暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第108話 〜勇者の考え〜 朝比奈京介目線

クロウさんが貸してくれた、一番大きな部屋で俺たちは思い思いの場所でくつろぐ。
俺は出入口近くの壁に寄りかかって腕を組んだ。

アメリア王女から言われた通り、全員の意見を統一しようと話し合おうとしたはいいが、誰も話し出さない。
パーティーメンバーだけで動いていたとき、予定などを話し合うときは佐藤が仕切っていた。
が、あの部屋を出てから佐藤は一言も話さない。
いつもは騒ぎ出す和木と上野も黙ったままだ。
七瀬と津田はオロオロと落ち着きがなく、逆に細山はいつもの通り落ち着いている。

俺は頭の中を整理しようと目を閉じた。

まず、俺たちと晶の最終目的は日本に帰ること。
それは同じだろう。
恐らく晶は、母の紫さんや妹のために早く帰りたいはずだ。

ならば、違うことは何だろうか。
きっとその過程だろう。
俺は晶のように小説など読まないが、晶から聞いた話では、こういった異世界ものではラスボスを倒せば帰る手段が見つかることが多いらしい。
……いや、待てよ?

俺ははっと目を開けた。
真正面にいた津田がビクリと体を震わせる。
開いた目を難しい顔をしている佐藤に向けた。


「佐藤、お前は魔王を倒すつもりがあるか?」


突然の俺の質問に全員が俺を見て、そして佐藤を見た。
佐藤は女子受けの良い綺麗な顔を顰めて首を振った。

レイティス国にいた頃、訓練をつけてくれていた騎士に口を酸っぱくして言われた。
魔王は佐藤が持っている、勇者だけが持てる聖剣とエクストラスキル聖剣術がないと絶対に倒すことが出来ない。
逆に、それさえ揃っていれば倒すことが出来るのだろう。
だから、何がなんでも佐藤を守り、魔王の元へ連れていくことが俺たちの仕事だと。
だから、魔王を倒すには勇者である佐藤の意志が必要不可欠なのだ。


「皆にはすまないが、俺は今魔王を倒す必要性が一切感じられない」


現時点では魔王は姿を現しておらず、魔族を見たと言っているのは晶たちだけ。
今回、ウルの迷宮から魔物が溢れたのはただの事故であったという可能性も捨てきれない。

俺のスキル『勘』はそれを否定しているが、レベルが上がるにつれて勘が鋭くなっていくだけで、そのスキルで真実が見えるわけではない。
つまり、完全に信用はできない。


「じ、じゃあ、どうやって日本に帰るつもりだよ!」


和木が目を見開いて叫ぶ。
当然の反応だろう。
今まで、魔王を倒せば日本に帰ることが出来ると信じて戦って来たのだから。


「必要性が感じられんってどういうことなん?魔王を倒してこの世界の人たち救うって、司くんがそう言ったんやん」


確かに、佐藤はそう言った。
だが、それはまだレイティス国の王と王女を信じていたとき。
魔王がこの世界の住人を苦しめていたと聞き、そして自分たちにそれを救うことが出来る力があると言われたから。


「分からない。この世界の人たちが魔王に苦しめられていると言ったのはレイティス王で、その王は王女様を使って俺たちに呪いをかけていた。それに、街の人たちを見ても、苦しい生活を強いられているという印象は受けなかった」


上野と和木は今思い出したかのように目を見開いた。
街は活気に満ち、人が大勢いた。
魔族領に一番近い大和でさえ魔物の侵攻にビクビクと怯えるような様子はなかった。
七瀬と津田は城に残してきた友人たちを心配しているのか、目を伏せる。


「では、魔族に傷つけられた織田くんはどう思うの?」


細山が挙手して質問する。
俺は目を細めた。
時々、細山は晶を信じているような言動をとることがある。
それがクラスメイトとして信じているのか、直感的に晶がどういう人間なのか悟ったのかは知らないが、どういうつもりだろう。
細山は分からないことが多い。
和木や上野のようにわかりやすい性格をしてくれていれば助かるのだが。


「言っておくが、晶は俺より強い。恐らく召喚されたときからね。俺たちが束になっても晶には勝てないし、晶たち重傷を負うほど強い魔族は俺たちが死に物狂いで戦っても勝てない。そして、その魔族の頂点である魔王には一生かけても勝てないだろう。つまり、俺たちの現時点での実力は普通の人よりも僅かに強いレベルだよ」


自信家の佐藤がこんな弱気な言葉を吐くのは初めて見た。
七瀬も信じられないものを見たような目で佐藤を見ていた。


「俺は日本に帰りたいし、晶もそうだろうけど、晶は魔王を倒すことを考えていない。きっと勝てないとわかっているからじゃないかな?」


これがゲームの中や小説の中ならば、一度玉砕覚悟でつっこんで身をもって強さを知ることが出来るのだろうが、ここは現実だ。
俺たちの身は一つしかないし、俺たちの人生も一回切り。


「俺たち召喚された人間の中で日本に帰りたい思いが一番強いのも晶だし、答えに近いのも恐らく晶だ。だから俺は晶と行動を共にすべきだと考えた」



「暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • シャドウ

    キターーーーーーーーーーーーーーーー
    僕この作品ちょー好きなので頑張って下さい

    4
  • ノベルバユーザー131965

    お疲れ様です!

    3
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