暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第148話 〜戦争理由〜




サラン団長を殺し、俺たちを利用しようとしたレイティス国。
あのとき逃げていなければ、今頃俺もサラン団長と同じ末路をたどっていたことだろう。
もしくは何らかの形で利用されていたに違いない。
正直、残してきたクラスメイトのことがなければ、もう名前すら聞きたくなかった。


「話しは大方聞いていた。お前たちの推測も当たっているだろう。考えていたのだろう?戦争理由にしようとその書類を欲していた国を。……それはレイティス国だと言っているんだ」


クロウは俺の部屋に入ってくると、部屋に一つしかないソファにどかりと腰を落とす。
俺もラティスネイルも立っているのに、やはり歳なのだろうか。


「とりあえず、どうして魔族がここにいるのかは聞かないでおいてやる」


そう言ってクロウはじろりとラティスネイルを見た。
ラティスネイルは居心地が悪そうに身じろぎをしたが、その言葉に反応はない。
クロウは『世界眼』を持っていないので、『魔力隠蔽』で人族と同じくらいの魔力量に感じられるラティスネイルが魔族であると分かるはずがないのだが、知り合いだったのだろうか。

そんな俺の考えを知ってか知らずか、いつも通りの様子でクロウは話を続ける。


「とりあえず、レイティス国の現状を聞きたいか?お前の知り合いとやらもそこにいるのだろう?」

「知り合いというか、同郷というか……」


あいつらと俺は知り合い以上友達未満だろうか。
クラスメイトという言葉がない以上、口で説明するのは難しい。
というか、この世界に学校というものはあるのだろうか。


「正直、あいつらのことはどうでもいいが、死んでいたら寝覚めが悪い」

「そうか。……残念だが、城の中の召喚者の情報はない。だが、死んではいないようだな。城に運び込まれる食料が変わっていない」


その言葉に、知らずのうちにホッと息をついていた。
どうやら俺は自分で思っている以上にクラスメイトのことが心配だったらしい。

あの日、濡れ衣を着せられて一人城を出たことを後悔はしていないが、クラスメイトにかけられていた呪いをすべてどうにかしてから出るべきだったとは思っていた。
あのときは自分のことで必死だったし、サラン団長の死でショックを受けていたため正常な判断ができていなかったのだろう。
城にはジールさんがいるから最悪の状況にはならないだろうとは思っていたが、今はジールさんも勇者も城にはいない。
どうしているのだろうか。
勇者たちはがどういう風に城から出てきたのかは知らないが、少なくとも俺のことは恨んでいるだろうな。


「死んでいないならべつにいい。他には?レイティス国が戦争を起こしたがっていると推測するに値する情報があるんだろう?」


俺が聞くと、クロウは険しい顔で重々しく頷いた。


「ああ。お前、城にいたときに王が死者の蘇生に興味があると噂されていなかったか?」


俺は少し考えてああと頷いた。
そういえば城の蔵書室でサラン団長から聞いたことがあるような気がする。
なんでも愛していた妻が亡くなったので、生きている娘をそっちのけで生き返らせたいとか。
俺も母さんか唯のどちらかが死んでしまえばそうなってしまうのだろうか。
でもそんなことは魔法が使えるこちらの世界だったとしても不可能だと思っていたので聞き流したような……。
アメリアの『蘇生魔法』でも何十年も前に死んだ人を蘇らせられるわけではないのだから、結局はお伽噺だ。


「だが、そんなことは不可能だろう。それが戦争を起こしたいことと何の関係がある」


もし死んだ人間が生き返るようなことになれば、この世界の人間は死を恐れたりしない。
だが、クロウの顔は険しいままだった。


「もしそれが、計算上は可能だとしたらどうする?」


クロウの言葉で、部屋の中の温度が急激に下がった気がする。


『おい、流石に冗談であろう?死んだ人間が生き返るなど、有り得ん』


夜が呆然と呟く。
が、俺はクロウが冗談なんて天変地異が起きても言わないのを知っている。
でも、もしそれが本当だとしたら、クロウは妹を生き返らせるのだろうか。


「残念ながら本当でな。……ただし、代償として何万、何百万の命が必要になるらしい。それほどの命を犠牲にしてでも生き返りたい者がいるのかと俺は聞きたいがね」


その言葉に絶句したが、少し安心もした。
どうやらクロウはそこまでして妹を生き返らせたいとは思っていないらしい。


「方法は?人間一人と何万、何百万の命なんて釣り合いが取れないだろう?」


どうして死んだのは一人なのにそんなにも代償が必要なんだ?


「それは知らんが、スキル『引き換え』による一人の人間を生き返らせるのに必要なのは大量の命らしい。だからレイティス王は戦争を起こしたがっている。初めは同じ人族領にある大和と戦争を起こそうとしていたが、ジール坊たち騎士団が止めて事なきを得たようだな」


なるほど。
ジールさんが騎士団をやめさせられたのはそういう理由からか。
どちらの国が強いのかは知らないが、どちらにしても大量の死者が出るだろうな。
レイティス国の人たちはどうして反対しないのだろうか。
それとも、反対している人間もいるが王が聞く耳を持たないのだろうか。

というか、スキル『引き換え』ね。
厄介なスキルだな。
それ相応の代償があれば何でもできるということだろう?
戦闘、日常問われず汎用性は高いスキルだ。


「で、お前はそんな情報をどこから手に入れているんだ?」


前々から気になっていることだ。
どこにいても、どこに行っていてもクロウはどこからか情報を手に入れてくる。
クロウはそう聞く俺の頭をぐしゃりと撫でて部屋を出た。


「内緒だ」


行動がいちいちイケメンなんだよ。
寿命も近いジジイのくせに。



「暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 真砂土

    クロウかっこいいねぇ
    イケメンだねぇ

    0
コメントを書く