女神の加護を持つ死神

つうばく

ラスボス?

 ──転移してしまった。

 スキル《夜目》を持っているのに全く周りが見えない。

 もしかしてだが……やっぱり、スキルが使えない。
 他のも、詳細地図マップが開かないということは、異能力は使えない。

「≪ライト≫」

 こっちも使えないのか。

 となると、スキル、魔法、異能力禁止エリアという訳か。
 でも、俺には、

「ここがどこだか分かるか? ソラ」

 ソラがいるもんねー。
 さー、ここは……。

『すみません。私の方でも、スキル、魔法、異能力を使用する事が出来ません』

「そうか……」

『すみません。役立たずで』

「いや、今まで貢献してくれたんだから、大丈夫だ。今回は俺だけでやるしか無いな」

 頼みの綱のソラまで何も出来ないとなると、本格的に今回は俺が頑張るしかないのか。

 仕方ない、取り敢えず明かりを探そう。
 じゃないと、まともに動くことも出来ねー。

 なら俺らしくないが、慎重に行動をしよう。

 ──何故俺らしく無いかって。

 昔から、慎重と言う度に危険な事態に陥っているからだ。
 今回は無いだろう。
 なんか起こりそうなのは……きっと気のせいだろう。
 気のせいだよなぁ。

 そう思ったのが悪かったのだろうか。
 だって、これ完全にフラグじゃん!!

(人間がここへ辿り着いたか)

 何これ!?

『落ち着いてください。ただの《念話》です』

 あぁ、本当だな。
 こんなことで驚くとは、よっぽど疲れてるのだろうか。

 って、こんな事を考えてる場合じゃないか。

(おい! 確実に聞こえているだろう。お前も何か喋ったらどうだ)

「ああ、そうだな。……俺は、横井キラリだ」

(キラリか。我はヘーニル。この迷宮の裏版、百階層のボスだ。今までクリアした者からは、『邪神』や『番人』と呼ばれておる。まぁ、何とでも呼べ、どうせ今から戦うのだから、どうでも良いが)

「うん!? ちょっと待ってくれよ。ここ百階層? もしかしてラスボス?」

 邪神って、ゲームなら、魔王、魔神以上の最後のラスボスじゃん。

(何を言っているのだ、今更。一階層下の所で、最終試練の事が伝えられている筈だろ)

「いや、いや、それがだな──」

 取り敢えず、ここまでの経緯を誤魔化す事なく全て話した。
 だって、誤魔化したってすぐバレそうだからな。









「──という訳でここまで来てしまった」

(そうか。あの、天然アホ主人がまたやってしまったか。……その魔方陣は、主人が移動の時に使っていたものだ。他のも階にもあるのだが、その内の一番駄目なのを引いたか。よりにもよって最上階に来るとは。どうする、お前は。今やっても良いが、確実にお前では勝てないぞ、我には)

「そうなんだよなぁ〜。スキルが使えない今でも分かる。あんたは強い。アルと一緒で、気が感じれないからな」

 今、言ったが、最近スキルがなくてもある程度相手が、どこに居て、どれ位強いか分かるようになった。
 それなのに、こいつの事は、全く感じない。
 だが、やばい、という事だけが、身体全体にビシビシと伝わってくる。

(ふん。お前も分かっておったか。……それよりアル? と言うのは、我のデータベースにも反応しとらんが誰だ)

 データベース?
 聞いた事無いスキルだなぁ。
 ……後で、聞いてみるか。

 それよりも、さっきの言葉の返事返さなきゃ。

「ああ、お前の主人だよ。天之尾羽張神」

(…………………ふふふ。ふはは。ふはははははっ!!)

