TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

二人で図書館に行くとこうなる2

【ケース4 大人の女性になりたい、室崎愛の場合】

 愛ちゃんと二人で図書館へとやってきました。

「ねぇ千佳ちゃん。ちょっと本を探してくるから、別行動でもいい?」
「え? 愛ちゃんの分を先でいいよ、一緒に行こ」
「あ、えっと、その。あ! じゃあ私の欲しい本を探してもらえる!?」
「……私、一緒にいちゃ駄目かな?」

 もしかして、私は愛ちゃんに愛想を尽かされてしまったのでしょうか。
 そうだとしたら、もう私の精神はボロボロです。
 視界が潤む中、私の様子を見てあわあわと手を振る愛ちゃんは言いました。

「そんなわけじゃないよ! えっと、じゃ、じゃあ、一緒に行く?」
「……! うん!」

 よかった、愛ちゃんに嫌われているわけじゃなかったみたい。
 愛ちゃんに手を引かれて進む先は、特殊な本棚。
 あ、ここは。

「えっと、愛が借りたい本、これ、なんだけど」
「『繋がれた禁断の愛~幼馴染との監禁百合~』」
「いや、そうじゃないよ? あの、ただ、えっと、その」
「幼馴染との、監禁百合?」

 私の全身から汗が出てくるのが分かります。
 やばい、これは私、狙われているのかもしれない。

「違うの千佳ちゃん! えっと、別にこんなことがしたいわけじゃなくて」
「……えっと、わ、私、帰るね?」
「待って千佳ちゃん! お願いだから、誤解だからぁ!!」

 その後日、愛ちゃんは妻に怒られる夫のように、土下座する勢いで釈明をしました。
 どうやら一冊ずつ読んでいて同じ作者の次の巻だったらしく、私を監禁するなどということは絶対にしないらしいです。

 愛ちゃんに涙目になって異常に怯える千佳ちゃん、というプロマイドが出てくることになった事実だけは、知りたくなかった。



【ケース5 関西弁のお茶目少女、梅田湖月の場合】

「よっしゃ千佳ちゃん! 難しい本読むで!」
「どうしたの湖月ちゃん。何に目覚めたの」

 図書館へ来て早々、湖月ちゃんはそう宣言してパソコン関連の本棚へ。

「ママがノートパソコン買ったんや、やからパソコンの使い方を勉強するで!」
「なるほど、それなら私が手取り足取り教えてあげるよ?」
「足は取らんとってな。せやったら今日の目的終了や! 撤収!」
「本読まずに帰るの!?」

 いい仕事した、という何故か満足気な表情の湖月ちゃんを引き止め、彼女も百合の世界へとご招待することにしました。
 ぐっへっへ、意外とウブな所がある湖月ちゃんのことだから、反応が楽しみ。

「あ、これ愛ちゃんにオススメされて読んだわ~」
「……さいですか」

 湖月ちゃんの話によるとこの本棚、私のファンクラブメンバーの中で密かに流行っているそうです。
 今更ながら、どの口がと思うかもしれませんが、言わせていただきます。
 えっと、小学生だよね。皆?

「結構参考になったわ~」
「えっと、どういう参考なんでしょうか」
「それは勿論、色々や!」

 それからは、物語の中にあるような言い回しをする子が増えるのだった。

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