女神の加護を持つ死神

つうばく

回復魔法は朝の目覚まし

「……うぅーん……はぁ、もう朝か」

昨日は良く眠れた。
今までの経験を活かし、宿の部屋は大部屋にしたのだ。

高級な宿なのでないかとも思われたが、騎士団が一斉に泊まったりすることもあるらしく、大部屋はあったのだ。
その代わりにベットではなく布団という事だったが、布団の記事は最高級の物でも使っているのかすっごくふかふかで全然悪くなかった。

偶にはこういう風な感じでも良いな。
……後で布団を買って場所の中の家に布団で寝れる部屋も作っておこう。

そんなことを思いながら俺は周りを見渡す。
俺の布団の隣にはぴったりと隙間なく引っ付けられた布団がある。
そこには右っ側にエル、左にはロタンが寝ていた。

エルは小さく丸々ようにして寝ていてすっごく可愛いのだが……。
ロタンは何故か部屋着もゴスロリの服で、ちゃんとした自分の身体ではないから息をせずに寝ているためか、どこか怪しい儀式に少女を生贄にしているようにしか見えてこない。
極め付けに両手を胸の上で合わせているので、もっと儀式感を高めている。

とりあえずこの二人のことは置いておこう。
次は俺達の布団の下の場所にぴったりと隙間なく引っ付けている奴らだ。
ちなみにひとつの布団では誰も寝ていない。
誰もいなかったわけではなく、ここはソラが寝ていた場所であり、多分今は朝ご飯の支度でもしているのだろう。
何かを切っている音が聞こえてくるしな。

まぁ、ここまで言ったら残りは誰かが分かるだろう。

一人は、その大きな二つのお山を強調するかのような服を着ていて、それが良いところまではだけているという感じだ。
あと少しでも捲れれればもう見えたと言っても過言ではないだろう。

そして最後の一人はというと。

……なんと、寝ながら攻撃をしていた!

これは嘘でも何でもないぞ。
誰かがいるわけでもないだろうに、攻撃魔法をバンバン発動し、殴る蹴るという行為を寝転びながらしていた。
そして器用な事に、周りを壊した時は全て修復している。

本当に寝ているのか? と問いたいところであるが、ちょっと可愛いいびきをかいているので本当に寝てはいるのだろう。
まぁ、念のために一応結界を張っておいてあげよう。

「……向こうに行くか」

この部屋は寝室であり、隣の部屋にはキッチンとリビングが合体した部屋が広がっている。
とりあえずそこにソラもいることだから、行くとしようか。








「おはようございます、キラリ様」
「おはよう、ソラ」

ソラは俺が来ることを分かっていたかのように、扉の前で出迎えてくれた。
いやぁー、こういう嫁が欲しいものだ。

……あっ、これはちょっとした呟きだから……そんな本気の目で見ないでいただけると助かるんだけど。
お願い、やめて! その期待感で満ち溢れた目はやめてくれ!

「ふふふ。やっぱり、キラリ様はキラリ様ですね」
「何故にそんな納得をされたのか分からないが、やめてくれたのならそれで良い」

本当に分からん。
簡単に言えばこういうのは理屈じゃないってことだろうな。
……余計に意味がわからないくらいなったぞ、俺。

こん事を思いつついると、ソラが動いた。

「もう朝食の準備が出来てますので、皆様を起こしてきますね」
「手伝おうか?」
「いえ、キラリ様はテーブルでお待ちください」
「分かった」

ソラが手伝わなくていいと言ったのだし、俺はテーブルで待ってようか。
俺がテーブルに行き椅子に座って少し待っていると、隣の部屋からちょっとした悲鳴が聞こえてきた。
何事か! と思い立ち上がったが、何となく理由を察しもう一度座る。

そして、部屋からはソラ、エル、ヘーニル、ロタンが出てきた。
その後ろに、朝っぱらから服が乱れまくっているアルが出てきた。
乱れ過ぎて片方のアレが見えてしまっている。
……何となくわかるが、一応聞いておこう。

