暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第85話 〜リア・ラグーン〜
『強化嗅覚』?
俺は首を傾げて夜を見た。
『簡単に言うと、鼻がいいということだ。他の五感にもそれぞれ強化があって、それらのスキルは獣人族に出現する可能性が最も多い』
夜の説明になるほどと頷く。
とりあえず、リアの話が本当かどうか確かめるために俺は久しぶりに『世界眼』を使った。
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・リア・ラグーン
・種族/獣人
・職業/守り手Lv.52
・生命力2500/2500
・攻撃力150
・防御力5000
・魔力2000
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スキル
・強化嗅覚Lv.7
・王族の気品Lv.2
・短刀技Lv.2
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エクストラスキル
・神の結界
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たしかにスキル欄に『強化嗅覚』があり、しかもレベル7とスキルレベルもかなり高い。
これなら匂いを辿ってアメリアにたどり着くことも出来るかもしれない。
それでも何らかのアメリアの所持品が必要になるはずだが。
それと、本当に戦う力は持っていないようだ。
攻撃力が、レベル1だったときの非戦闘系職業のクラスメイトくらいだ。
獣人族はスキルを使わなくても元々の身体能力が高い部族だから、いくらなんでもこれは低すぎるんじゃないか?
まあそれ以上に防御力が凄いからいいのだろうか。
それと、それ以上に気になったことがあった。
「お前、もしかして養子かなんかで王族に入ったのか?」
まさかバレると思っていなかったのか、リアの肩が震えた。
「な……なぜそれを?」
俺はリアの怯えたような目を見て、何もかもが面倒くさくなり、夜の背に再び飛び乗る。
「……行く道で話してやる。早く乗れ」
クイッと後ろを指すと、リアは呆けた顔をして俺を見た。
夜がぐるりと首を回して俺を見る。
『良いのか?主殿。嘘ではないのは分かったが、あまり知らぬ者を信用して』
「誰が信用したなんて言った?俺は事情は聞いてやるしこちらの話もしてやるから乗れと言ったんだ。時間が惜しい。こんな所で足止めを食らっている訳にはいかないんでね。それに、いくら王女様とはいえこんな所に来るくらいだから覚悟はできているんだろ?」
顔も見ずにそう言うと、リアはふらふらとした足取りで立ち上がり、夜の背によじ登った。
「行きます。……どうしても、これだけはアメリア様にお伝えしなければならないのです」
「よし。……進め、夜」
夜はまだ言い足りないといった表情だったが、俺は何も言わせずに命令した。
体の下で夜の毛がザワザワと動き、発光した。
夜の『変身』だ。
光がおさまると、上に乗っているために全身は見れないが、黒い毛のチーターのような魔物になっていた。
足はすらりと細長く、早く走ることに特化したような体つきだ。
『しっかり掴まっていろ。振り落とされても主殿以外は拾わんぞ』
リアに向けてそう言ったあと、筋肉に力が入ったのが分かった。
「っっ!?」
一歩で景色が変わった。
二歩で魔物が目の前に現れた。
三歩でその魔物も遥か後ろに過ぎ去った。
後ろでリアが慌てて俺の服にしがみつくのが分かった。
本音を言うと、アメリア以外の女子にそんなことをされるのは迷惑以外の何物でもないが、ここはぐっと我慢しよう。
アメリアよりは大きいが、俺はそこにあまり興味がない系男子だから問題ない。
どこがとは言わないが。
「さて、まずはお前の話だ。舌を噛まないように気をつけて喋れよ」
猛スピードの中、くるりとと体を反転させてリアと向き合う。
リアは掴んでいた俺の服を離さざるを得ず、慌てて夜の毛にしがみついた。
「わ、私はた、たしかに王族ではありませんでした」
俺がそのことに気づいたのは、スキルの順番だった。
普通、スキルは取得した順番に並んでいる。
俺もアメリアも、夜だってそうだった。
ということは獣人族だけ例外ということはないだろう。
その中で、アメリアとリアの違いは、スキル『王族の気品』が一番にあるか二番目にあるかだ。
アメリアにきいたが、王族は基本的に生まれる前から王族で、『王族の気品』がスキル欄の一番最初にきているのだそうだ。
昔は世界眼で色々な人のステータスを見ていたらしく、そう教えてくれた。
つまり、二番目にあるリアは後天的にそのスキルを取得したということ。
スキルレベルだとか、判断する材料は他にもあるが、俺の考えはこんなもんだ。
そして、恐らくリアが王族に招き入れられたのは職業とエクストラスキルからだろう。
「私は少し裕福な、どこにでもいるような家庭の娘でした」
早いスピードの世界に慣れたのか、リアは段々と滑らかに話し出した。
それは、俺も予想していなかった話だった。
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