TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―
演劇クラブへようこそ!
「――それでは演劇クラブを始めます」
今日はクラブ活動が開始する日で私、諸弓千佳たちは演劇クラブに宛がわれた教室である六年生の教室へとやって来ています。
私と祐里香ちゃん以外にも二十数人の四年生が演劇クラブに入るみたいなのですが、机だけを後ろ側に下げて、且つ先輩方が違う教室で待機しているとはいえ教室は人でいっぱいです。
いや、実際は結構スペースがあるんだけど、私の周りだけ女の子たちの肩が触れ合うくらいに押しくらまんじゅうしてるのよ。
隣に座っている祐里香ちゃんは隙間を空けて座ってくれているので、彼女が唯一の良心なのかもしれません……。
「皆さんにはまず役割を決めていただきます。演劇はステージに立つ人だけが重要なのではありませんからね」
「なるほど」
沢山の人が参加するクラブでは、全員がステージに立てる訳ではないみたいです。
まぁ四年生だけでも二十人以上いるわけだし、仕方ないよね。
背景の絵を描いたり、剣とか衣装を作る美術の係や音声の係などに役割を分けて演劇を作り上げる、とっても本格的なクラブみたいです。
「って小学生がやるようなクラブじゃないよね!?」
「あら、意外と本格的なのね」
「祐里香ちゃんが順応してる!?」
「……もうこの学校の異常さには慣れたわよ。千佳のお蔭でね」
すっごく呆れられているんですけど……。
というか私が悪いんじゃないよっ! ファンクラブが悪いんだから!
「それでは演技をやりたい方はいますか?」
役割分けがあるからと言って、小学生にそんなことを聞けば皆が揃って手を上げるでしょう。
演劇クラブといえばやっぱりステージに立つ人が目立つし、小学生くらいの年頃なら自分のやりたいことを第一にすると思うし。
「――あれ?」
しかしそこにあったのは、誰ひとり動かない静まった教室だった。
というか皆が皆私を見詰めている。
そして隣に座っている祐里香ちゃんが私の腕を取って。
「私たちは演者をやりたいです」
私の意思はッ!?
「私も!」
「私もやりたいですぅ!」
「はいはーい!」
私と祐里香ちゃんが手を上げると、それに呼応するように皆が手を上げ始めました。
うんうん。これこそ小学生の元気な姿だよ! でも人の顔色を窺うというか、私を必要以上に持ち上げるのは小学生らしくないんじゃないかなっ!?
「どの口が言ってるのかしら」
「心の声を読まないでよ祐里香ちゃん!」
それから先生方による各役割はこんなに楽しいんだよという説明が行われ、最終的に演者として残ったのは私たちを含めた八人となりました。
それぞれの役割ごとに分けた教室に行くことになりましたが、私たち演者組は同じ教室だそうで。
皆が名残惜しそうに移動している間、暇していた祐里香ちゃんが話し掛けてきました。
「千佳。そういえば貴女って演技したことあるの?」
「うーん、この前メグちゃんと花ちゃん……あ、妹と隣の家に住んでる幼馴染なんだけど、二人と一緒に台本を読んだりしたよ」
「へぇ。意外とやる気満々じゃない」
「まぁ、やるからには全力で、だよ」
そう言うと祐里香ちゃんはニヤッと笑って腕を組み、足を組んで私を見詰めました。
おおっ、様になってるよ祐里香ちゃん! でもカッコいいよりも可愛いの方が勝ってるよ!
頑張って大人びたポーズをしてるみたいで可愛い!
「なら相手に取って不足はないわね。いいわ、千佳。貴女を私のライバルだって認めてあげる」
「いや、別にいいです」
「なんでよ!?」
いや、だってねぇ?
「人気の子役アイドルにライバル宣言されても、ねぇ?」
「いや、だったら誇りなさいよ! 嬉しいでしょ!」
「嫌だよ! それで芸能界デビューとかさせられたりしたら嫌だからね!」
不服そうな祐里香ちゃんは立ち上がり、黒板の前あたりまで歩いて振り返りました。
そして腰に手を当て、人差し指を立ててこちらに腕を伸ばし。
「――勝負よ千佳ッ! どちらが主役の座に相応しいか、どちらがこの学校のアイドルに相応しいか、勝負よ!」
それは宣戦布告。この前クラブ説明の時に祐里香ちゃんから言われた言葉と同じようなものが飛び出しました。
「別に主役じゃなくてもいいんだけど? それに私は学校のアイドルじゃないよ!」
「実質アイドルじゃない!」
その言葉に頷く生徒と先生たち。
……い、いやまぁ。完全に反論は出来ない、かなぁ?
「で、でも私は歌って踊ったりしてないからね!? ちょっとファンクラブがあるくらいの普通の女の子だから!」
「ファンクラブがある子は普通の女の子とは言わないわ!」
再び頷く生徒と先生たち。
いいから他の教室へと移動してた子は移動しなさいな。
「で、でも」
「前の時に勝負を受けると言ったわよね?」
「いや、あれは押しに押されて頷いただけと言うか」
「問答無用! 勝負は次の劇の主役オーディションよ! 手を洗って待ってなさい!」
「……えっと、首を洗って、かな?」
「――っ!!」
言い間違えを訂正すると、祐里香ちゃんは顔を真っ赤にしてそっぽを向きました。
なんかごめん。
「……はぁ、分かったよ。でもやるからには私も全力でいくからね?」
「え、ええ! 私も本気でやらせてもらうわ!」
こうして私と祐里香ちゃんの勝負が始まりました。
で、演劇って何をするんだろ?