 何こいつ?
 急に不気味に笑いだして怖いんだけど……。

 それでも返事しなきゃ駄目か……はぁー


「どうした?」

(いや、主人の事を、そんな風に言う奴がこの世に居るとは、思ってもいなかったからな。ついな)

 ついだからって、そんな笑うか。

(ついだからって、そんな笑って、すまないなぁ。……そんな事より、これからどうする? 我を倒す、それか認めさせるまでは、ここを出れないぞ)

 ああ、俺の考えが分かるのか。
 まぁ、さっきのはそれで良いけど。

 それより、

「えっ!? マジで」

(ああ、嘘は言わないからな。……もし、選択肢が思い浮かばないのなら、我が良い交換条件をあげよう)

 これ、受けた方が良いやつなのか?

 んんぅ〜、受けなければ戦うしか無い。
 けど受けたら戦わなくて済む。

 ……ん? 確実に受けた方が良いやつじゃん!

「ああ、分かった。受けてやる。お前の選択を」

(ほうほう。条件を聞かなくても受けるとは……見直したぞ。一応だが、言うぞ──)

「えっ!? 聞けたの。条件」

(……当たり前だろ。なら、お前は条件を聞かず、受け、それが、凄く自分に損をする条件だったとしても良いのか? 嫌だろ)

「それもそうだなぁ。……けど、さっき言った事は変えない。男に二言は無いからな。……さっさと、条件を言え」

(……ん? なんか言ってる事が矛盾していると言うのだろうか、話が滅茶苦茶だぞ。まぁ、良いか。取り敢えず言うが、我が一週間、修行をつけてやる。終わった時、我を越していればここをクリアしたと見なす。それで我からの条件だが、クリア出来たらここか──)

「よっしゃ! やってやる! さっさとやろうぜ。おい、ヘーニル! 出てきて修行をつけてくれ。この時間が無駄だ」

(お前には、人の話を聞くということが出来ないのか。……はぁ〜〜。ちょっと待っとれ。今からそこへ行ってやる)

 あっ、そうだった。
 ヘーニルは、声しか聞こえて無かったんだ。

 暗すぎて近くにいるかも分からないのだったな。
 ってか、どんな奴なんだろう。

 声は男でも女でもない、けど、男と言えば男だし、女と言えば女って声なんだよなぁ。
 だから、完全に俺の予想だけど、喋り方的に女性。

 それも、邪神と呼ばれる程だし、見た目は結構大人だと思う。

 あっ!? 部屋が明るくなった。
 ここ、ゴツゴツとした、岩だらけだなぁ。

「おい、気付いて無いのか? 後ろにいるのだが……」
「あれ、今、頭の中に入ってくる声じゃなくて、後ろから、聞こえた様な──!」

 後ろから聞こえる。
 そう感じ、後ろを振り向いた瞬間、俺は何かと頭をぶつけ、押し倒す様に倒れた。

 いったぁぁああーー!

 早く立とう。
 そう思い、地面に手をついたんだが、何かおかしい。

 地面って硬いよな。
 何このマシュマロの様に柔らかいものは。

 これはなんだろう。

 ──もみもみ

 ん? もしかしてこれは……。

「お前は姿を見せた早々、どこを触っているのだ」

 やっぱり、こいつの……そんな事より

「すみませんでしたぁぁああーーー!!!」

 何をしたかって。
 後ろへ、ズリズリと急いで下り、俺の最終奥義ーー土・下・座、をした。
 これをすれば大抵は許される。

「まぁ、良いのだが、そんな甘い考え、止めておいた方が良いぞ」

 そうだったぁぁああーー。
 こいつ、心が読めるんだったぁぁああ〜。

 まっ、許してもらえたし良いや。

「立ち直り、はやっ!?」
「ふっふー、そうだろ。それより、本当にすまなかったな」
「いや、もうそれは良いのだが……この姿を見てなんと思った?」

 え? お前の姿?
 そりゃ、もう、予想通りの大人っぽい感じで、

「嘘はいらん」
「分かった分かったから、足を踏むの止めてくれ。……はぁー。え、えーとな、言うぞ、特徴は、髪の毛は金髪で瞳は赤色(もし白髪だったらアルと似てるなぁ)見た目の特徴は。まぁ、良いとして、顔は物凄く可愛いぞ。身長が……だな」

