃をあしらいながら、こちらに視線を向けるプレイヤー達が目に入る。
軽く手を挙げて大丈夫だと伝えると、ホッとした表情になり人臓生命体に向き直る。
キョウラクは男女関係なく全員から愛されてるな。
フレンドがいないと言っていたあの頃が嘘みたいだ。
1人の男性プレイヤーが地面に靴の裏を剃らせながら俺達の目の前に止まる。
「くそッ!下手に手出しできねえ!」
見て見れば周囲のプレイヤー達も頑張ってはいるのだが、向こうは倒せば爆発しダメージを与えてくる上に、高ステータスのボスが援護攻撃を撃ってくるのだ。
先程の光線を放ってこないだけまだ楽ではあるんだが。
どうするかと攻めあぐねていると、突然一陣の風が吹くと、プレイヤーの居ないエリアの人臓生命体の首が撥ね飛ばされ、連続爆発を起こす。
「ひゃはッ!なんだなんだァ?ヌルいなオイ!」
爆発を背後にゲラゲラと笑う1人のプレイヤー。
【戦闘狂】シラが血の滴る手斧を両手に一本ずつ持って立って居た。
『ーーーーーーーーーー!』
自身の配下を一斉に絶命させたシラを脅威だと判断したのか、アフロディーテは速度重視の光線を放つ。
流石のシラでも回避をする事が出来なかったらしく、左腕でそれを受けると左腕の内側が蠢き出した。
シラはその左腕を迷う事なく上腕の中程から切り落とす。
「ハッハァ!本気出すか!【レベルリセッター】」
シラが自身の固有スキルを発動すると、アフロディーテはまた同じく速度重視の光線を放つ。
その光線はシラの身体を貫くかに見えたが、実際はそうはならなかった。
なんと、シラはそれを軽く身体を捻って回避して見せたのだ。
さらにその態勢から手斧を放り投げて、残った人臓生命体の首を撥ねていく。
ふと視線を感じてそちらを見てみると、シラが俺をじっと見つめていた。
「なんだよ」
「なァ、鬼畜の。どっちがあのデカブツを片付けるか俺と勝負しようぜ」
「勝ったら?」
「お前の欲しがってたオリハルコンのインゴットを10kgくれてやる」
「よし乗った!」
そう言って、全身に各種スキルや魔法でバフを掛けると俺は弾丸のような速さで飛び出して、通り過ぎざまに人臓生命体の首を数本のナイフを投げて切断する。
俺目掛けて光線が放たれるが【世界介入】を使い、地面を盾のようにして強引に進んでいく。
アフロディーテの前に辿り着いた俺は【世界介入】で地面を操りアフロディーテを動けないようにすると、あるアイテムを取り出す。
それは2年前に作ったアイテム、魔法水晶と呼ばれる俺の作品の1つをナイフに嵌め込んだ『魔晶ナイフ』と呼ばれる消耗品だった。
ただ1つ、今現在市場に流れているものとは違い、この中に込められている魔法は特別だ。
取り出した数本のナイフをアフロディーテに投擲すると、抵抗もなくアッサリと額に突き刺さる。
『ーーーーーー!』
「もう遅い。【起動】」
光線を放とうとしたアフロディーテだったが、突如額が爆発し、そのまま静止。
次の瞬間、爆音を鳴らして身体の内側から爆発四散した。
魔晶ナイフ、込めた魔法は『爆発系魔術』
懐かしのアンリの魔法だった。
爆発が晴れると、ファンファーレと共に『mission complete‼︎』の文字が表示され、莫大な経験値とLがリザルト画面に表示される。
ドロップアイテムもそこそこあり、俺は使わないが売れば小さな国1つなら買えるだけの金になる武器が2本、アフロディーテの固有ドロップ武器が1本と中々美味しいドロップだった。
こうして第86界層攻略は、何人かの犠牲者を出したものの無事、終了したのであった。
☆
「乾杯!」
キョウラクの音頭でグラスやジョッキをぶつける音が響く。
界層攻略が上手くいった祝勝会らしく、俺は参加する気はさらさらなかったのだが、ラストを決めたやつが居ないなんてとんでもない!と言われ渋々ながら参加しているのだった。
アンリやナクもそれぞれ楽しんでいるようで、ちょろちょろと動き回っているのが遠目から見えた。
そんな中、俺はと言うと_
「あのシュウさんですよね?お願いがあるんですけど、ウチのギルドに_」
「悪いな、他所を当たったてくれ」