「何したんだ、ソラ?」
「アル様が起きてくださらないので、少し魔法を使いました」

やっぱり。
結構強めの攻撃魔法でも撃ったのだろう。
でなければ、ちょっとした魔法などアルの持つスキルに阻まれ自分に跳ね返って来るのだから。
その辺はソラだし分かっているだろうからな。

「……き、キラリよ。ソラが、使った、のは、攻撃魔法で、はないぞ」

もう、こいつまともに喋れてないぞ。
大丈夫なのかよ……。

けど、ここまでアルがなっているのに攻撃魔法じゃないって。
一体、他に何があると言うんだ。

「攻撃魔法ではなく、回復魔法を使ったんですよ」
「回復魔法をか?」
「はい。それも最上級のです」

……ちょっと待てよ。
回復魔法の最上級と言えば、この前にアルがエルを助けるために使った技だ。
そして、俺が使うのを断念した技でもある。
要するに俺には使えなかったのだ。

そして、ソラは俺が使える能力しか大体は使えないのだ。
……気付いたと思うが、矛盾点生じてんだけど。

「なんで俺が使えない回復魔法の最上級使えてんの? ……そんな機能なかったはずだよな」
「それはですね……話すとややこしくなるんですけれども」
「そう言われると物凄く気になる」
「……私レベルアップしてたんですよ。いつの間にか」
「……? レベルアップってソラにあったけ?」
「……はぁー。キラリは忘れん坊過ぎるのじゃ。
この世界へ来る前に一回確認した時があったじゃろうが。その時に、ステータスにはしっかりとレベル1と書いておったのじゃ。
ということはレベルアップしてもおかしくないってことなのじゃ」

それを覚えているアルが可笑しなだけもするのだが……。
あっ、そうだ。
完全に今まで忘れていたが俺には記憶を失う病気があるんだった。
きっとその所為だ、その病気の所為に違いない。

「病気の所為にするのはちょっとどうかと思うぞ、主人」
「儂もそれには賛成なのだ」
「……それもそうだな。流石に駄目だよな」

病気の所為にしてしまうのは駄目だろう。
なので、

「アルの所為だな!」
「何故そうなるのじゃ !? キラリの頭の中はおかしいのじゃないのか!!」
「なわけないだろ。俺はお前よりは賢いって」
「そういう意味じゃないのだ!」
「まっ、冗談はさておき」
「冗談に私を使うなぁ!」

アル様、激おこプンプン丸。
……というか、色々と話が逸れ過ぎだろ、これ。

「まぁ、まとめるとソラがレベルアップして、なんか能力増えてその能力の影響で、俺が使えないのも使えるようになったていう事だな」
「そうですね。まとめるとそんな感じです」

レベルアップって凄いんだな。

「そう言えばなんだけどさ、どうやって回復魔法で起こすの? 回復魔法ならスキルに阻まれないとは分かるけど……」
「回復魔法を上手く使えば、マッサージをされている様な刺激を与えられるんですよ。それが最上級ともなればどうなるか分かりますか?」
「……超気持ち良すぎて気絶するとか?」
「正解です。そしてそれが反対となったら……寝ている状態は敏感ですからね、喘ぎ声の様な物を上げながら起きるんですよ。分かりましたか?」
「分かったけれども……そんなの絶対にくらいたくないな」
「私もあれは二度とくらいたくないのじゃ」

アルでも恐る回復魔法。
そしてそれをソラ。

俺の従者は最強をも恐る者へとなってしまった様である。

「まっ、今はそれよりご飯だご飯!」
「やっと食べれるの〜!」
「無駄に起きてからが長かったからな」
「儂は腹ペコなのだ!」
「私はもう疲れてそれどころじゃないんじゃが」

アルはほっといて、全員腹が減ってるんだしはよ食べよう。

「じゃあ食べましょうか」

全員の朝食を持ってきてくれていたソラが席に着いた。
これで、全員そろったな。

「じゃあ……」

「「「「「「いただきます!」」」」」」














……結局、なんだかんだでアルが一番朝食を食べていた。
俺はって? 楽しみからかあんまり食えなかった。


では、朝食も食べた事だし、その楽しみへと向かうとしましょうか。

ーー冒険者ギルドへと。

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