引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
シュン&アリアンヌの部 【魔神の秘密】
――人は変われる。
――変わることができる。
その言葉を、シュンは胸にしかと受け止めた。
年がら年中引きこもり、親には泣かれ、知人には軽蔑されてきた。
酷い過去だった。
けれど、そうして引きこもっいた時期があるからこそ、シュンは最強の力を手に入れ、世界の命運を託されるに至った。
そう思えば、引きこもっていたことも捨てたものではない。結果、親には孝行できないまま他界されてしまったが、それでも出来ることはあるはずだ。
シュンは数秒間だけ目を閉じ、いまは亡き両親に思いを馳せてから、ゆっくりと目を開いた。
「アリアンヌは《ここで修業しろ》と言っていた。教えてくれ。俺たちはここでどうしたらいい」
「お答えします。……私がいまからあなたたちに…………。…………」
ふいに光球の声がざらつき始めた。さっきまで機械的なほどクリアな声を発していたのに、急にノイズが混ざりだしている。 
「なんだ? どうした?」
「どうや……ら。時間が。ないようです。アリアンヌが……死にかけて……います」
「な、なんだと?」
シュンは思わず大きな声を発した。
★
身体が重い。
走ることさえままならない。
視界の縁はすでに赤く縁取られている。残りHPはもう一割を切った。
――あと一、二撃でも貰えば……私は死ぬ。
魔神アリアンヌは顎に滴る血液を拭いながら、真正面に構える敵を見据えた。
――まさか、これほどの強さとは……
「あーあ。つまんないの」
斧を指先でくるくる回しながら、熾天使ミュウは言った。
「まったく相手になんないじゃない。ちょっとはやってくれると思ったのに。……ま、仕方ないか。いまのあんたはステータス半減なんだっけ?」
「……そんなことまで知っていましたか」
「当ったり前。あたしは熾天使。わからないことなんて、ディストの歳くらいのもんだわ」
「…………」
そう。
数千年前――アリアンヌ率いる元天使たちが、天界を追放されたとき。
神を裏切った代償として、天使の多くは醜い《悪魔》の姿に変えられてしまった。
もちろん、それはアリアンヌとて例外ではない。他の天使たちと同様、悪魔へと堕とされる……はずだった。
しかしそうならなかったのは、ディストに呪いをかけられる直前に、禁術《分魂の法》を使用したことによる。
分魂の法。
その名の通り、自身の魂を肉体から離脱させる禁断の術。使用者はステータスをまるごと半分失う代わりに、まったく別の肉体に転移することもできる。
うまく利用できれば、自身の精神体のみを分離させ、もうひとりの自分を生成することも可能だ。そしていま、その精神体にシュンたちを任せてある。
しかし。
そうして生み出した個体は、本体たるアリアンヌが消滅した途端、同時に消えてしまう。そうなってしまえば、シュンたちに最期の力を託すことができなくなる。 
負けるわけにはいかない。
せめてあと数分だけでも……
アリアンヌは限界まで力を振り絞り、堂々と熾天使ミュウに相対した。
「こんなところで死ぬわけにはいきません。最後の戦いはこれからです!」
――変わることができる。
その言葉を、シュンは胸にしかと受け止めた。
年がら年中引きこもり、親には泣かれ、知人には軽蔑されてきた。
酷い過去だった。
けれど、そうして引きこもっいた時期があるからこそ、シュンは最強の力を手に入れ、世界の命運を託されるに至った。
そう思えば、引きこもっていたことも捨てたものではない。結果、親には孝行できないまま他界されてしまったが、それでも出来ることはあるはずだ。
シュンは数秒間だけ目を閉じ、いまは亡き両親に思いを馳せてから、ゆっくりと目を開いた。
「アリアンヌは《ここで修業しろ》と言っていた。教えてくれ。俺たちはここでどうしたらいい」
「お答えします。……私がいまからあなたたちに…………。…………」
ふいに光球の声がざらつき始めた。さっきまで機械的なほどクリアな声を発していたのに、急にノイズが混ざりだしている。 
「なんだ? どうした?」
「どうや……ら。時間が。ないようです。アリアンヌが……死にかけて……います」
「な、なんだと?」
シュンは思わず大きな声を発した。
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身体が重い。
走ることさえままならない。
視界の縁はすでに赤く縁取られている。残りHPはもう一割を切った。
――あと一、二撃でも貰えば……私は死ぬ。
魔神アリアンヌは顎に滴る血液を拭いながら、真正面に構える敵を見据えた。
――まさか、これほどの強さとは……
「あーあ。つまんないの」
斧を指先でくるくる回しながら、熾天使ミュウは言った。
「まったく相手になんないじゃない。ちょっとはやってくれると思ったのに。……ま、仕方ないか。いまのあんたはステータス半減なんだっけ?」
「……そんなことまで知っていましたか」
「当ったり前。あたしは熾天使。わからないことなんて、ディストの歳くらいのもんだわ」
「…………」
そう。
数千年前――アリアンヌ率いる元天使たちが、天界を追放されたとき。
神を裏切った代償として、天使の多くは醜い《悪魔》の姿に変えられてしまった。
もちろん、それはアリアンヌとて例外ではない。他の天使たちと同様、悪魔へと堕とされる……はずだった。
しかしそうならなかったのは、ディストに呪いをかけられる直前に、禁術《分魂の法》を使用したことによる。
分魂の法。
その名の通り、自身の魂を肉体から離脱させる禁断の術。使用者はステータスをまるごと半分失う代わりに、まったく別の肉体に転移することもできる。
うまく利用できれば、自身の精神体のみを分離させ、もうひとりの自分を生成することも可能だ。そしていま、その精神体にシュンたちを任せてある。
しかし。
そうして生み出した個体は、本体たるアリアンヌが消滅した途端、同時に消えてしまう。そうなってしまえば、シュンたちに最期の力を託すことができなくなる。 
負けるわけにはいかない。
せめてあと数分だけでも……
アリアンヌは限界まで力を振り絞り、堂々と熾天使ミュウに相対した。
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