クラス《農民》の俺最強

sterl

ボッチ脱却!

 クエストの備考にあった宿屋の住所は、驚くことに俺の畑の大通りを挟んだ対面だ。いやあ、驚いた。クエスト受けた時点でわかってたけど。

 見た目はかなり立派な木造住宅だ。横にも縦にも大きい。2階建てとか俺には無縁だ。なにせただのボロ小屋だからな!

「おじゃましまーっす!」

 勢いよく扉を叩いて押し開ける。内装はまだ簡素だな。右側に階段、奥に厨房が見えて、その手前に大きな空間がある。たぶんこの空間にテーブルとかを置いたりして食堂にするんだろうな。そういえばこのゲームでの食事の扱いってどうなるんだ?食べなくても大丈夫みたいだけど。後でヘルプ先生に確認するか。

 などと考えていると、階段の上から足音が聞こえてきた。

「いらっしゃい。この宿をご利用のお客様ですかい?まだ名前すら無いけどな。ハッハッハ!おっと、自己紹介が遅れたな。俺はトールだ」

 階段を降りてきたのは、筋骨隆々なのに不思議と似合う白エプロンをつけた朗らかなおじさんだ。今更なのだが、このゲームは自分の外見はリアルの自分と同じ外見になる。つまりこのおじさんはリアルでもナイスガイなおじさんってことだ。リアルにもこんな雰囲気の人がいるのか。

「俺はカダスって名前です。食材提供のクエスト受けてきました!」

 初対面の人には敬意を払って元気よく!うん?ジジイ?ジジイには敬意を払う必要なんて無いだろ。なにせ鬼畜ジジイだし。

「おっ、そうか。そいつぁありがてぇ。うちの料理人もきっと喜ぶ」

「あれ、トールさんだけじゃないんですか?」

 この宿屋は2人で経営してるのか?してるんだろうな。うちの料理人って言ってるんだから。

「おう、嫁と娘と3人でやってるんだ。つっても、今は嫁が森に行ってて娘はリアルで学校だけどな」

「へぇ、家族でやってるんですか。楽しそうでいいですね!」

 俺なんかどこにでもいるボッチプレイヤーだ!初めての仲間にトールさんがなってくれるといいな!

 カダスが なかまに なりたそうに トールをみている!

「昨日の夜から始めたんだ。俺が宿屋主で嫁が剣士、娘が料理人だな。後で娘がログインした時にまた食材提供の話をしてぇからフレンド登録してくれるか?」

 キターッ!

「もちろんです!」

 初フレンドはトールさんだ!やったぜ!
 トールさんからフレンド申請が送られてきたのですぐに承認する。よっしゃ、オンラインゲームを始めて二日目にしてフレンドができた!最速記録だ!

「っと、これでいいな。カダスはこの後いつ頃までログインしてるんだ?」

「一日中ログインする予定です」

 明日も明後日も一日中ログインする予定だ。リアルクラス職業は気にしてはいけない。

「そうか。じゃあ、後で連絡する。16時過ぎになるとは思うが、また後でよろしくな」

「こちらこそよろしくお願いします!」

 いやぁ、中々に実入りのある時間だったなぁ。クエストに関する話は全然進まなかったけど。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品