女神の加護を持つ死神

つうばく

ゴブリンの森にレッツラゴー

「……あれ? もうみんな来ておったのかの」

 俺、ソラ、ヘーニルが座る、テーブルにアルがやって来た。

「もう、ってな! 時間はとっくに過ぎてるぞ、二分遅刻だ」
「経ったの二分でそこまで怒る事はないじゃろ」

 俺は今、アルが遅れてきた事に怒った。
 まぁ、こんなにも怒る事はないんだろう。
 しかし、俺がここまで怒っているのにも理由がある。


 ◇◆◇◆◇◆


「よう、ヘーニル。早いなぁ、お前は」
「いや、主人よりも早く来るのは従者としてあたりまえだ。それよりももらったお金を返すわ」
「いや、返さなくても良いんだぞ」
「まぁ、もらった分のお金はもらっておく。しかし、それ以外のお金ってことだ」
「それ以外?」

 ヘーニルはよく分からない事を俺に言ってきた。
 もしかして、何かで稼いだのか?

「ああ、冒険者ギルドと呼ばれる場所で、ゲームというのが置いてあってなそれをしたんだ」
「それって、カジノみたいなのか?」
「かじの?」
「カジノとは、簡単に言えばお金を掛けあう遊びで、勝ったほうがその掛けあったお金をもらえるという、のです」
「やっぱり分かりやすいな。ありがとう、ソラ」
「良いんですよ、ヘーニル様」

 ゲームか。
 俺もしてみたい、そのワクワクが止まらなかった。

「ーーで、いくら稼いだんだ?」
「六十億アースだな」
「えっ!? そんなにも」
「何をこれぐらいで驚いているんだ。主人の持ち金の方が破格すぎるぞ」
「まぁ、それもそうなんだが」

 俺の金は現実味がないからな。

 それに比べて、ヘーニルが稼いだお金の方が現実味があって、驚くのはあたりまえだ。
 すると、ヘーニルが

「まぁ、こんな事はどうでも良いから、とりあえず、主人に預けておくぞ。使ってもいいからな」

 と言って、ヘーニルがステータスを開くと、俺のデータのお金の方の数が増えた。

「ちょっと良いか?」
「ああ、まだアルは来てないし、良いぞ」
「じゃあ、ソラのその格好何なのだ? 物凄くエロいんだが……」
「いや、これから駆除に行くじゃん。ソラだけ、装備無しは可哀想だろ。だから、ガチャを使って、一式揃える事にしたんだよ。で、当たったやつで使えそうなのを合成したら、こんな格好になってしまった」
「……そうなのかぁ……その、どんまい」

 何故、慰められてるんだ。
 俺は、不思議にそう思った。

 それに、この武器、防具は強い。
 それを分かってもらわないと。

「いや、この武器も防具も凄いんだぞ。両方、神が宿った武器や防具にもまさる力があるんだから」
「へぇ〜、本当に凄いんだな。なら、良かったなソラ」
「はい。それにキラリ様に戦姫の様な姿だとも言われました〜」
「ほほ〜う、やっぱり、ソラに甘いの〜」
「やかましいわ」

 俺は、馬鹿な事を言っている、ヘーニルに怒った。
 本気ではないけれども。

「それよりも遅いなぁ、アル」
「そうだなぁ。我が来てから三十分は余裕に過ぎている。流石に遅いと考えるべきか」
「では、様子を見てみますか?」
「そんな事……いや【世界の真理】を使えばいけるのか、じゃあ頼む」

【世界の真理】で、アルの様子を見てみた。
 そこに映っていたのは、ご飯、お菓子など様々な食べ物を買っているアルの姿が映っていた。

「おい、こいつは何をしてると思う? 俺には、物凄く楽しそうに思えるんだが」
「偶然だな。我もそう見えるわ」
「お二人共、ここには、他の方もおられるので覇気をあまり放たないでください」
「そうだったなぁ。すまん」
「本当にだ。我とした事が……」

 俺とヘーニルは、しっかりと周りの人達の事まで考えているソラに尊敬の目を向けながら謝った。
 すると、怒っていたためか少し膨らませていた頬がへっこみ、「分かられたのなら、良いですよ」そう笑顔で言ったきた。

「「か、可愛い」」

 どうやら思った事は俺もヘーニルも同じだった様だ。
 まぁ、こんな笑顔を見れば誰でもそう思うだろう。

「私が可愛いだなんて……もったいなきお言葉」
「だから、さっきも言ったろ。謙遜するなって。もっと自分に自信を持て」

 俺は思っていた事を言った。
 これには、ヘーニルもうんうん、と頷いていたから同じ考えなんだろう。

「アル様に変化がありました。アクセサリーショップに入られました。何か店員さんと選んでいる様ですよ」
「俺らを待たせておいて、呑気に買い物かー」
「これはーー」
「「お仕置きだ」」
「何を仰られているのですか。そんなのは駄目ですよ。駆除の時間が減ります」
「……ソラが言うなら止めとくか」

