暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第121話 〜噂〜



「それでは、お二人には大会委員長から表彰と景品の授与がされます!!」


俺は控え会場から出てステージ前を陣取った。
控え会場からではアメリアの顔がちゃんと見えない。
キラキラと輝くステージの上では、アメリアが笑顔でこちらに手を振っている。
俺は少し微笑んでそれに応えた。
俺の周囲の男性が自分に振られたと勘違いして歓声を上げる。


「そ、それでは、第256回美男美女コンテスト、美女部門最優秀賞、アメリア王女、ラスティ。あなたがたは第256回美男美女コンテストにおいて、輝かしい成績を収められました。よって、ここに表彰します。大会委員長、ラパン」


スポットライトが一際輝き、賞状を受け取る二人とウサギの獣人族を照らす。
相も変わらず脂汗びっしりの獣人族は少し震える手で二人に賞状を渡した。
名前、ラパンっていうのか。


「えー、優勝の景品ですが、到着が遅れていまして、明日にならお渡しが可能ですが、大丈夫でしょうか?」


その言葉に、アメリアが一も二もなく頷くのが見えた。
その目は未知なる食べ物を求めて輝いている。
ということは、今日はここに泊まることになるのか。
今から取れる宿があるのかな……。
この町にいるのは五百人程度だが、他の町から人がなだれ込んでこないとも限らないし、少なくとも出場者の半数は泊まるだろうから、下手すれば野宿だな。
俺やアメリア、夜は慣れているし、副騎士団長だったジールさん、冒険者だったクロウはともかく、京介たちは大丈夫だろうか。


「僕も大丈夫だよー」


アメリアに続いて、ラティスネイルもニコニコ笑って了承した。
異例の同率一位だったから、景品を準備していても一つ足りなくなったのだろう。
ウサギの獣人族はホッとした顔をする。


「……嫌な顔だな」


そのウサギの顔が、何か意味のあるものに見えてならなかった。
この大陸に来てから、嫌というほど感じている一種の予言めいた予感だ。
変なのに絡まれたり、アメリアが攫われたり、迷宮から魔物があふれたり、魔族と戦って死にかけたり、勇者たちが来たり、コンテストに参加することになったり、魔王の娘と知り合いになったり……。
踏んだり蹴ったりだな。
世界を見渡しても、俺たち以上に厄介ごとに巻き込まれる人はいないんじゃないだろうか。
誰だ、疫病神は。
……俺か。


『それでは、これにてコンテストを閉幕したいと思います!皆様、ご参加ありがとうございました!来年の開催は人族領、レイティス国での開催となります!!』


俺は思わず吹き出す。
レイティス国といえば、俺たちが召喚された国であり、俺が濡れ衣を着せられた国であり、まだクラスメイトの大半が残っている場所である。
人族領の最大国家だし、確かにコンテストなどを大々的に開くにはちょうどいいだろうな。
緑もあり、綺麗な湖もあった気がする。
今思えばとてもきれいな国だ。
正直、あの王と王女がいる限り俺があの国を好きになることはないが。

ふと、目の前に人の気配を感じて顔を上げた。
一度考え事をしてしまうと周りが見えなくなってしまうのが俺の弱点だな。
だが、幸いにも目の前にいたのは、今までどこにいたのかクロウとジールさんだった。


「おい、少し話したいことがある。行くぞ」

「あ、おい」


二人に強引に手を引かれて向かう先には少し路地に入った薄暗いところ。
コンテストのきらびやかな雰囲気とはかけ離れた、じめじめと湿っぽい場所だった。
二人はコンテスト会場から見えない位置に来ると手を離す。


「……何の用だよ、こんな所で」


眉間に皺を寄せて不満の声を上げると、二人は顔を見合わせてから話し出した。


「実は、私たちはどうせ泊まることになるだろうと考えて、一足先に宿を探していたんです」

「そこで、良からぬ噂を耳にしたんでな。お前にも知らせておこうかと思ってな」


礼を言おうとした口を閉ざした。
良からぬ噂とは何だろうか。
少なくとも、表にいた俺の耳に入っていないということは裏の情報なんだろう。
裏の情報とは情報屋や暗殺稼業をしている者たちが売っている情報。
彼らは情報に敏感でなければ日々生きていけない。
なので、信憑性が高いうえにその情報は常に新鮮だ。
俺も本来は彼ら側にいるはずなのだが、どうしてか表側にいる。

一瞬で察した俺に頷いて、クロウは話を進める。


「この情報を得たのは偶然だが、どうやら、毎年この大会の優勝者は行方不明になるらしい。そして、それを表の住人は知らない。だからこそのあの参加者の量だとは思うが、それでも少しおかしいと思わないか?」


少しどころではない。
とてもおかしい。


「裏の住人といえど、表と関わる仕事をしている者が大半だ。なのにどうして噂が広がらない?」


俺が言うと二人は顔をしかめる。


「それと、この私がそのことを知らなかったことがおかしい。いくら隠居しているとはいえ、表も裏も情報には気を配っていた。……ということは、噂は俺が手を付けていない情報を知る、一部の者にしか流れていないということだ。裏にも容易に流れていかないように情報統制されている。そして、俺が手を付けていない情報といえば大方見当がつく」


何かと聞けば、クロウは嫌そうな顔で答えた。


「人身売買関連だ」



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