引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
シュンの部 【神になる】
アグネ湿地帯の空気は紫に淀んでいる。
そのため昼夜の区別がつきにくいが、アリアンヌが言うにはもう日が暮れたらしい。武術大会の本戦から始まり、ディストから逃げ、アリアンヌに修行をつけてもらう……非常に濃い一日となった。
「どっと疲れたわ。はやく寝てぇ」
軽く伸びをしながら、シュンはあんぐりと口を開け、大きな欠伸をした。こんなに動き回ったのは実に久方ぶりである。自分へのご褒美に数ヶ月くらいは引きこもっていたいという衝動に駆られるが、残念ながらそうもいかない。
創造神ディスト。こいつがいる限り、世界に安寧は訪れない。ディストが生きている間は、おちおち引きこもってもいられないのだ。
たとえ相手が神であろうと関係ない。必ず、俺の手でぶっ飛ばしてやる――
と。
「おおっ?」
ふいにシュンの視界が黒いもので覆いつくされた。巨大蜘蛛がこちらに手――のようなもの――を差し出してきている。
「な、なんだなんだ?」
「……仲直り、って言ってるよ」
微笑ましそうに口元を緩めながら、ロニンが耳打ちしてきた。
「あのときは襲ってごめんなさい……だって」
「ほほう。そうかそうか」
にまっと口角を上げ、シュンは蜘蛛の握手に応じた。
当時、シュンは風邪をこじらせたセレスティアを抱えていた。おそらく、あのとき巨大蜘蛛が本気を出していたら、シュンとて無事に帰れたかわからない。
「気にするな。俺だってあんたらに感謝してる。あんたらがディストに対抗するのを諦めてたら、俺もロニンも死んでただろうからな」
「ぴ、ぴきー」
巨大蜘蛛がなにか言いたそうに鳴き声のトーンを上げた。鋭い鎌をぶんぶん振るが、もちろんなんと言っているかはわからない。
「…………」
思わずシュンは押し黙った。
悲しい話だ。蜘蛛の様子を見るに、きっと人間の言葉は理解している。
なのにその言語を口にすることができない。
ディストから逃れ、《悪魔》の烙印を押されている彼らの苦しみは、シュンには計り知れない。
悪魔たちのためにも、俺は絶対にディストを始末しないとな……
「ねえ、あの……お兄ちゃん」
「ん?」
なぜだか頬を赤らめているロニンに、シュンは首を傾げる。
「そこは敏感な部分だから触らないで……って言ってるんだけど……わざとじゃないよね?」
「っへ?」
いまだにぶんぶん動いている巨大蜘蛛に視線を戻す。
……ああ、暴れているってそういう……
そこまで考えて、シュンはさっと手を離した。
「わっ、わっかんねーよそんなとこ! わざとじゃないからな!」
そもそもこいつって雌だったのか……って、そういうことじゃない。
「スケベ」
影でアリアンヌがなにやらボソっと呟いていた。
「なんか言ったか!?」
「なんでもありません」
相変わらずの真顔で、なにを考えているかわかりにくいが、呆れ気味であることはなんとなく伝わってきた。
「さて、寝る前にご飯にしましょう。……ロニンさん。あなた料理はできますか?」
「えっ? うん、まあ……」
「手伝ってください。より神の力が高まる食材を提供しますので」
そのため昼夜の区別がつきにくいが、アリアンヌが言うにはもう日が暮れたらしい。武術大会の本戦から始まり、ディストから逃げ、アリアンヌに修行をつけてもらう……非常に濃い一日となった。
「どっと疲れたわ。はやく寝てぇ」
軽く伸びをしながら、シュンはあんぐりと口を開け、大きな欠伸をした。こんなに動き回ったのは実に久方ぶりである。自分へのご褒美に数ヶ月くらいは引きこもっていたいという衝動に駆られるが、残念ながらそうもいかない。
創造神ディスト。こいつがいる限り、世界に安寧は訪れない。ディストが生きている間は、おちおち引きこもってもいられないのだ。
たとえ相手が神であろうと関係ない。必ず、俺の手でぶっ飛ばしてやる――
と。
「おおっ?」
ふいにシュンの視界が黒いもので覆いつくされた。巨大蜘蛛がこちらに手――のようなもの――を差し出してきている。
「な、なんだなんだ?」
「……仲直り、って言ってるよ」
微笑ましそうに口元を緩めながら、ロニンが耳打ちしてきた。
「あのときは襲ってごめんなさい……だって」
「ほほう。そうかそうか」
にまっと口角を上げ、シュンは蜘蛛の握手に応じた。
当時、シュンは風邪をこじらせたセレスティアを抱えていた。おそらく、あのとき巨大蜘蛛が本気を出していたら、シュンとて無事に帰れたかわからない。
「気にするな。俺だってあんたらに感謝してる。あんたらがディストに対抗するのを諦めてたら、俺もロニンも死んでただろうからな」
「ぴ、ぴきー」
巨大蜘蛛がなにか言いたそうに鳴き声のトーンを上げた。鋭い鎌をぶんぶん振るが、もちろんなんと言っているかはわからない。
「…………」
思わずシュンは押し黙った。
悲しい話だ。蜘蛛の様子を見るに、きっと人間の言葉は理解している。
なのにその言語を口にすることができない。
ディストから逃れ、《悪魔》の烙印を押されている彼らの苦しみは、シュンには計り知れない。
悪魔たちのためにも、俺は絶対にディストを始末しないとな……
「ねえ、あの……お兄ちゃん」
「ん?」
なぜだか頬を赤らめているロニンに、シュンは首を傾げる。
「そこは敏感な部分だから触らないで……って言ってるんだけど……わざとじゃないよね?」
「っへ?」
いまだにぶんぶん動いている巨大蜘蛛に視線を戻す。
……ああ、暴れているってそういう……
そこまで考えて、シュンはさっと手を離した。
「わっ、わっかんねーよそんなとこ! わざとじゃないからな!」
そもそもこいつって雌だったのか……って、そういうことじゃない。
「スケベ」
影でアリアンヌがなにやらボソっと呟いていた。
「なんか言ったか!?」
「なんでもありません」
相変わらずの真顔で、なにを考えているかわかりにくいが、呆れ気味であることはなんとなく伝わってきた。
「さて、寝る前にご飯にしましょう。……ロニンさん。あなた料理はできますか?」
「えっ? うん、まあ……」
「手伝ってください。より神の力が高まる食材を提供しますので」
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