進化上等~最強になってクラスの奴らを見返してやります!~

三浦涼桜

第二十九話 蹂躙しますけど、それが何か?

 ギルドを出た俺は、外に点在している屋台を物欲しそうな目で見るリーナを引きずりながら街の外に出た。
 リーナが恨めしそうにこちらを見てくるが、それを無視して東の森に向かう。
 森というから少し遠いのかと思ったのだが、意外なことにそんなことはなかった。

「なんか、思ってたよりも普通……」
「普通が一番だ」
 そんなことを言いながら俺たちは森の奥にどんどん進む。
 途中でいろいろな動物が見れたりして結構和めた。ここ毎日通おおうかな。

 そんなことを考えながら、ついに森の最奥についた。
 なんか祭壇と大きな扉が見える……まさかまた面倒事じゃないだろうな…………。
 気にしたら負けだという気持ちで祭壇のことは無視し、辺りを見回す。
 辺りに魔物の気配はない。

「本当にいるの?」
 リーナが欠伸をしながらそう尋ねる。飽きてしまったのだろう、放っておいたらその辺で寝てしまいそうだな。
「少なくとも半径200m以内にはいないな」
 そう言うとリーナは完全にやる気を失ったのか、木にもたれかかって眠ってしまった。

「はぁ、やれやれ。少しぐらいは場所を弁えてほしいんだがな」
 そう言ってリーナに近づこうとした瞬間―――――

「ギャオオオオオオオ!!」

「またこのタイプか! いい加減にしろよこの野郎!」
 魔物の咆哮に対して即座にそう叫び返す俺。何やってんだ。
 とにかく、魔物の場所を知らなければ話にならない。
探知サーチ

 探知サーチ
 すべてが記されし禁書アカシックレコードに含まれる魔法の一つ。
 【索敵】のスキルの上位互換であり、かなりの距離を観測することができる。
 なお、観測したデータは全て脳内で3Dモデルで表記され、その観測したデータの詳細を知ることができる。

 さてさて、ゴブリンだといいんだが―――――

 脳内に表記されたデータを見て驚愕する。なんだこれは!?
 そこに記されていたのは、到底Gランクんでは倒すことのできないようなレベルのゴブリンのステータスであった。
 さらに、ゴブリン以外にもオークやコボルト、オークと言った魔物たちが群れを成している。

 いったいどうなってんだよ……。
 俺は急いでリーナを起こすことにする。
「リーナ! おいリーナ起きろ!」
「……なに?」

 リーナが不機嫌な声を上げてこちらを睨みつける。
 少し罪悪感を感じつつも、俺は急いでリーナに今しがた見た情報を伝える。
 説明しているうちにだんだんリーナの表情が強張っていく。
 「……どうするの?」
「もちろん処理しに行く。このレベルの魔物が街に降りていけば確実に大パニックになるからな」

 俺言葉を聞いて、リーナは険しい顔で装備を展開する。
 俺もリーナに倣い装備を展開。これで準備万端だ。
「さて、大きな害虫を駆除しに行きますか」







 祭壇があった場所から約十分。少し歩いた場所にその群れはあった。
「うわぁ……うようよいやがる」
「キモイ」
 リーナが一言でばっさりと切り捨てた。
 まあ、言いたいことはわからんでもないが、もう少しオブラートに包めませんかね?

 まあそんなことはさておくとしても、この数はかなりヤバい。ついさっきサーチした時よりも明らかに数が増えている。
「おいおい、冗談きついぞ……原種オリジナルがいるじゃねぇか」

 原種オリジナル
 あらゆる魔物のクラスの中で、原点に近い存在である。
 ただ原点に近い存在というわけではない。その真価は圧倒的な力にある。
 たとえゴブリンであっても、原種となればパンチ一発で街が陥没するほどの力を持っている。

 だが、原種は本来然るべきダンジョンに封印されているはずなのだが…………
「しょうがない。本当は魔石とか素材を回収したかったが、こんな化け物がいるなら話は別だ」
「どうするの?」
「合体魔法でつぶす」

 俺の言葉にリーナが嬉しそうな顔をする。

 合体魔法とは、複数の魔法師が放つ魔法を組み合わせて威力を累乗させる魔法のことだ。
 だが、必ず成功するというわけではなく、相手との信頼関係や相性などと言った複数の条件をクリアして初めて成功する技法である。
 失敗すれば、行き場を失った魔力が暴走して災害に発展する場合もある。
 それほどに難しい技法なのだ。

