引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

シュンの部 【みんなの力を】

 ――2:00――

 再び大地が揺れた。
 シュンは舌打ちし、ロニンとともにアリアンヌをかばう。彼女がいなければ自分はここまで強くなれなかった。なにがなんでも守り通さねばならない。絶対に。

 だが同時に、とめどなく焦燥感が溢れ出してくる。
 いったい、これからどうすればいいのか。
 ディストとミュウは現在、見果てぬ場所にいる。もたもたしている時間はない。ディストの言葉が正しければ、あと二時間で世界が消えてしまう。

「困ったことに……なりましたね……」
 この場にいた誰もが同様のことを思ったのだろう。アリアンヌが乱れた呼吸のまま呟いた。
「私の力が健在であれば……ご案内できたのですが……。申し訳ありません。いつも肝心なところで……」

 アリアンヌのせいではない。シュンは首を横に振った。
 考えなければならない。
 必ず、なにかしらの方法があるはずだ。創造神ディストへ辿りつく方法が。

「――それは俺が助太刀しよう」

 と、ふいに、どこか懐かしい声がシュンの耳に届いた。
 瞬間。
 とある地面の一点に、突如として幾何学模様が発生した。この現象も見覚えのあるものだ。ワープの魔法である。
 幾何学模様から上空へ、光の柱が伸びていく。そこに現れた人影を見たとき、シュンは思わず目を見開いた。

「おまえ……アルスか……?」
「久しぶりだな……。やはりここにいたか」

 勇者アルスはやや切迫した表情だった。シュンとロニンを見渡し、ふうと息を吐くと、両膝に手を当てた。

「苦労した……。いままで彼らを守っててな」
「彼ら……?」

 視線をずらすと、現れたのは彼だけではないことがわかった。
 セレスティア、リュア……そして、レイア先生を含む、数十名のシュロン学園の生徒たち。
 彼らがみな、へたり込む形で地面に横たわっている。死んではいないようだが、現在、動けないらしい。

 アルスが話を続ける。

「いきなり、みんなのステータスが1にされたようでな。俺はディストから《神の霊気》を授けられてるから無事だったが……」
「そうでしたか……」
 答えたのはアリアンヌだった。
「私の作成した《ステータス操作無効スキル》はあくまでその場しのぎのもの。熾天使の力にはあらがえなかったようですね……」

 となると、ステータスを操作され、動けなくなった彼女らを、アルスは単身で守り続けたことになる。彼も彼で大変な思いをしてきた……ということか。さぞ多くの天使と戦ってきただろう。

「あれ、でもちょっと待って」
 わずかな沈黙を、ロニンが破った。
「トルフィンは? トルフィンはどこにいったの? 一緒にいたはずだよね?」
「ああ……それが、だな」
 アルスは申し訳なさそうに視線をずらした。
「トルフィンだけは守りきれなかった。天使の連中に……連れ去れてしまった……」
「つ、連れ……!?」
 ロニンがいっぱいに目を見開き、足をふらつかせる。
 シュンも動揺を隠しきれなかった。あの抜け目なさそうな息子が……

「トルフィンはいま、神殿で監禁されていると思う。天使ども、他の人間たちは問答無用で殺していたが、トルフィンだけは無傷で連れていったからな……。俺は勇者失格だ。……だから」
 アルスは凛然りんぜんたる瞳でシュンを見据えた。
「俺も協力させてくれ。勇者として……なにより一人の人間として。幸いなことに、すこしずつ思い出してきたよ。どのような経路で神殿に連れて行かれたかを」
「ああ……俺からもよろしく頼む」

 言いながら、シュンは右手を差し出した。アルスは若干戸惑ったようだが、すぐに片手を差しだし、握手に応じた。

「さて、そうと決まったらすぐに行かねえとな。どうやったらいいんだ?」
「それはだな……」
 アルスが言いかけた、その瞬間。

 ――っ!
 シュンはふいに怖ぞ気を覚えた。
 慌てて上空を振り仰ぐ。
 見るも大勢の天使たちが、こちらへ向けて飛んできているところだっった。白銀の美しい両翼を羽ばたかせ、真っ直ぐに向かってくる。その数、百はくだらない。

「くそったれめ……! ディストの差し金か!」

 奴らを倒すことなど造作もない。
 だが事態は一刻を争う。なるべく無駄な時間を使いたくない。
 かといっって奴らを無視すれば、アリアンヌやセレスティアたちが……

 瞬時。
 さっきまで隠れていたのべ五十二体もの悪魔たちが、シュンたちの前に姿を現した。

「うぎー! ぎぎぎ!」
「ぴぴぴ! ぴー!」
 それぞれの言語で、シュンたちに何事かを叫んでくる。

「ここは私たちに任せて、アリアンヌも人間たちも守ってみせる……って言ってる!」
「あ、ああ……そうか……」
 シュンは胸中で込み上げるものを感じた。
 悪魔たちの強さは、修業中に嫌というほど思い知らされている。少なくとも二時間、彼らならなんとか凌いでくれるだろう。

「悪い……任せたぜ! セレスティアを……みんなを頼む!」

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