暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第123話 〜ホテル〜



意外と宿は清潔感のあるいいところだった。
獣人族の建物は外装と内装が真逆であることが多いから、しっかりとした建物を見た時にはじめじめとした部屋を想像したが、内装はモノクロで統一された高級感漂うホテルだったので拍子抜けする。


「思ったよりいいところだが、宿代とかは大丈夫なのか?」


俺たちは一応は食べ盛りの男子高校生だし、俺以上に食べるアメリアがいるので食費だけでもすごいことになる。
そのうえこんなにいい宿となると、手持ちで足りるかどうか。

こっそりとジールさんに聞くと、ジールさんは微笑んで大丈夫だと言った。
何が大丈夫なのだろうと首を捻っていると、奥の方から人の良さそうな顔の獣人族が出てきた。


「皆様、ホテル“レイヴン”へようこそお越しくださいました。私はオーナーのコルボです。今日はごゆるりとお寛ぎください」


ウルで泊まった“とり万。”のなで肩亭主が鳩の獣人族なら、この人はカラスの獣人族かな。
動物はそれほど詳しくないから間違っているかもしれないが。
肩口からちらりと漆黒の翼が見えたのでそう判断した。

部屋に案内しながらコルボは嬉しそうに話し出す。


「実は昔冒険者をしておりまして、その時にクロウ様に命を救っていただきました。クロウ様とお連れの方が宿に困っていらっしゃると聞いて、私の方からお泊りにならないかとお願いしたのです」


なるほど、そういうことだったのかと納得する。
こう言っては何だが、あのクロウも人助けなんてするんだな。
ですから、宿代は結構でございますと言って、ホテルの中でも格段といい部屋の前で足を止めた。
これで部屋代がかかるならやばかったかもな。


「クロウ様、皆様をお連れしました」


ノックをして、クロウのくぐもった返事の後にドアを開く。


「うわぁぁぁ!」

「おぉ!」


勇者たちが歓声を上げる。
俺も目を見開いて目の前の光景に見入った。


「すごい!」

「ああ……」


部屋の中はホテルの内装と同じモノクロだが、外壁側の壁が一面外の景色が見えるようになっていて、きらびやかな街が一望出来て、ちょっとした夜景だ。
この部屋に向かう途中にかなり会談を上がったと思ったが、このためだったのか。
まるでそこに壁がないような鮮やかな景色だったが、ちゃんと壁はあって、ガラスでもないのに外の景色が見えることに驚く。


「この壁のみは魔物の鱗でできておりまして、外の景色をお楽しみになれます。それでは、何かあれば何なりとお申し付けください」


そう言ってコルボはそっと部屋を出て行った。
黒と白の部屋の中に動くものがあると思えば、黒色のソファーでくつろいでいるクロウだった。
片手でワインのような飲み物を入れたグラスを回しながら、夜景を見てはしゃいでいる勇者たちを見ている。


「いい部屋だな」

「ああ、私もこんな部屋にタダで泊まれるとは思わなかった。……コルボに裏のつながりはないし、従業員の中にも怪しい者はいない。今夜は安心して過ごすといい」


あんな噂を聞いた後だからか、コルボのこともしっかりと調べていたらしい。
くいっとグラスを仰ぎながらその瞳に初めて俺を映す。


「あの噂のことだが、あんまり気に病むなよ」


クロウの口から出た俺を気遣う言葉に目を見開く。
最初の頃はあれだったが、実は優しいやつだったりするのだろうか。
常々ツンデレだとは思っていたが、最近はデレの方が多い気がする。


「アメリアが狙われているかもしれないのにか?」

「お前は肩の力を抜いていればしっかりと実力を発揮できるタイプだ。下手に気張るよりも普段通りしていろ。それがあいつの安全につながることになる」


再び窓の方に視線を向けるクロウに苦笑して、俺は隣のソファーに腰を下ろした。


「教師みたいなことを言うんだな」

「聞かなかったか?俺は昔弟子をとっていたんだ。……まあ、残らず病院行きになったが」


それはアメリアから聞いた。
なんでも、初代勇者と同じである自分の技を後世に伝えようと思ったが、弟子は全員精神を壊してしまったとか。
アメリアの弟子入りを断るのもそれが理由らしい。


「気になっていたんだが、それってどんな技術なんだ?」


アメリアも、それが何なのか言わなかった。
職業が鍛冶師のクロウが取得しているのだから比較的誰でも取得できるスキルなのだろうとは思うが。
迷宮でクロウが助けに来たときに、俺の体を操っていた『影魔法』やマヒロがアメリアにかけていた魔方陣などが解けていたのも関係あるのだろうか。

クロウは少し考えて、口を開いた。


「……簡単に言うと、攻撃魔法の相殺。正式なスキル名はエクストラスキル『反転』。魔法陣相手であろうと、魔法を見るだけで、反転した魔法を作り出し、相殺する」


俺はへぇと感嘆の声を上げた。
実質、魔法を見るだけで相殺するスキルがあるとは思わなかった。
それはマヒロも警戒するわけだ。
とんだ魔術師殺しだな。


「が、もちろんデメリットはある。このスキルを取得する上で古代語をマスターしなければならない。そして、この古代語は恐ろしく難しいんだ。それこそ、精神を壊す程度には」


古代語というと、確か魔法陣に刻まれている言語のことか。
確かに、エクストラスキルの『言語理解』がなければただの模様に見えていただろう。


「その上、古代語を理解したとしても古代語の単語がまた難解だ。……俺も覚えるのには百年かかった」


その言葉に、ん?と引っかかる。
確か、獣人族の寿命は百年と少しと言ってなかっただろうか。
古代語を覚えて『反転』を取得するのに百年、そして勇者パーティーとして魔王討伐に向かったのが百年前。
どうしても計算が合わない。


「お前、一体何年生きているんだ?」




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