 髪の毛は金髪。
 瞳は赤色。
 顔は正に絶世の美女いや、絶世の美少女と言えるだろう。

「その、身長を見てどう思う? ……やっぱり低いか?」

 身長は……予想だが、150センチメートル前後って所だな。
 普通に高いと思うんだが。

 いや、見た人から見れば、幼女とも言えるのかな。
 俺はロリコンじゃ無いし、そうは見えないけど。
 あの胸と合わせるといわば巨乳ロリだな。
 そもそも、俺の歳じゃ、ギリギリセーフだな。

 あれ? ……めっちゃ、こっちを睨んでいるんだけど。
 なんか、背中から生えた。

 うん? 手形をしているなぁ。
 それとこっちに向かって来ている気も……いや、来てるな。
 それと、この距離じゃ避けるのは不可能と言えーー!!

 ──俺は意識を失った。












「丸二日、お前は気絶していたぞ。さっさと起きろ。じゃないと時間がどんどん無くなる。さあ、修行をするぞ」

 俺、今まで二日も気絶してたのか。
 あの言葉はNGだな。
 ようzーー

「す、すみませんん!」

 今、後ろであの手が見えた。
 あの手を向けられるのは、怖いぜ。
 もう、絶対言わない。

「ふざけておらず、さっさとやるぞ。取り敢えず、お前の全力を見せてみろ」
「何に?」
「今から、我が出す、魔物だ──違うな。我が造った魔物だな」
「造れるの!? 魔物って」

 魔物は造れるものだったんだ。
 俺の模造レプリカをした時は出来なかったんだけどな。

「その、れぷりか、とやらは、出来ないだろう。魔物を造れるのは、それ専用のスキルだからな。そんな事より、準備は良いか?」
「準備なんていつでも出来てるぜ!」
「なら……ほいっ! 出したぞ〜。取り敢えず言うが、そいつは攻撃をしない。だが、倒すのはキツイだろう。倒す期限は一週間。修行スタート」

 ほいっ! って軽いな。
 そんなんで出来るのかよ。

 もう、始まり!?
 それより、たった一体に、一週間とは舐められたぜ。
 まぁ、さっさと倒すか。

 取り敢えず、全力でやれと言われたんだし、もう、スキル、魔法、異能力禁止は無くなっただろう。
 だから、鑑定っと




 ……あれ? 何も起こらん?

「何をしているんだ。この部屋じゃ、何も使えないが……」
「なんで! じゃあ、全力を出せないじゃん」
「はぁー。そいう全力では無く、己自身の全力で戦えという意味だったんだが」
「そいう事だったのかよ。じゃあ、銃は?」

 銃はスキルとかじゃ無いし、良いよな。
 流石にそこまで、禁止という訳は……。

「勿論、その、じゅう、と言うのも禁止じゃよ。武器も己自身の力ではないからね〜」

 うわー。

 スキル禁止。
 魔法禁止。
 異能力禁止。
 武器禁止。

 こんなことされたら、俺、唯の人間じゃん。
 いや、人間でも無いか。
 スターテスでもう、人間とは書かれてないだろうし。

 マジで、どうしよう。

「……はぁー。もう。自分がスキル、魔法とか、なんでも良いけどそれを使って戦うイメージをするのだ。それが、我からのアドバイスだ。あとは知らん」

 そう言って、背中から黒色の羽が出てき、そのまま飛んで、向こうにある岩の上へ乗った。
 寝た。

 いや、寝るのはや!?

 もう、取り敢えず言われた通りに行うか。

 自身の戦う姿をイメージする。

 スキルをガンガン使って戦う姿……。
 魔法をぶっ放してる姿……。

 スキルを使う時も、魔法を使う時も、言えば異能力を使う時も、感覚を研ぎ澄ましてやるよな。

 感覚を研ぎ澄まして……イメージ、イメージ。











 なんか、来てる、かも。
 身体の奥から、スキル、魔法、異能力とか、そんなんを使う時みたいな感じが湧き上がってくる。

「もう少し、あと、もう少しで……」

 そう言葉を放った瞬間、俺の身体に異変が起こり出した。










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