暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第117話 〜祭り4〜



「……アキラと私では『世界眼』で見るものが違うから、アキラが何を見て、何を気にしているのかは分からない。でも、あの子みたいに実力を隠す相手にも同じ対応をするアキラは危険」


確かにそうだ。
本当の実力を知った今なら思うが、もしラティスネイルが暴れても、俺では止められないかもしれない。
この場にはクロウがいるし、何とかなるかもしれないが、クロウがいないとき、果たして俺はあの女を止められるだろうか。


「……引き受けなかったら良かったな」


ボソリと呟くと、アメリアは首を振る。


「アキラの対応は正しかった。あの場で収めなかったら本当に暴れていたかもしれない。でも、私が言いたいのは、相手の力量を正確に知れる眼があるのだから、活用すべきということ」


静かに揺らめくアメリアの赤い瞳に、慈愛の光が灯る。
まるで母親のようだ。


「分かった。次からは初めてあった人のステータスをちゃんと確認するよ」


素直にそう言うと、アメリアは頷いてヨシヨシと俺の頭を撫でた。
身長差故にプルプルと足を伸ばして背伸びをしているところがとても可愛い。


『……コホンっ……主殿、アメリア嬢、少しいいだろうか?』


二人だけの空気になってきたところで、咳払いをしながら夜が入ってきた。
助走なしに俺の肩に飛び乗る。
そういえば、ラティスネイルについて後で説明すると言っていたな。


「で?あのフードの魔族、何者なんだ?夜が敬語を使う相手なんて限られていると思うが」


夜は頷いて、ちらりとラティスネイルの方を見ながら口を開いた。


『彼女、ラティスネイル様は……端的に言うと、魔王様の娘だ』


ふーん……と頷きかけて、止まった。
今なんと言った??
魔王の娘?
あれが??


「……ステータス的には納得がいくけれど、全くそう見えない」


アメリアの素直な感想に同意した。
魔力がほぼ感じられないせいか、それとも天真爛漫を絵に書いたような言動のせいか、魔王の娘だとは思えない。
……娘がいたことから意外なんだが。


『まぁ、ラティスネイル様は魔王様と反りが合わず、よく喧嘩しておられた。今回も喧嘩して家出したのだろう。それに、……ラティスネイル様はおおよそ魔王の娘として相応しくない性格でな』


おいおい分かるだろうとはっきりとしたことは言わなかったが、とりあえずラティスネイルが思ったより魔族っぽくないのは分かった。
というか、大陸を越えるのは家出の範囲なのだろうか。
魔族ではそこのレベルも違うのか?


『とりあえず、ラティスネイル様の前で嘘をついたり、差別的な用語を言わなかったら大丈夫だ。その二つを彼女は特に嫌っている』


そういえば、さっきも差別はダメだとか喚いていたな。
……お父さんが差別はダメだと言っていたとか。
お父さんということは魔王が言っていたということか?
……この数分で魔王に対する印象がガラリと変わりそうなのだが。
イメージと全然違う。

若干呆然としながら、俺は頷いた。


「了解した。京介たちにも言っておく」

『頼んだぞ、主殿。アメリア嬢には俺がついておく。ラティスネイル様の機嫌を損ねないようにな』


そう言って夜は俺の肩からアメリアの肩に飛び移った。
ラティスネイルから逃げたな。




気がつくと、コンテストは始まっていた。
アメリアもラティスネイルも勇者パーティーの女子もエントリーしたのが最後の方だったため、呼ばれるのも最後の方らしい。
俺は隣できゃっきゃ騒ぐラティスネイルの世話をしながらぼんやりとステージの上を見上げていた。

獣人族や人族ばかりだが、まあまあそこそこ美人が揃っている。
毎日アメリアの美貌を目にしているおかげか、それ以上の感想は出てこないが、競うだけの顔は持っているようだ。
まあ、アメリアがぶっちぎりで美しいが。
……いや、まだ一人顔を見ていない人がいた。


「……そういえば、お前フード取らないのか?」


ほとんど同じ位置にある目線に尋ねると、ラティスネイルはんーと首をひねって、紫色の瞳を細めた。


「ほら、せっかくの大舞台なんだから、みんなをあっと言わせたいんだよ!最初から顔を晒していたら僕が優勝しちゃうってみんなにバレるでしょ?」


つまり、自分の顔に自信があるらしい。
アメリアの美貌を見てなおそんなことを言えるということは、本当に勝てるくらいの美貌をラティスネイルも持っているのか、それともただの自意識過剰か。
こいつなら後者も有り得そうだから怖い。
ただ、前者であるならば、ぜひ見てみたいものだ。


「なになに?おニーサン僕に興味出てきた??あのエルフの王女様よりも僕の方を好きになる?」


ニマニマと笑うラティスネイルを、調子に乗るなとコツンと小突く。
例えアメリアより美しい顔がこの世にあったとしても、俺は顔だけでアメリアを好きになったのではないのだから、ラティスネイルを好きになることは万が一にもない。


「ちぇ、君たちの愛は眩しいなぁ。よく今までヨル君は我慢できたよ」


わざとらしく舌打ちをするラティスネイルに、俺は苦笑した。


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