 俺は、何か時間をあまり取らずに出来るお仕置きを考えた。
 まぁ、結果は何も思い浮かばない。

「仕方がない、今回は止めとくか」
「そうだなぁ」

 うむ。
 ヘーニルも時間をあまり取らずに出来るお仕置きを考えていたのか。
 何か気が合うな最近、こいつとは。

「何かを買われて、外に出ました。行き先は……ここですね」
「そうか。そうか。お仕置きは駄目だとしても、怒るだけは怒ってやろう」
「それならば良いですよ」
「ん? 良いのか? ソラ」
「大丈夫です、ヘーニル様。キラリ様の怒るというのは、下げてから上げるタイプーー始めは起こりますが後から、優しくフォローするというものですので」
「そうか、なら良いんだが……。何故、こんなにも主人の事を知っているんだ。逆に怖いわ」
「何か言いましたか? ヘーニル様」
「い、いや、なんでもない」

 俺には今のヘーニルの発言が聞こえていた。
 俺も、何故、ソラが俺が考えていた事が分かったのかビックリしているよ。


 まぁ、気ままに待とうか。
 ーーアルが帰ってくるのを。


 ◇◆◇◆◇◆


「ってな感じで、俺は今怒っている」
「そうじゃったのか、それはすまなかったのじゃ」
「いや、良いんだよ」
「あっ! 忘れていたが、私からのお土産じゃ……それは、MP貯金と呼ばれる能力がついている、ぶれすれっとじゃ。ほら、付けてみろ」
「もしかして、これを買うためにあの店に入っていたのか」
「そうじゃが。それで遅れていては、元もこうもないからな。ちゃんと罰は受けるぞ」
「いや、良いよ。罰は。俺のためにやってくれたんだし。けど、次からは遅れるなよ、分かったか」

 アルはこくこくと顔を縦に頷いた。
 結構反省もしている様だし、もう良いだろう。

「それじゃあ、昼飯を食ったら行くか。駆除に」
「そうじゃの」
「そうですね」
「かしこまりました」






「じゃあ、みんな昼飯をとってきたし、食べようか」
「「「「いただきます」」」」


 ◇◆◇◆◇◆


「ここが森の入り口か……来た時と雰囲気が全く違うな」
「そうか? こんなもんじゃよ。それよりもさっさと行くぞ」

 俺らはアルを先頭に森へと入っていた。
 森は、来た時とは別格と言える程暗く、そして禍々しい紫色の気で包まれていた。








「あの〜、キラリ。ここさっきも通ったのじゃ」
「そうか? 通った気はしないんだが」
「いえ、ここはさっきも通りました。その証拠に先程通った時につけた跡が残っております」
「本当だな。……アル良く気付いたな」
「まっ、私ならこんなの朝飯前だな」
「昼飯をもう食べたぞ?」
「そいう意味じゃないのじゃ!」

 アルは頬を膨らませ、子供の様に足と手をジタバタさせて、怒っていた。
 久しぶりにからかう事をしたなぁ。

「キラリ様、物凄く楽しそうですね。こんな時なのに」

 俺は楽しかったのか、無意識に笑っていた様だ。
 こんな時なのになぁ。
 いや、無意識に俺は負けないと心で思っているのか。
 こんな事を思っていたら、足元をすくわれるかもしれない。

「……切り替えるか」
「何か言ったかの?」
「いや、なーんにも」
「物凄く、気になるの〜」

 俺は心で思っていた事を無意識に声に出してた。
 こいう事がたまにあるんだよなぁ、直せないかな、これ。

「無理じゃな」
「そうだな」
「お言葉ですが、直らないものと思われます」
「お前らなぁ……勝手に人の心を読むなっ!」

 何この三人の息がぴったりなの。
 いつの間にこんな仲良くなってんだよ。

「結構前かの?」
「そうだな。初めて会った時ぐらいじゃないか」
「それぐらいの時期かと思われます」
「だから、人の心を読むなよ。マジで止めて」

 また、心を読まれた。
 それで、俺は怒る気も失せて、もう諦めた感じで、それもお願いする様な感じで止めてと言った。
 しかし、アルは、悪女、その言葉を思わせる様に笑った。
 なにこの人、怖いよ、マジで人か? いや、神か。

