TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

キャンプと焼きそばとナデナデの極み

 川の流れる音と木のせせらぎに包まれた草原にテントやテーブル、椅子を並べると、まるでそこは自然の中に現れたレストランのような雰囲気へと変貌します。
 お昼にバーベキューをして、バレーボールやフリスビーを使って遊んだ私たちは椅子に座って、晩御飯の焼きそばが出来るのをまだかまだかと心待ちにしていました。

「やっきそば! やっきそば!」
「こら花、お箸を振り回すと危ないですよ!」
「桃ちゃんの言うとおりだね、もうすぐ出来上がるっぽいから大人しくしてよう?」
「分かった! 桃ちゃんもごめんなさい!」
「うんうん、花ちゃんは謝れるいい子ですね」
「ねぇねのナデナデだぁー!」

 桃ちゃんの援護をして、素直な花ちゃんを撫でていく。
 すると桃ちゃんが席を立ち、ソロソロと隣りへやってきてこちらをチラチラと見てきます。
 仕方ないなぁと思いながら桃ちゃんもナデナデしていると、皆が物欲しそうな目線を向けてきますが残念。
 お父さんたちの声がかかり、焼きそばの完成を知らせが届きました。
 目を線にして気持ちよさそうにしている桃ちゃんと花ちゃんにお皿を持たせて、皆でお父さんたちが汗をかきながら頑張っているバーベキューコンロへと歩いていきます。

「なぁ千佳ちゃん。後でうちにも~?」
「駄目です」
「ちょっとだけやから、な?」
「私のナデナデはいいことをしたご褒美なのだよ、湖月ちゃん」
「むむっ、せやったらうち片付け手伝うわ! それやったらええんやろ?」
「うん、いいよ」

「ずるい! 私もお姉ちゃんにナデナデしてもらいたい! お片づけ手伝う!」
「湖月ちゃん、私も手伝うね?」
「……頑張る」
「うぐっ、まぁええか! 皆で片付けて、皆でナデナデしてもらお!」
「おー!」

 私のナデナデくらいなら何度でもしてあげるよ!
 ご褒美があると言っても、お父さんとお母さんたちのお手伝いをすることは大切だからね。
 欲を言うと、私のナデナデが無い状態でも率先してお手伝いできるようになってほしいけど、そこはお母さんたちの仕事かな?

「とりあえず焼きそば受け取ろっか?」
「うん! お父さん焼きそばひとつー!」
「うちにも!」
「こらこら、バーベキューコンロに近づいたら危ないからね。ちゃんと並んで受け取りましょう」
「はーい!」
「あい!」
「では私は花の後ろに並びます」
「じゃあ愛はその後ろで」
「……並ぶ」

「よし、皆えらいね。じゃあ私は莉里ちゃんの後ろで」
「ちょ!? うち最後尾やん!?」
「湖月ちゃん、常に周りをよく見て動かないとね」
「なんでそんな達人みたいなこと言われなあかんの!?」
「……湖月、ドンマイ」
「絶対思ってへんやん! まぁええわ! 並ぶわ! 最後尾にな!」
「ごめんごめん、ほら。私の前に並んで」
「いや千佳ちゃん、殆ど最後尾と変わらんからな? でも入らせてもらいますわ!」

 なんだかんだ私に甘えてくる湖月ちゃん、同い年だけど私的には妹みたいな存在なんだよね。
 そう言ってしまうと愛ちゃんも莉里ちゃんも妹みたいに感じてるんだけど、皆それぞれ違うところが一杯あって可愛いんだよね。

「ありがとな千佳ちゃん!」
「どういたしまして、湖月ちゃん」
「……ここは死守する」
「別にええよ!? うちそこまでがめつくないで!?」

 でもちょっと、湖月ちゃんは残念な子かもしれない。



 炭火で作った焼きそばは美味しかった!
 男の料理かと思ったら味付けは私のお母さんがしていたので、絶妙なソース加減でした。
 油とソースに煌めくそば。そして豚肉とキャベツたちが織り成す触感と味のエンターテイメント。
 これは、味の宝石ば……いや何でもありません。

 そうして星三つな焼きそばを鱈腹平らげたあと、皆でお片付けを開始します。
 私も手伝おうと思ったのですが、私に仕事を取らせまいという具合に皆が動くので大人たちに混ざって見守ることに。

「ちょっお父さん!」

 お酒臭いお父さんに絡まれて膝に乗せられますが、なんとか脱出してお母さんの元へ駆け込みます。
 お父さんはしょんぼりとしていますが、お酒臭いのが悪いのです。
 そうしてお母さんの膝でのんびりしていると、皆がお片付けを終えて私の元へと集まりました。
 期待のこもった眼差しに晒された私は、名残惜しみつつもお母さんの膝から飛び降ります。
 そして皆をナデナデしようと思ったとき、私へのリベンジに息巻いているお父さんから花火の入った袋を渡されました。

「お! 皆、花火やろっか!」
「千佳ちゃん、先にナデナデや」
「そうだよ千佳ちゃん」
「うんうん、皆の言うとおり! ほら、お姉ちゃん!」
「……ナデナデを所望する」
「花も! もう一回!」
「ち、千佳先輩は約束守るべきだと思います」

 その後、滅茶苦茶ナデナデした。

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