引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

茨の道

 召使いが持ってきた夕食は豪華そのものだった。

 大振りなトレーの上に、所狭しと皿が並べられている。なかでも目を引いたのは、メインディッシュのビーフシチューだ。ごくたまにしか姿を見せないと言われる希少な兎の肉がふんだんに使われている。さしものロニンもこれには驚いたようで、嬉しそうにシチューを頬張った。

 もちろん、他の食事も一級品だ。野菜や肉、作物、どれを取っても最高の質であることが伺い知れる。

 ーーまるで、これが最期の食事であることを示唆しているかのように。

 エルノス国王はシュンたちを厄介者と見ているに違いない。夕食と称して、毒を潜ませてくる可能性もある。
 だから一応は警戒していたのだが、食事に不審なものが盛り込まれている様子はない。第一に、セレスティアも美味しそうにご飯を口につぎこんでいる。

 ーー考えすぎか。
 多少の警戒心を解き、シュンがビーフシチューに手を伸ばそうとした瞬間。

 ふと、セレスティアがじーっとこちらの手元を見つめていることに気づいた。

「な、なんだよ。こりゃ俺のだぞ」
「……美味しそうだなと思って。ビーフシチュー」
「こんくらいの飯、おまえなら食べ慣れてんじゃねえの?」
「そうでもないわ。ここまで希少な食事はなかなか……」
「あ、っそ」

 我関せず。

「ああっ」

 シュンは無慈悲にビーフシチューを口に放り込んだ。シュンだって食べたことがないのだ、譲ってあげるほど優しくはなれない。

「あぁーうめぇ!」
 わざとらしく声をあげるシュンを、セレスティアが恨めしそうに睨む。

 そのような小さな波乱を含みながらも、三人は存分に食事を楽しんだ。それぞれのトレーの皿が空になるまで、しばし無心で夕食をかきこんでいく。

「はー、美味しかったぁ……」
 最後の一口を終えたロニンが、満足げに両手を伸ばす。

 シュンもぐいっと水を飲み干すと、珍しく素直に感想を述べた。
「うまかったな。シュロン国にはここまで豊富な食材はないし」
「うん……だけど、シュンさんなら大丈夫だよ。きっと王都にも負けない、おっきな国をつくってくれるって」
「はっ……だといいんだがな」

 人間とモンスターが共存する世界。
 誰も争うことのない、平和な世界。
 それを目指してシュロン国を作り上げた。
 けれど、世間の目は思った以上に冷ややかだった。
 シュンがモンスターと結託して王都を滅ぼそうとしているーーだなんて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。内部の事情を知らない人間ほど、そういう根も葉もない噂を立ててくる。

 だが、それについて文句を言い合っていても仕方ない。こちらが悪口を言い返せば、それで収まるような話ではないのだ。

 ゴールは遠く、そこに至る道も茨。
 だが、誰かがやらねばならない。もう二度と、二年半前のような悲しい戦いを起こさないためにも。

 そんなことを考えているうちに、セレスティアも食事を終えたらしい。上品にフォークをテーブルに置き、ナプキンで口周りを拭くと、やや暗い声で告げた。

「なんか、申し訳ないわね。うちのお父様が……」
「ほんとだよ。マジでめんどくせぇ相手だ」
「シュン君、あの、私……」
「ん?」

 そこでセレスティアはなにかを言いかけたが、すんでのところで口を閉ざし、そっぽを向いた。

「いえ、なんでもないわ。……もう夜遅いし、明日に備えて眠りましょう」

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