 だが、俺とリーナからすればそんなものお茶の子さいさいで出来てしまうのである。
「貫け、イル・ギヂディーオ」
 リーナがそう唱える。
 すると、リーナの手に緑色の光が漏れ出し、やがてヒュン、ヒュンという音が鳴り始める。

 天魔法「イル・ギヂディーオ」
 風系最上級クラスの魔法。天龍の咆哮を模倣して創られた。
 威力の方は災害級だと認定されており、許可なく使うことを禁じられている

「天魔法か……なら俺は―――――」

 俺は右手に魔力をかき集める。
 使うのは炎魔法。
 皆さんもうお分かりだろうか。そう、いつぞやの時に使ったあの魔法である。

「熱しろ、インペリアル・バースト」
 そう唱えると、俺の右手からありえないほどの熱量を持った魔力が集まり始めた。

 炎魔法「インペリアルバースト」
 火系最上級クラスの魔法。超高温の熱を放射することを目的とされた想像された魔法。
 威力の方は言わずもがな、圧倒的な火力で周りが一瞬で焦土に変り果てるもの。これを制御することはほぼ不可能と言われている。

 俺の魔法が完成した瞬間周りに存在する草木が灼け落ちた。
 リーナまでもが苦しそうな顔をしている。
「ヒカル……威力抑えて」
「ん、すまん」

 リーナにそう言われたので、少しだけ威力を落とす。
「これくらいなら問題はないな?」
 俺の言葉にリーナはまだ苦しそうな顔をしていたが頷く。

「行くぜ―――――」

 俺は右手に集めた魔力の塊を放出する。
 もちろん、いつぞやの時のような集束させて放出するような真似しない。
 あれは威力が高すぎた。

 放出した熱線は、緩やかなスピードで魔物の群れに向かっていく。
 着弾まであと5m……4、3、2、1―――――0。

 ズドォォォォンッッッ!!

 という爆発音が響き渡る。だがそれだけでは終わらない。
「イル・ギヂディーオ、発射ファイア

 その言葉と同時に、リーナの右手にたまっていた緑色の光が、一瞬で爆心地に到着し、周りの炎巻き込んで燃え上がる。その様子はさしずめ―――――

「ファイアトルネードといったところか」

 俺は思わず呟いた。
 これなら例え原種オリジナルといっても、耐えきることはないだろう。
 まあ、あれを倒すのに森の一部を犠牲にしてしまったが……【概念改変】使って直すか。
 さて、何か素材が残っているといいんだが……おや?

「ヒ、ヒカル、アレ……」
「おいおい、冗談きついぜ」
 俺たちが見たのは、幾体ものゴブリン、コボルド、オークで作られた肉壁であった。
 その場には原種は存在しない。つまり―――――

「あの肉壁の後ろにいるってことか…………」
 そう考えるとかなり厄介だ。原種は一体一体が最強クラスの化け物。
 それが合計10匹以上いるとなると、流石に二人で討伐するというのには無理がある。

 あくまで・・・・普通の人間・・・・・だったらの・・・・・話だが・・・
「まあ、邪魔なゴミは処分できたし、思う存分暴れられると思ったらいい結果だったな」
「せっかくだから素材を捥ぎたい」
「もうちょっとオブラートに包め」

 そんなくだらない話をしながら、俺とリーナは装備を展開する。
「来て、堕神闇槍ウロボロス
「来い、紅蓮ぐれん凍荂とうわ

 リーナはいつも通りの槍を、俺はミルティスさんと作り出した武器の一つ、小太刀二振りを出した。
「……その刀は? いつも使ってたやつよりも小さい」
「ああ、こいつも俺の武器だな。こういった敵の数が多い場面とかで活躍するかなと思って作ったんだ」
 リーナは少しだけ目を輝かせながら小太刀を凝視する。
 …………そういえばリーナって結構武器に興味を持ってたよな………………

「……またなんか作ってやろうか?」
 俺がそう言うと彼女はすごい勢いで頭をブンブン縦に振った。そんなにうれしいのか。

 閑話休題それはともかくとして

「さぁて、じゃあそろそろ、蹂躙するとしますか」

 俺とリーナは武器を構え、魔物たちへと突撃した。

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