「――次やる演目は『ロミオとジュリエット』です!」
ベタなやつだ!!
今日はクラブ活動が開始する日で私、諸弓千佳たちは演劇クラブに宛がわれた教室である六年生の教室へとやって来ています。
私と祐里香ちゃん以外にも二十数人の四年生が演劇クラブに入るみたいなのですが、机だけを後ろ側に下げて、且つ先輩方が違う教室で待機しているとはいえ教室は人でいっぱいです。
いや、実際は結構スペースがあるんだけど、私の周りだけ女の子たちの肩が触れ合うくらいに押しくらまんじゅうしてるのよ。
隣に座っている祐里香ちゃんは隙間を空けて座ってくれているので、彼女が唯一の良心なのかもしれません……。
「皆さんにはまず役割を決めていただきます。演劇はステージに立つ人だけが重要なのではありませんからね」
「なるほど」
沢山の人が参加するクラブでは、全員がステージに立てる訳ではないみたいです。
まぁ四年生だけでも二十人以上いるわけだし、仕方ないよね。
背景の絵を描いたり、剣とか衣装を作る美術の係や音声の係などに役割を分けて演劇を作り上げる、とっても本格的なクラブみたいです。
「って小学生がやるようなクラブじゃないよね!?」
「あら、意外と本格的なのね」
「祐里香ちゃんが順応してる!?」
「……もうこの学校の異常さには慣れたわよ。千佳のお蔭でね」
すっごく呆れられているんですけど……。
というか私が悪いんじゃないよっ! ファンクラブが悪いんだから!
「それでは演技をやりたい方はいますか?」
役割分けがあるからと言って、小学生にそんなことを聞けば皆が揃って手を上げるでしょう。
演劇クラブといえばやっぱりステージに立つ人が目立つし、小学生くらいの年頃なら自分のやりたいことを第一にすると思うし。
「――あれ?」
しかしそこにあったのは、誰ひとり動かない静まった教室だった。
というか皆が皆私を見詰めている。
そして隣に座っている祐里香ちゃんが私の腕を取って。
「私たちは演者をやりたいです」
私の意思はッ!?
「私も!」
「私もやりたいですぅ!」
「はいはーい!」
私と祐里香ちゃんが手を上げると、それに呼応するように皆が手を上げ始めました。
うんうん。これこそ小学生の元気な姿だよ! でも人の顔色を窺うというか、私を必要以上に持ち上げるのは小学生らしくないんじゃないかなっ!?
「どの口が言ってるのかしら」
「心の声を読まないでよ祐里香ちゃん!」
それから先生方による各役割はこんなに楽しいんだよという説明が行われ、最終的に演者として残ったのは私たちを含めた八人となりました。
それぞれの役割ごとに分けた教室に行くことになりましたが、私たち演者組は同じ教室だそうで。
皆が名残惜しそうに移動している間、暇していた祐里香ちゃんが話し掛けてきました。
「千佳。そういえば貴女って演技したことあるの?」
「うーん、この前メグちゃんと花ちゃん……あ、妹と隣の家に住んでる幼馴染なんだけど、二人と一緒に台本を読んだりしたよ」
「へぇ。意外とやる気満々じゃない」
「まぁ、やるからには全力で、だよ」
そう言うと祐里香ちゃんはニヤッと笑って腕を組み、足を組んで私を見詰めました。
おおっ、様になってるよ祐里香ちゃん! でもカッコいいよりも可愛いの方が勝ってるよ!
頑張って大人びたポーズをしてるみたいで可愛い!
「なら相手に取って不足はないわね。いいわ、千佳。貴女を私のライバルだって認めてあげる」
「いや、別にいいです」
「なんでよ!?」
いや、だってねぇ?
「人気の子役アイドルにライバル宣言されても、ねぇ?」
「いや、だったら誇りなさいよ! 嬉しいでしょ!」
「嫌だよ! それで芸能界デビューとかさせられたりしたら嫌だからね!」
不服そうな祐里香ちゃんは立ち上がり、黒板の前あたりまで歩いて振り返りました。
そして腰に手を当て、人差し指を立ててこちらに腕を伸ばし。
「――勝負よ千佳ッ! どちらが主役の座に相応しいか、どちらがこの学校のアイドルに相応しいか、勝負よ!」
それは宣戦布告。この前クラブ説明の時に祐里香ちゃんから言われた言葉と同じようなものが飛び出しました。
「別に主役じゃなくてもいいんだけど? それに私は学校のアイドルじゃないよ!」
「実質アイドルじゃない!」
その言葉に頷く生徒と先生たち。
……い、いやまぁ。完全に反論は出来ない、かなぁ?
「で、でも私は歌って踊ったりしてないからね!? ちょっとファンクラブがあるくらいの普通の女の子だから!」
「ファンクラブがある子は普通の女の子とは言わないわ!」
再び頷く生徒と先生たち。
いいから他の教室へと移動してた子は移動しなさいな。
「で、でも」
「前の時に勝負を受けると言ったわよね?」
「いや、あれは押しに押されて頷いただけと言うか」
「問答無用! 勝負は次の劇の主役オーディションよ! 手を洗って待ってなさい!」
「……えっと、首を洗って、かな?」
「――っ!!」
言い間違えを訂正すると、祐里香ちゃんは顔を真っ赤にしてそっぽを向きました。
なんかごめん。
「……はぁ、分かったよ。でもやるからには私も全力でいくからね?」
「え、ええ! 私も本気でやらせてもらうわ!」
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