暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが

赤井まつり

第80話 〜予想〜



『それは本当か!?』


夜が噛みつかんばかりにクロウに飛びかかった。
子猫の姿だからそこまで迫力はないが、もし巨大化していたらクロウはこれ程華麗に避けることは出来なかっただろう。


「私に二度も同じことを言わせるつもりか?本当に無事生きて帰ったらだぞ」


こいつ、ツンデレか。
見てやることもないんだからねっ!って感じか?

とにかく、安心した。
クロウは来るつもりがないようだが、それでも力を貸してくれる。


「クロウ、ついでに頼まれてくれないか?……一体どこのどいつが魔族を手引きしたのか、調べてくれ」


安心からか力が抜け出した体を叱咤してクロウに言う。
夜を頭に乗せたクロウはぶすっとした顔でこちらを見た。
いや、こいつの不機嫌そうな顔はいつも装備しているものだったか。


「言われずとも調べる。魔族がやって来たことはまだ一般市民には伏せられているが、王から知らせが来るのも時間の問題。こいつだけでなく何人もの冒険者が魔族の姿を見ているのだからな。そうなると、真っ先に問題視されるのはどこから侵入したかだ」


俺は頷いた。
いくら港町であっても、そう易々と侵入できるようなぬるい警備ではない。
むしろ、港町だからこそ警備が厳しく、冒険者ギルドまであるのだから。
もちろん、冒険者ギルドがあるのは迷宮があるからだが、手練の冒険者が増えれば増えるほど、それだけ実力者が増えてなかなか入りにくくなるはずである。

魔族と人族が外見上ほとんど変わりないとはいえ、魔族の禍々しい魔力は魔法の知識がないものでも感じ取れる。
もっとも、この世界に、しかも喧嘩っ早い種族で有名な獣人族には、魔法の知識がからっきしな人など一人もいないのだが。


「調べるなら、ギルドマスターのリンガとその弟セナをまず調べろ」


夜とクロウが揃って目を見開いた。


『主殿、それは……』
「リンガ、あいつはギルド前で冒険者に声をかけるとき、『俺たちの街を、魔族共に汚させるな』と言った。他の冒険者たちは開戦前でピリピリしていたから気づかなかったと思うが、そのときはまだ魔族のまの字も出てきてなかったんだ」


そのとき落ち着いているように見えたセナもどこか怪しい。
というか、落ち着いて考えてみても、普通黄ランクと赤ランクの冒険者を最前線へやるだろうか。
獣人族は実力者が多く、あの場には銀ランクの冒険者のパーティーもいだのだ。
その時ですでに対応が遅れていて、市街地に結構な量の魔物が飛び出していた。

俺なら、銀ランクなどの高ランク冒険者たちに、赤や黄色が倒せないような魔物を各個撃破してもらい、ほかの冒険者にその他の魔物を担当してもらうだろう。
あの段階ですでに迷宮の門は壊されていたのだから、迷宮の入口を固めても魔物は出てくる。
ならば出るだけ出させてあとは避難の遅れている地域に冒険者をやって殲滅した方がよっぽど効率的だ。

リンガの作戦では、どうしても避難の遅れた非戦闘員の安全は約束出来ない。
……そうなれば、一般市民の中にいた戦えるやつが出てきてもおかしくない。


「……まさかわざと?」
『主殿?』


突然黙ったかと思うと、そう呟いて目を見開く俺に、夜が心配そうに声をかけてきた。


「……リンガが黒幕の可能性が高くなった。冒険者の配置は全てギルマスのあいつがやっていたんだ。だから、クロウの家の近くの村の避難が遅れていても、冒険者を派遣しないことだって出来た。後々追求されても、指揮系統が混乱していただの、言い訳はいくらでも出来る」


俺の言葉の真意を分かりかねて夜は眉根を寄せた。
対してクロウは苦虫を何匹も噛み潰したかのような顔をしている。


『どういうことだ?』
「……ギルドマスターであるリンガなら、アメリアが避難できていない非戦闘員を助けると見越して、戦いに参加するように仕向けることも可能だってことだ」


他にも出来るやつはいるにはいる。
もちろん、伝令役として各地を駆けずり回っていた奴である。
だが、そいつがするにはリスクが高すぎる。
言い訳が出来ないし、若しかすると自分の身も危険に晒すかもしれない。


「………そういう事だったか。では私はその裏をとってこよう。お前はひとまず休め」


俺は頷いてベッドに倒れ込んだ。
そろそろ限界だったのだ。

影魔法の魔力消費量がとてつもないことに気づいてからは、あまり魔力を消費しないように使っていたからこんなことは今までなかった。
つまり、俺は枯渇するまで魔力を消費したのは今回が初めてだ。
魔力の枯渇がここまで辛いものだとは思わなかった。
次からは気をつけよう。

目を閉じると、すぐに体が睡眠の体制に入るのが分かった。
夜とクロウが何かを話していたが、今の俺に理解できるわけもなく、意識はどんどん闇に沈んでいった。


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コメント

  • 冬ニャンコ

    まだ寝るんだ...

    3
  • 湯たんぽ

    3日間寝てたんじゃないの!?

    7
  • マチョ崎

    試験頑張ってください!

    8
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