暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第137話 〜ギスギス〜



「内容による」

「貴様っ!無礼であるぞ!!」


俺の返答の何が気に喰わなかったのかは知らないが、いきなりかみついてきたヴィクターに俺は思わずため息をついた。
さっきはわざわざ押し殺したのに、意味なかったな。


「内容も聞かずにハイ分かりましたなんて言えるわけないだろう。依頼内容とそれに対する報酬を言ってからだ」


俺がそう言うと、イグサム王は少し笑った。


「どうやら異世界の勇者様は存外頭が回るらしいな。よかろう。……今回オダ殿にはある者の暗殺を頼みたい。報酬は、この国にいる間の安全でどうだ?」


にやりと笑うイグサム王に、俺はやっと気づいた。
この人は俺が嫌いな人種だ。


「断る」

「なっ!?」


すっぱりと言い切ると、ヴィクターが目を見開く。
獣人族において王様がどんな立ち位置にいるのかは知らないが、驚きすぎじゃないか?


「どうしてだ?君たちはここに来るまでたくさんの魔物や人に襲われたと聞く。エルフ族領、獣人族領のウル、マリ。争いがない別の世界から来た君たちが第一に望むのは安全だと思ったが」


この人がなんでそれらを知っているかは今は置いておくが、勘違いも甚だしいな。


「悪いが、自分の身くらい自分で守れる。世話には及ばない」


俺のレベルをどんな風に認識しているのだろうか。
ステータスを見る限り、俺以上の実力を持っているのはこの中にいない。
まあ、ステータスが見えているのは俺とアメリアだけだから仕方のないことではある。
だとしても、俺たちがどこで襲われたか知っているのなら、ウルで俺がした魔物の殲滅も知っているはずなのだが。


「貴様、まさか自分で大量の魔物を殲滅したなんていうデマを流したのか!?」


いきり立つヴィクターの言葉で大体理解できた。
どうやら俺が魔物を『影魔法』で殲滅したことを嘘だと思っているらしい。
俺の隣でアメリアが顔をしかめる。


「いきなり何を言うかと思えば、デマ?何を根拠にそんなこと言っているの?」

「では、アメリア王女はその場にいなかったと報告されていますが、何を根拠にその者の嘘を信じるのですか?そもそも、こんな男に百を超える魔物の殲滅などできるわけがありません!」


外見だけでなぜか断言された。
なんなんだこいつ。
イグサム王も笑っているだけで止めないし、むしろ俺を観察しているようにも感じる。
横目でアメリアの笑みが深くなったのを見た。
これは、かつてないほど怒っているな。


「そう報告をされたということは、実際にその人はその場にいたということ。あなたは仲間の言うことも信じられないの?それに、初めて会ったあなたよりアキラのことを知っている。もうその口を開かないで。不愉快」


ハイ論破。
なんて言葉が浮かんでくるほど鮮やかなお手並みだった。
流石俺の何倍も生きていることはある。
ヴィクターは唇をかんで黙り込んだ。


「アキラのした行いをその場にいなかった私が証明することはできない。だけど、それはアキラの嘘とイコールではない。つまり、この会話は不毛。……話を戻しましょう。アキラに依頼した暗殺をしてほしい人ってだれ?」


ああ、そういえばそんなことも言っていたな。
そのあとに言われた安全を保障するとかなんとかで完全に忘れていた。


「君たち冒険者なら名前くらいは聞いたことがあると思うが、君にこのウルクのギルドマスター、グラムを暗殺してほしい」


出てきたのはまさかのグラムの名で、知らされてなかったらしいリアがハッと息をのんだ。
一方で俺とアメリアもそれぞれ違った反応をした。


「自分の甥っ子を殺したいのか」


これまた困った依頼だ。
依頼相手は王様で、殺すのは追放されたが一応は王族で、それなりの地位にいる人だ。
俺はこの国の民ではないから強制ではないだろうが、それでも王の言葉にはそれなりの強制力があるというもの。
どうしたものか。


「グラムのことは知っているのか。ならば話が早い。安全は保障する代わりにあやつを殺せ」

「だから言っているだろう。俺は守られるほど弱くないし、暗殺の依頼も断る」


しつこいな。
少しばかりイラっとしたとき、アメリアが俺の手を握った。


「なら、この城の中で一番強い人とアキラを戦わせてみればいい。それでアキラが万が一にも負ければそちらの条件をのむ。アキラが勝てば私たちは自由にする。アキラ、いい?」


アメリアに頷いて玉座を見上げる。


「……アメリア殿、本当にいいのか?勇者召喚者とはいえ、人族が獣人族に勝てるわけがないだろう」


玉座に肘をついた姿勢のイグサム王の言葉に、ようやくこれまでの言動に合点がいった。
この世界において、魔族が一番強く、エルフ族、獣人族ときて人族が一番弱いのは当然のことであり、覆しようがない常識なのだ。
ヴィクターが仲間の言葉を信じるよりも俺を疑ったのも、イグサム王が金などよりも俺たちの安全をくどいくらい取引に持ち出したのも、俺が人族だから。


「いや、そうでもない。それに、俺も女の前でデマだの嘘だの言われて引き下がるわけにもいかないからな」

「……それでアメリア王女の前で恥をかいたとしても後悔しないことだ」


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