TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

二人で図書館に行くとこうなる1

【ケース1 愛しの天使、メグちゃんの場合】

「メグちゃん、何を借りるの?」
「お姉ちゃんのオススメがいいな!」
「え? メグちゃんが行こうって誘ってきたけど、それでいいの?」
「勿論だよ! お姉ちゃんが好きなこと、私も好きになりたいもん!」
「メグちゃん……ひしっ!」
「お姉ちゃん……ひしっ!」

 お姉ちゃん、感動しました!
 絶対に姉離れしないように、お姉ちゃんとずっと一緒にいるって思わせ続けてもらわねば!
 そうと決まれば、抱きついている暇はありません。

「メグちゃんにオススメな本いっぱいあるから、見て回ろっか?」
「うん!」

 二人で手を繋いで本棚の間を歩いていきます。
 そして目的の本棚へと到着しました。
 ここは小説の中でも、一際マニアックな小説が置いてあるゾーン。
 そう、ここは。

「私的にはこの『薔薇姫と妹』とか、『悪役令嬢とヒロイン~禁断の百合~』とかがオススメだよ!」
「あ……」

 メグちゃんは眉を下げて、申し訳なさそうにこちらを見ます。
 あれ、もしかして、私の希望潰えた?

「あ、よ、読みたい! 読みたいよ!」
「ごめんねメグちゃん……。妹に空気読ませちゃって……」
「そんなことないよお姉ちゃん! 私本当に読みたいんだもん!」
「……そう?」
「うんうん! 早速読んでみるね!」

 そう言ってメグちゃんは小説を片手に図書館中央のテーブルへと向かいました。
 良かった、メグちゃんがあれを読んで受け入れてくれたら、私の将来も安泰だ。
 でもメグちゃん。
 その小説、皆に見られやすい中央で読まない方がいいんじゃないかな?



 一方、恵は冷や汗を拭いながらテーブル席へと着いて。

(これ、もう五回も読んでる……)

 と、思っていたのでした。



【ケース2 やんちゃな妹分、花ちゃんの場合】

「ねぇね、本探そ!」
「うんいいよ。何を探してるの?」
「コーギーを探せ!」
「いや、流石に図書館に犬はいないと思うよ?」
「違うよー。そういう名前の本があるのー!」
「あ、そうなんだ」

 流石の花ちゃんでも、図書館に犬がいないことくらい知ってるか。
 こっちの妹も、しっかり成長してるんだなぁ。
 姉として誇らしいよ。

「あ、これじゃない?」
「あったー! お姉ちゃん、読もー?」
「勿論! 一緒に読もう!」

 そうして二人で壁際に備え付けられたソファに座ります。
 一緒に読むということで、私の膝に花ちゃんを座らせました。

「ねぇね、早くー!」

 おっと、花ちゃんのお尻の柔らかさを堪能している時間はありません。
 私は花ちゃんの前に本を持ってきて、ページを開きます。
 そこにはページ一面に細かく描かれた、様々な犬の絵。

「ここからねー、コーギーを探すの!」
「へぇそうなんだ、じゃあ花ちゃん競争だ!」
「むむ! ねぇねには負けない!」

 そうして五分後。

「飽きたー」
「え、ちょっと待って、もう直ぐ見つけるから」
「むー」

 というかパッと見でコーギーを判断できるほど、犬に造詣が深くないんだけど……。
 私たちにはまだ早かったんだ……、経験地を貯めて出直そう。

「またチャレンジしてみようね?」
「難しいから、やー」

 それから数日後、一人でコーギーを見つけました。
 一人で喜んで、司書さんに静かに怒られたことは内緒です。


【ケース3 姉より真面目な妹、三枝桃の場合】

 さっきから桃ちゃん、真剣に本棚を見てるなぁ。
 どの本を読むのか迷ってるのかな?

「桃ちゃん、何を探してるの?」
「千佳先輩。いえ、探してはいないんですけど、何か面白い本がないかなと」
「なるほど、私のオススメとか読んでみる?」
「いいんですか? ありがとうございます」

 桃ちゃんはちょっと思考が固い部分があるし、この前メグちゃんに読んでもらったあの小説を勧めてみようかな?
 そうして例の本棚へ。

「あの、千佳先輩。これは?」
「一回読んでみない? 面白いから」
「えっと、じゃ、じゃあ」

 ふっふっふ、これで桃ちゃんも百合思考を身に付けるのだ!
 そして私の虜になりたまえ!



 この時、桃は思った。

(千佳先輩……、これ恵に勧められて読まされたことがあります……)

 カエルの姉はカエルなのだと、桃は納得した。



 そして通りがかった女の司書さんは思った。

(あの子、また小さい子に百合小説を。あ、でもこの子たちが絡み合うのを想像すると……、鼻血出そう、カウンター戻ろ)

 残念な司書さんであった。

「TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「コメディー」の人気作品

コメント

コメントを書く