俺がそう言うと、俺を勧誘してきたプレイヤーはガックリと肩を落として立ち去る。
先程から俺はずっと、ギルドの勧誘をされていたのだ。
それも1人や2人ではない。多分10は軽く越えてるんじゃないだろうか。
これだからあまり人の集まる場所は好きじゃないんだよな。
小さく溜息を吐くと、エアディスプレイに一件のメッセージが届く。
送信主はおっさんのようで、件名が『【Slaughter Works】の拠点がわかった』と書いてあった。
メッセージの内容を確認し、俺は人気のない路地裏に移動した。
「エンリベル」
『はい。お呼びでしょうか』
俺の影から、ズルリとエンリベルが姿を現わす。
「俺は今からちょっと無茶をする。アンリとナクを見張っていろ」
『承知致しました。主様、お気をつけて』
そう言って優雅に一礼するエンリベルを置いて、俺にとって因縁の場所、第3界層『吸血鬼の古城』を目指して歩き始めるのであった。
休憩を終えた俺達はボス部屋に足を踏み入れる。
「何もいないな…」
「みんな!警戒だけはするんだ!」
キョウラクがそう言うと同時に魔法陣が現れ、そこから聖女の顔と胴体に無数の触手がついた浮遊する巨大なバケモノが現れた。
【鑑定眼】を使用すると、各種ステータスと名前がわかった。
名前は『アフロディーテ』、あれで美の女神とか本物にマジギレされるレベルだと思う。
ステータスもバケモノ並に高く、正直ソロで討伐しろと言われたら全力で断る程度には強敵だと思う。
「散開!」
キョウラクの掛け声と共に、前衛と後衛に分かれ、アフロディーテを囲むように陣形を組む。
「弱点は火、風、地属性だ!魔法職
詠唱開始!前衛は全力で抑えるぞ!」
キョウラクの指示と共に俺を含めた魔法使い達は、詠唱を開始する。
前衛は聖騎士を中心に束縛を放って動きを止めつつ、スキルでダメージを与えていく。
詠唱をしながら俺はボスを油断なく観察する。
それにしても…86界層のボスにしては弱くないか?
「魔法職!放て!」
おっと、もう撃っていいのか。
見て見れば、前衛もアフロディーテから全力で距離を取っているところだった。
「いきますよ!【フレイム・オブ・メテオライト】」
「凍れ【フローズン・オブ・メテオライト】」
アンリとナクの上空に、紅く燃え盛る隕石と冷たく輝く隕石が現れると、大気を揺らしながらアフロディーテ目掛けて飛んでいく。
アフロディーテと同じくらいのサイズの隕石が炸裂すると、その衝撃で暴風が発生する。
プレイヤーの殆どは何かしらのスキルで風を無効化していたが、何人かのプレイヤーは風を受けてコロコロ転がっていた。
ちなみにアンリとナクだったりするのだが、あいつらは魔法を撃ったくせに何をやっているんだろうか。
俺は追尾型の雷魔法で追撃を加えつつその様子を眺める。
アフロディーテを見ると、7割半程体力を削れていた。
どうやら先程の魔法で気絶が入ったようで、フラフラとしていた。
「今だ!総攻撃!」
まるで砂糖に群がる蟻のようにアフロディーテに殺到するプレイヤー達によって、アフロディーテのHPを削っていく。
それはその時起こった。
『ーーーーーー!』
聞き取れない程の高音で何かを叫んだかと思うと、触手が次々と硬化していき、折り畳まれると顔を中心に箱状に変形する。
なんだあれ…。ダサすぎやしないだろうか。
そう思った次の瞬間、アフロディーテから光線が放たれた。
「うああああああ!」
「腕が!離れろ!」
「なんだよ、これ…」
目の前に広がる光景はまさに地獄絵図。
身体が融合してしまい、異形と化したプレイヤー達が無数に存在していた。
幸いにも俺やアンリ達は光線に当たらなかったため、無傷だが恐ろしいものだと思う。
「うわあああ!やめろ!やめっ_」
そんな声が聞こえた方角に目を向けると、そこには先程融合したプレイヤー達がのたうち回っていた。
何事かと見ていると、融合部分がピシリと音を立てて裂けていく。
次の瞬間、ドパッと湿ったものが弾ける音がして、融合プレイヤーが完全に裂け、その中から血や臓物に塗れた肉色の人型が現れる。
なんだあれ、寄生卵的なものなのか?