「あの、それでこの状況をどう脱出しますか」
「そうだったなぁ。てかこれって、この禍々しい紫色の気で幻覚みたいなのを見せてるんだろ」
「多分、原因はそうでしょう」
「なら、ここは俺に任せろ」

 俺は、気で出来てるなら、気で返しちまえ。
 この方法を思いつき、駄目元でしてみる事にした。

「第一段階――〝解放〟」

 俺は身体にある気を一気に出すために纏造クライシスへとなった。

 パリッ

 ガラスが割れる様な音とともに、禍々しい紫色の気が消え、青空が見えた。

「あのさ、一つ疑問があるんだけど」
「どうしたのですか?」
「ここって、ゴブリンの森で間違えないよなー。『はい』……じゃあ、来た時とみたいにうじゃうじゃゴブリンが出てくる筈じゃん。全く出てこないし、それにゴブリンってこんな高度な魔法を使えるの」
「いえ。しかし、そう言われればそうですね。ゴブリンは高度な魔法など使えない筈ですし」
「それならば可能性は一つじゃろ」
「ああ」

 アルも気付いた様だ。

「「ゴブリン以外の何かがいる(のじゃ)」」
「それならば、主人よ、詳細地図マップでも使って調べたら良いんじゃないか」
「いや、それはソラにもうしてもらった。けど、もう少し奥に何かがあるだけで、魔物も何もいないんだよ」
「何か、なのじゃ。それが原因と考えるのが、一番自然じゃな」
「そうなんだが……まぁ、考えるより前に行動ってか、行ってやろうか」

 俺は、考える事を止め、何かがあるところに進む事にした。
 しかし、その場所は結構遠い。

「どうやって行く? このメンバーなら飛んででも良いんだが」
「それで良いのじゃ」
「我も賛成だ。しかし、ソラは《飛行魔法》を使えるのか」
「はい。キラリ様の能力を全て使えるので」
「便利じゃな、それ」

 確かに便利だろう。
 しかし、ソラはなにも能力が覚えれないと以外にコスパが悪いんだよな。

「じゃあ、飛んで行くぞ〜」
「「「おー(なのじゃ)」」」


 ◇◆◇◆◇◆


「追いついたぞ、アル」
「ふん。最後まで着いてこれるか、なのじゃ」

 今、俺らは暇だったために、アルが、「れーすをしよう」と言い出し《飛行魔法》で目的地までのレースが始まった。
 しかし、ソラとヘーニルを置き去りにし、結果的には、殆ど俺とアルでの勝負と今はなっていた。

「見えた。あの洞窟だな」
「あの、洞窟なのかの。この距離なら、本気を出してやるなのじゃ。キラリには着いてこれないと思うのじゃ」
「あ"!? 俺が負ける分けねーだろ。やってやろうじゃないか」

 俺の本気を見せてやる。

「第一段階――〝解放〟」

 纏造クライシスを俺は使った。

「むむ、それはズルいのじゃ」
「なら、お前もやれよ」
「そうじゃな……ほいっ」

 アルは、ほいっ、という掛け声とともに纏造クライシスへとなった。

「ほいっ、って何だよ!」
「キラリで言う、第一段階じゃが? 可笑しいか?」
「いやいや、可笑しさ満載だろ! 何でほいっ、っで出来るんだよ」
「いやいや、キラリの第一段階が特別なんじゃよ。私のは普通の纏造クライシスじゃから、慣れると、何も無しでいけるぞ。私は癖で言っておるがの」
「まさかの俺が可笑しいパターン!? ほいっ、が普通なのか……」

 今回は俺が特別だからなそうだ。
 アルのが普通らしい。
 絶対逆だよなぁ、普通。









「一番のり〜なのじゃ。私が一番〜なのじゃ」
「そうだな。俺も一番だけど。同着だし……」
「そんなことはないぞ。私のは方が速かった」
「いや、俺だな。そう思うだろう、ソラ」
「私が一番遅かったので、分かりませんが……ヘーニル様なら」
「むむ。我も分からんぞ。見てなかったし。もう、そんなことはどうでも良いだろ」

「「良い分け無い(のじゃ)!!」」

 良い分けある訳ない。
 勝負に白黒は大切だ。

 まぁ、こんなことでみんなを待たせるのは良くないか。

「じゃあ、この話は引き分けということにして、この何かがある洞窟に行くぞ! ……多分、答えが解るけど……」
「そうじゃな。きっとあれじゃろな」
「そうだろう。主人の思っているのであってると思うぞ」
「キラリ様の考えが正解だと思います」
「みんなの答えは一緒だろ。まぁ、行くか」

 ーー俺たちは、何かがあると思われる、洞窟へと入っていった。

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