暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第116話 〜祭り3〜



そう言った夜に俺は目を見開いた。
夜は魔王の右腕で、それなりの地位にはいただろう。
その夜が敬語の上、様付けで呼ぶ相手。
どうやらただの魔族ではないらしいな。


「うんうん、君ってブラックキャット君でしょー?こんな所で何やってるのさ」


ラティスネイルの言葉に、夜は左右に視線を揺らす。


『ああ、えっと……その……』


そんな夜の反応を見た紫色の瞳がキュッと細くなり、イタズラを思いついた子供のような顔をした。


「へぇぇぇ〜、あのブラックキャットが素直に殺されないとは思ったけど、まさか人族と契約を結ぶなんてねぇ……父さんはこのこと知ってんの?」


父さん?
俺が首を傾げるのと同時に、夜は苦い顔で頷いた。
ラティスネイルはちらりと俺の顔を見たあと、夜の頭をグリグリと撫でる。


「そっか〜!なら僕は何も言わないよ。“はじめまして”、君の名前は?」


思いっきり空気状態の俺だが、夜がほっとしたのは分かった。
その様子がサラン団長に振り回されていたジールさんに重なる。


『はじめまして、俺は夜。主殿の従魔です』

「“ヨル”ね、いい名前じゃないか」

『恐縮です』


俺の目の前で改めてはじめましてをした二人は、今思い出したかのように同時に俺を見上げた。


「……さ、君もせっかくのお祭りなんだ、楽しも?」


にかっと笑ったラティスネイルに手を掴まれて引っ張られながら、夜に説明を求める念話を送る。
すると、夜は少しだけ顔を顰めてちらりと俺を見上げた。


『後でしっかり説明する。アメリア嬢も含めてな』






アメリアは頬をふくらませたまま、先程から微動だにしない。
そんなアメリアに俺は苦笑した。


「機嫌直せよ、アメリア」


そう言うと、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
どうやら俺に引っ付いているラティスネイルが気に入らないらしい。


「別に機嫌悪くない。アキラがデレデレしてるのが気に入らないだけ。あの子単体は好印象」

「デレデレなんかするはずがないだろ?嫌な誤解だ。……ラティスネイルが気に入ったのか?」


アメリアは首を傾げて頷いた。


「あの子は魔族でも嫌な感じがしない。……それに、アキラはあの子のステータス見た?」


俺は、その手があったかと手を鳴らす。
『世界眼』をあまり使わないと誓ったからか、それともステータス自体しょっちゅう確認しないからか、はたまた戦闘中ではないため気が抜けていたのか、『世界眼』という便利なエクストラスキルがあることすら忘れていた。
俺は即座に『世界眼』を起動させてラスティネイルのステータスを見る。


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・ラティスネイル
・種族/魔族
・職業/水・炎魔術師Lv57
・生命力33000/33000
・攻撃力38500
・防御力33000
・魔力44000/44000

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スキル
・水魔法Lv6
・炎魔法Lv6
・魅了Lv8

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エクストラスキル
・魔物操作
・魔力隠蔽

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「………」


見えたステータスに、思わず目を擦りたくなった。
アウルム・トレースのステータスを見たときは、圧倒的な魔力と力を感じた後だったため、その数値に驚くことはあってもどこか納得していた。
だが、ラティスネイルの場合、全く思わぬ所からの攻撃というか、やはり人は見た目や第一印象で決めつけてはならないのだと実感した。

まさか、他のコンテスト出場者にニコニコと笑って手を振っている女が、強者の気配を一切感じさせないほのぼのとした女が、俺が苦戦したアウルム・トレースよりもレベルは低いものの、初期ステータスは確実に上だとは思うまい。
殺気のさの字も感じないし、エクストラスキルの『魔力隠蔽』のお陰か、魔族特有のあの暴風雨のような魔力は感じないし、アメリアに言われなければ気づかないところだった。


「やっぱりアキラも『世界眼』を使う癖をつけるべき」


“めっ”と子供を叱るような顔で俺の顔をのぞき込むアメリアから視線を逸らす。


「でもなぁ……」


確かに『世界眼』は便利だ。
相手のステータスを盗み見ることが出来るのは、この世界では特に有利だろう。

だが、と俺は顔を顰める。
初めて『世界眼』を起動した日のことを忘れることが出来ない。
全てを鮮明に思い出せるわけではないが、それでもたまに夢で見る。

地面に伏してピクリとも動かない京介や勇者たちに、その真ん中で一人立っている俺。
あれが何だったのか、知るのが怖い。
本当に未来のことなのか、それとも可能性の一つなのか。
本気で『世界眼』を使えば恐らくすぐにでも分かるだろう。
だが、もし俺が京介たちを害してしまった結果だったら、俺は耐えられないだろう。



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