鑑定してみると、名前は『人臓生命体』と出た。
こうしている間にも次々と人臓生命体が産まれては近くのプレイヤーに襲いかかる。
「せやああああ!」
キョウラクが気合の篭った声を出して人臓生命体を斬りつける。
真っ二つに割れると人臓生命体は、グチャっと湿った音を立てて地面に崩れ落ちる。
「みんな!落ち着くんだ!一体一体は大したことはない!」
「キョウラク!後ろだ!」
俺がそう叫ぶと、キョウラクは後ろを振り返る。
そこには先程倒したはずの人臓生命体がぐちゃぐちゃと音を立てて再生している姿があった。
「チッ!トドメだ!」
キョウラクが人臓生命体の首を撥ねとばす。
瞬間、閃光、爆発。
大気を震わせて人臓生命体が爆発したのだ。
即座に近づき、ポーションを振りかけながら俺は尋ねる。
「キョウラク、大丈夫か?」
「ああ、うん。大丈夫だよ…。ッ!他のみんなは!?」
こんな状況でも自分の心配より他人の心配をするとか、こいつマジで勇者に相応しいわ。
周囲を見渡すと、爆発音を聞いて人臓生命体の攻撃をあしらいながら、こちらに視線を向けるプレイヤー達が目に入る。
軽く手を挙げて大丈夫だと伝えると、ホッとした表情になり人臓生命体に向き直る。
キョウラクは男女関係なく全員から愛されてるな。
フレンドがいないと言っていたあの頃が嘘みたいだ。
1人の男性プレイヤーが地面に靴の裏を剃らせながら俺達の目の前に止まる。
「くそッ!下手に手出しできねえ!」
見て見れば周囲のプレイヤー達も頑張ってはいるのだが、向こうは倒せば爆発しダメージを与えてくる上に、高ステータスのボスが援護攻撃を撃ってくるのだ。
先程の光線を放ってこないだけまだ楽ではあるんだが。
どうするかと攻めあぐねていると、突然一陣の風が吹くと、プレイヤーの居ないエリアの人臓生命体の首が撥ね飛ばされ、連続爆発を起こす。
「ひゃはッ!なんだなんだァ?ヌルいなオイ!」
爆発を背後にゲラゲラと笑う1人のプレイヤー。
【戦闘狂】シラが血の滴る手斧を両手に一本ずつ持って立って居た。
『ーーーーーーーーーー!』
自身の配下を一斉に絶命させたシラを脅威だと判断したのか、アフロディーテは速度重視の光線を放つ。
流石のシラでも回避をする事が出来なかったらしく、左腕でそれを受けると左腕の内側が蠢き出した。
シラはその左腕を迷う事なく上腕の中程から切り落とす。
「ハッハァ!本気出すか!【レベルリセッター】」
シラが自身の固有スキルを発動すると、アフロディーテはまた同じく速度重視の光線を放つ。
その光線はシラの身体を貫くかに見えたが、実際はそうはならなかった。
なんと、シラはそれを軽く身体を捻って回避して見せたのだ。
さらにその態勢から手斧を放り投げて、残った人臓生命体の首を撥ねていく。
ふと視線を感じてそちらを見てみると、シラが俺をじっと見つめていた。
「なんだよ」
「なァ、鬼畜の。どっちがあのデカブツを片付けるか俺と勝負しようぜ」
「勝ったら?」
「お前の欲しがってたオリハルコンのインゴットを10kgくれてやる」
「よし乗った!」
