引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

みんながいるから

「――さん! シュンさんってば!」

 意識が覚めたのは、そんな可愛らしい声に呼ばれてだった。
 うっすら目を開ける。
 滂沱ぼうだの涙を流し、顔をくしゃくしゃにしている妻が、視界いっぱいに映った。

「ロ……ロニン。うっ」

 思わずシュンは顔を引きつらせた。動こうとすると激痛が走る。喋るだけで精一杯だ。それでもなんとか、口から言葉を捻り出した。

「勝ったのか……俺たちは」
「う、うん。熾天使も……あと、他の天使たちもいなくなったから……どうしたのかと……思って……」
「そうか……」

 痛みをこらえながらも、シュンは妻の頭に手をまわした。
 その可愛らしい髪を、ゆさゆさと、撫でてみせる。

 ちらりと視線をずらすと、そこに勇者アルスがいた。動けないシュンの代わりにトルフィンを抱えてくれているようだ。彼はこちらの視線に気づくと、
「心配するな。このガキはそんな簡単にくたばりはしない」
 と言った。違いないとシュンも思った。

「……アルス。とっくに二時間は経ってるよな」
「ああ。どうやら創造神の死亡とともに、世界消滅も取り消されたようだな」
「そうか……」

 ならば、ここまで苦労してきた甲斐があったというものだ。
 シュンの――いや、みんなの頑張りにより、世界は真の意味で救われた。
 もういたずらに人間たちが消されることはない。その元凶たる神族は、残らず消え去ったのだから。

 ――だが。

「おまえたち。これからどうするつもりだ」
 アルスの小さな声が、いやに周囲に響き渡った。

 そう。
 神を滅したとはいえ、シュンたちはもう日常には戻れない。あまりに大きな被害が出てしまった。それは人間・モンスターのみならず、建物などの資産も同様だ。

 長らくシュンたちが築きあげてきた国は、ほとんど振り出しに戻ってしまったといえる。

「大丈夫だよ……」
 シュンの手のひらの下で、ロニンがぽつりと声を発した。
「みんないるんだもん。きっと……どんなことだって乗り越えられる」
「ああ。……そうだな」
 シュンも同意の頷きを返した。

 たしかに当分は苦しい生活が続くだろう。
 でも、いまはみんないる。
 ロニン、セレスティア、アルス、トルフィン、リュア……これだけ有能な人材が集まれば、どんな試練だって乗り越えられそうな気がする。

 そして、今度こそ作るのだ。争いのない、真に平和な世界を。

「また国をつくるのか。本当に元気だな、おまえたちは」
 苦笑いを浮かべるアルス。
「……だが、それでこそ国王シュンだ。是非とも……協力させてくれ」
「当然じゃねえか。おまえには貸しがあるからな。馬鹿みてえに働いてもらうぜ」

 シュンは冗談混じりにそう言うと、改めて、ロニン、アルスを見渡した。

「休んだのち、国を立て直す。苦しいこともあるだろうが……俺たちはもう、神にすら対抗しうる力を身につけた。どんな敵がきても蹴散らせるだろう。最強ステータスで、世界統一ってやつだ」
「うん……!」
「任せておけ」

 ロニンとアルスの声が、星合の間に大きく響きわたった。
  



 引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します― 《完》

コメント

  • 青花美来

    すごく面白かったです!

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  • ノベルバユーザー601714

    引きこもりレベルというワードが面白かったです。今後の展開が楽しみです。

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  • ノベルバユーザー400360

    これ序盤その場の勢いで書いてるでしょ...

    0
  • ノベルバユーザー425254

    建国する辺りまでは面白くていっきに読んでしまいましたが、子供が生まれてから急に展開がつまらなくなり更には天使たちが出てきた所で萎えました。結末が全く気になることも無く読む事をやめる事にしました…途中まではとても面白かったのに残念です。。。

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  • ghost now

    率直な感想.....面白かったです!!

    0
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