暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第111話 〜興奮〜

「は!?祭り??」


思わず素っ頓狂な声を上げてしまったのは致し方ないと思う。
驚きすぎて、顔を洗おうと水をためた桶がひっくり返ってしまった。

昨日の夜、夜中の不思議なテンションというやつのせいで、アメリアと指輪を刻みあっていたとき、勇者たちが色々と話し合っていたのは知っていた。
俺とアメリアが部屋に帰ったあとも勇者たちにあてがわれた部屋は煌々と明かりがついていたし、アメリアを説得するための対策を立てていると思ったのだ。
だがまさか、朝イチで祭りに誘ってくるとは思わなかった。

誘ってきた京介は俺が落とした桶を拾って水を入れてくれた。


「そうだ。ウルクで祭りがあるらしい。行かないか?」


京介は、相変わらずの俺やアメリア以上のポーカーフェイスで首をかしげた。
俺は桶を受け取りながら顔をしかめる。


「……ウルクか」


ウルクには魔族を呼んだと思わしき男がいる。
アメリアを攫おうとした魔族をだ。
もちろん、懲らしめるでは足らないと思う。
少なくとも、生まれてきたことを後悔させるくらいはしないと俺の気が収まらない。

桶に顔を近づけて水を顔にかけた。
半分眠ったような状態の脳が完全に目を覚ました気がする。


「お前も夜も動けるけどまだ戦闘はできないんだろ?訓練も大事だが、たまには息を抜いたらどうだ?」


京介の提案に唸った。
この世界の祭りがどのようなものかは知らないが、楽しそうであるのは間違いない。
アメリアもたまには楽しみたいだろうし、俺の思っている祭りと同じだとすると、食べ物の屋台も出るだろう。
食べ物には目がないアメリアのことだから、きっと行きたいと言うに違いない。
問題はどういう意図で京介が祭りに誘ってきたかだ。


「……何を企んでいる?」


服の袖で顔を拭きながら、京介を見やる。

アメリアの食べ物好きはまだ知らないはずだ。
ということは、胃袋を掴みに来たわけではない。
その祭りで何かがあるのか?

訝しげな顔の俺に京介は苦笑した。


「死線を潜りすぎたせいで疑心暗鬼になってるんじゃないか?考えすぎだ。うちの女子たちが行きたがってるからアメリア王女もどうかって話だよ。説得の方はぼちぼち考える」


確かに、日本にいた頃より疑り深くはなっていると思う。
が、この世界は多分そのくらいが丁度いい。
日本と違って、いつ死ぬか分からないのだから。


「……一応行くと言っておく。アメリアと夜にも聞いてからだけど、多分行くと言うだろうし」


ついでにこの世界の祭りについてクロウに聞いてみるか。

俺はスッキリとした頭で今日の予定を組み立て始めた。
後ろで京介が意味ありげに微笑んだのには気付かずに。




「『祭り!?』」


俺が京介たちが祭りに誘ってきたと言うと、アメリアと夜も俺と同じ反応をした。
ただ、夜はげんなりと、アメリアは歓喜に満ちた顔でだが。


『主殿、もしかしてウルクであるという美女コンテストのことか?』

「さあ?ただ、ウルクであるとは言っていたが。……美女コンテストなんて、この世界でもあるのか?」


顔をしかめる夜に首を傾げる。
一方アメリアはキラキラとした顔で俺の手を取った。


「行くの!?行きたい!」


やけに食いついてくるアメリアに俺は体を仰け反らせる。


「お、おう。アメリアが行きたいと言うだろうと思って、一応行くと返事はしたが……。どんな祭りか知っているのか?」

「知らない!」


キリッとした顔で言い放つアメリアにガクッと力が抜ける。


「知らないのにやけに嬉しそうだな」

「だってお祭りでしょう?美味しい食べ物がいっぱい!」


ああ、やはりアメリアは祭りよりも食い気か。
予想した通りで、むしろわかりやすくて可愛いです。

俺は二本足で立ち上がって頭を抱える黒猫を見下ろした。


『主殿、アメリア嬢、あれは祭りという名の乱闘だぞ?確かに屋台もたくさん出ていたが』


見たことがあるかのような口ぶりだ。


「行ったことがあるのか?」

『ああ。しかも結構最近に』


そう言って夜は美女コンテストとやらの説明を始める。


曰く、人族領で始まり、いつの間にか獣人族領でも開催されている祭りらしい。
コンテストは男子と女子の部に分かれ、各々が自分の出たい方に出る。
つまり、男が女装をして女子の部に出てもいいし、その逆も然り。
基本的には人族と獣人族だけだが、数年前にエルフ族から飛び入りで参加して優勝した者がいたとか。
で、優勝者には破格の景品があるらしい。
毎年変わるが、昨年は人族一高級な旅館のフリーパスだった。
今年はウルクだから、食べ物の景品になる可能性が高いとか。
……なんて言っていたらアメリアの目の色が変わった。


「出る」

『……主殿』


グッと拳を握るアメリアに、夜が止めてくれという目で見てきたが、俺は首を横に振った。
こうなったアメリアを止めるのは難しい。
というか不可能だ。


「で、乱闘とはどういうことだ?」


もし危ないのなら、アメリアに嫌われても行かない。


『……まあ、男という生き物はどの世界も醜いものでだな……。毎年、優勝した女が自分の思っていた人と違った者が暴れるのだ』


ああ、と頷く。
容易に想像できた。


「アキラ、優勝してくる」


アメリアは話を聞いていなかったのか、コンテストに出る気満々だ。
俺と夜は顔を見合わせてやれやれと首を振った。


「アメリアレベルの女が他にいると思えないし、優勝は間違いなしじゃないか?」

『……そうだな』



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コメント

  • 真砂土

    一筋な感じてよし

    0
  • ノベルバユーザー191032

    毎回、更新楽しみにしてます

    2
  • チーレム絶対許さないマン

    どこまで行ってもチーレム無しいいゾーこれ

    3
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