そう言って、全身に各種スキルや魔法でバフを掛けると俺は弾丸のような速さで飛び出して、通り過ぎざまに人臓生命体の首を数本のナイフを投げて切断する。
俺目掛けて光線が放たれるが【世界介入】を使い、地面を盾のようにして強引に進んでいく。
アフロディーテの前に辿り着いた俺は【世界介入】で地面を操りアフロディーテを動けないようにすると、あるアイテムを取り出す。
それは2年前に作ったアイテム、魔法水晶と呼ばれる俺の作品の1つをナイフに嵌め込んだ『魔晶ナイフ』と呼ばれる消耗品だった。
ただ1つ、今現在市場に流れているものとは違い、この中に込められている魔法は特別だ。
取り出した数本のナイフをアフロディーテに投擲すると、抵抗もなくアッサリと額に突き刺さる。
『ーーーーーー!』
「もう遅い。【起動】」
光線を放とうとしたアフロディーテだったが、突如額が爆発し、そのまま静止。
次の瞬間、爆音を鳴らして身体の内側から爆発四散した。
魔晶ナイフ、込めた魔法は『爆発系魔術』
懐かしのアンリの魔法だった。
爆発が晴れると、ファンファーレと共に『mission complete‼︎』の文字が表示され、莫大な経験値とLがリザルト画面に表示される。
ドロップアイテムもそこそこあり、俺は使わないが売れば小さな国1つなら買えるだけの金になる武器が2本、アフロディーテの固有ドロップ武器が1本と中々美味しいドロップだった。
こうして第86界層攻略は、何人かの犠牲者を出したものの無事、終了したのであった。
☆
「乾杯!」
キョウラクの音頭でグラスやジョッキをぶつける音が響く。
界層攻略が上手くいった祝勝会らしく、俺は参加する気はさらさらなかったのだが、ラストを決めたやつが居ないなんてとんでもない!と言われ渋々ながら参加しているのだった。
アンリやナクもそれぞれ楽しんでいるようで、ちょろちょろと動き回っているのが遠目から見えた。
そんな中、俺はと言うと_
「あのシュウさんですよね?お願いがあるんですけど、ウチのギルドに_」
「悪いな、他所を当たったてくれ」
俺がそう言うと、俺を勧誘してきたプレイヤーはガックリと肩を落として立ち去る。
先程から俺はずっと、ギルドの勧誘をされていたのだ。
それも1人や2人ではない。多分10は軽く越えてるんじゃないだろうか。
これだからあまり人の集まる場所は好きじゃないんだよな。
小さく溜息を吐くと、エアディスプレイに一件のメッセージが届く。
送信主はおっさんのようで、件名が『【Slaughter Works】の拠点がわかった』と書いてあった。
メッセージの内容を確認し、俺は人気のない路地裏に移動した。
「エンリベル」
『はい。お呼びでしょうか』
俺の影から、ズルリとエンリベルが姿を現わす。
「俺は今からちょっと無茶をする。アンリとナクを見張っていろ」
『承知致しました。主様、お気をつけて』
そう言って優雅に一礼するエンリベルを置いて、俺にとって因縁の場所、第3界層『吸血鬼の古城』を目指して歩き始めるのであった。
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