TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

千佳ちゃん、ヒルデちゃんに照れる。

 今日はこの家のお祖母ちゃんがこの屋敷に帰って来る日です。
 メイドさんによると夕方には到着するらしいので、それまではいつも通り自由時間になります。

「うーん。今日は何しようかなぁ」
「お姉ちゃん、ゲームしよーよー」
「ドイツに来てまでゲームしてもなぁ」
「……た、確かに!」
「気付いてなかったの!?」

 メグちゃん……いつの間にこんなに残念な子になってしまったの。

「でも、ドイツっぽいことってなんだろ? お姉ちゃん」
「うーん。私ってそこまでドイツに詳しい訳じゃないからね」
「うーん。桃ちゃんなら分かるかもしれないけど……」

 私たちの寝室で二人首を傾げました。
 此処に来てからドイツらしい事ってドイツ料理を食べたくらいなんだよね。
 そろそろ観光とか行きたいけど、詳しく知らないしドイツ語なんて喋れないからなぁ。

「そんな時は、わたくしにお任せですわ!」
「うわっ!?」
「ひっ!?」

 その特徴的な言葉と共に私たちの傍に現れたのはいつもとは違うメイド服を纏ったヒルデちゃん。
 扉が開く音すらしなかったのに、どうやって来たんだ!?

「この程度、メイドの基本ですわ」
「……もう心の声が読まれてもビックリしないよ」
「あら残念ですわ。千佳お嬢様の反応素晴らしかったのに」
「メイドの癖に仕える人を弄り倒そうとするの止めてくれないかな!?」
「その反応こそ千佳お嬢様ですわ!」

 日本では年上の人が少ない事もあって私が弄られるなんて数少ない……と思うんだけど、この屋敷では中学二年生のクリス、ヒルデちゃんと高校二年生のキャロルと年上が多い。
 だからかは分からないけど、此処に来てから弄られている事が多い気がする。

「それは置いておいて、千佳お嬢様に妹様。どうやら退屈なさっているようですね?」
「あ、うん。そっちが弄ってきたのに置いておくんだ」
「ヒルデお姉ちゃん、何かない?」
「お任せですわ! とは言っても、今日はお祖母様がお帰りになられる日ですので外には出られませんが」

 となると今日も屋敷で暇つぶしかぁ。
 お父さんとお母さんは今日も友達に会いに行ったというのに……。

「千佳お嬢様のお父上は此処で生活している際に様々な事業をしていたと聞き及んでおりますわ」
「そうなの!? 今はサラリーマンなのに……」
「日本に行く際に貴族という籍を無しにして、一から挑戦してみたいとお祖母様に仰ったそうですわ。素晴らしいお人ですわね!」
「えへへ。お父さんが褒められると嬉しいね、お姉ちゃん!」
「そうだね。普段のお父さんからは微塵もそんな気配しないけどね」

 親馬鹿で残念なお父さんだと思ってたよ、ごめん!

「本日はクリスたちと一緒に、千佳お嬢様と妹様にドイツについてお教えしようと思いますの。明後日には観光の案内もいたしますわ!」
「おお! ありがたい!」
「わーい!」
「それでは付いて来て下さいまし!」

 私たちはヒルデちゃんに連れられて娯楽室へと向かいます。
 揺れるスカートを見ながら、私は最初から思っていた疑問を投げ掛けます。

「……それでヒルデちゃん、その恰好は?」
「日本から輸入したのですわ!」

 ヒルデちゃんの服装はこれまでのクラシカルなメイド服では無く、日本のメイド喫茶で見るような膝上ミニスカートのメイド服を着ています。
 以前の服はこれぞメイド! といった物だったのですが、今はどことなく妖艶な感じです。

「何というか、パンツ見えそうだね」
「見せるのは千佳お嬢様だけですわよ?」
「なっ!?」
「ふふ、冗談ですわ。メイドたるもの見せずに動かなければなりませんのよ!」

 余りにも余裕たっぷりに言われて、私は思わず顔が赤くなってしまいました。
 これが年上の色気なのか……!?

「お姉ちゃん、後で皆に報告しておくね」
「ちょっと待って。待ってください恵様」

 年上に翻弄される私なんて拡散されたら、恥ずかしくて学校に行けなくなるよ!
 え? リンファちゃん?
 リンファちゃんはお母さん枠だからいいんです!

「どーしよっかなー?」
「メグちゃぁぁん! 何でもお願い聞くからぁ!」
「何でも?」

 ニヤリと笑ったメグちゃんに、私は墓穴を掘った事を悟りました。
 な、何をお願いされるの!?

「ふっふっふー! それじゃあお姉ちゃん!」
「は、はい」
「お姉ちゃんへのお願いは、これだっ!」

 こうして私はメグちゃんのお願いを聞く事になってしまいました。

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