引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

エルノスの描いたストーリー

 ーーセレスティアお姉ちゃん、遅いな……

 孤児院にて、ミュウはひとり、物思いに耽っていた。いつもはセレスティアがご飯をつくってくれるのだが、昨日からミュウがすべて料理を担当している。慣れない仕事なので、年下の男たちは不平不満を並べていたが。

 出かける前、セレスティアは《すぐに帰ってくる》と言っていた。国王シュンとの会話を盗み聞きした限りでは、おそらく、エルノス国王と対談に行っているはずなのだが……

 遅い。
 会談なんてものの数時間で終わるはずではないのか。なぜ日を跨ぐ必要があるのか。
 あるいは、シュン国王といけない関係になっているのか。
 そこまで考えて、ミュウはぶんぶん首を振った。ありえまい。そんなことでセレスティアが孤児院を留守にするとは思えないし、なにより国王には妻がいる。

 とすると、やっぱりなんらかの事件に巻き込まれた可能性も捨てきれない。
 エルノス国王は表向には大賛辞されている。だが何割かの国民は気づいているのだ。彼の独裁政治がいかに冷酷であるかを。

 ーーまさか、ね。
 こんなことを考えているとまたお姉ちゃんに怒られる。あなたはまだ子どもなんだから、と。

「ふわあああ……」
 大きな欠伸をして、そのままテーブルで昼寝をしようとした瞬間。
「ミュウお姉ちゃん!」
 勢いよく扉が開かれた。孤児院の男の子だ。
 ミュウは目をこすりながら、寝ぼけた声を発した。
「どうしたの。またユーリと喧嘩したの?」
「ち、違うんだよ! な、なんか、武器を持った大人たちが、いっぱいここに来てるんだ!」
「……へ?」

 ーーまさか。
 ミュウはある予感に打たれ、孤児院を飛び出した。

     ★

 ーーひどい話だ。
 魔王ロニンはしゃがみ込みながら、孤独に打ちひしがれていた。
 人間世界のトップ、国王エルノス。
 奴の残虐性は、もしかしたら前代魔王をも上回るように思えた。

 ーー私の父では適わないわけだ。
 指先を噛みながら、ロニンはひとり、そう思った。

 純粋な戦闘力はともかく、知略においては前代魔王のはるか上をいく。ロニンの知る限り、前代魔王はただ力に任せて部下を統治していただけだ。そういう意味では、エルノスは魔王より遙かに手強い相手といえる。

 ーー独房。
 王城の地下に位置するらしいそこに、ロニンは問答無用でぶち込まれた。シュンたちが何処かへと姿を消したあと、親衛隊らによって連行されたのである。

 親衛隊の連中など、束になってもロニンには適わない。だが彼女とて馬鹿ではない。ここで見境なく国王の下僕を殺してしまえば、政治的にかなりピンチになることは容易に推察できた。

 だからいまは耐えることにした。
 きっと、彼が絶妙のタイミングで助けてくれるから。彼はいつもそうだったから。
 シュンが行方不明になったことも、特には心配していない。彼なら絶対に大丈夫だと確信しているのである。

 ーーけれど。
 これはあまりに酷い仕打ちだ。

 セレスティアを誘拐した罪をロニンになすりつけ、挙げ句の果てにこんなところにぶち込むとは。ロニンが《魔王》であることを利用して、大衆の理解を得るつもりであろう。

 本当にずるい奴だ。残虐性だけを見れば、きっと前代魔王を遙かに凌ぐと思う。

「おとなしくしておけよ」
 ふいに看守に声をかけられた。重たそうな槍を携え、警戒心もあらわにロニンを見下ろす。
「まさか《魔王》を監視することになるたァな……。だがいくら貴様でも、王都の人間をみんな相手にすることはできまい」
「……ふん」
 無愛想に返事をして、そっぽを向く。

 ロニンを監視なぞ本来はなんの意味もなさない。こんな牢屋は簡単に破壊できるし、そもそも彼女には《ワープ》が使える。大人しくしといてあげているだけだ。

「……もうじき、我が軍がシュロン国に放り込まれるだろう。部下を殺されたくなければ、大人しくしておくんだな」 
 ーー我が軍……?
 ロニンは大きく目を見開いた。
「どういうことよ。まさか戦争でも仕掛けるつもりじゃ……」
「ご名答」
 看守がにんまりと笑う。
「おまえは《皇女セレスティア様》を殺したんだぜ? そんなひでえことされたからにゃ、報復するのが筋ってもんだろ」
「な、なにを……!」

 あのとき、潜んでいた魔術師は間違いなくセレスティアにも狙いを定めていた。だからシュンはそれを察し、真っ先にセレスティアを庇いにいったのだ。

 ーーそういうことか。シュロン国を潰す理由をでっち上げるために、こんなことを……!
 なんということだ。すべてエルノスの思い描いたストーリーだったというのか。


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