引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
皇女セレスティアの憂鬱
「まずは《借り》の話だけどな」
とシュンは言った。
「来年までにはすべて返済できそうだ。国民のぶんを差し引いても、大量の作物を王都に返却できる」
「うそ……早いわね」
セレスティアが目を丸くする。
借りーーこれはつまり、シュロン国が王都に対して抱えている《借金》とでも言うべきものだ。
国の建設前は、当然ながらシュロン国の大地にはなにもなかった。ただっ広い草原が広がるのみだ。
それがここまで発展できたのも、セレスティアを初めとする人間たちの功績が大きい。つまり、国を立ち上げるための初期投資を、人間たちに払ってもらったことになる。
シュンはヒモではない。
王として、いつまでも《借りっぱなし》は威厳に関わる。だからシュンは国民の生活が安定した時点で、無理のない範囲で作物を王都に届けていた。
そして、金額的にはそれが来年に帳消しになる計算である。
シュンは後頭部に両手を組み合わせ、わずかに苦笑した。
「……まあ、こりゃ俺にも予想外だったさ。こんなに早く返済できるたァな」
「……すごいわよ、本当に」
伏せ目がちに言うセレスティア。
シュロン国ーーつまり、人間とモンスターが共存する世界。
セレスティアは勉強と好奇心を兼ねて参加しただけだった。
  だけど。
その世界は、あまりに理想的だった。
王都では常にモンスターに警戒しなければならないのに、その心配がないというのだから。
しかも、そのモンスターが想像以上に良い働きをする。植物型モンスター《ネプト》もそうだが、他のモンスターも目覚ましい労働力を持ち合わせている。
人間の知力と、モンスターの労働力。
その相乗効果はまさに計り知れない。
セレスティアとて、シュロン国がここまで目覚ましく発展するとは思ってもいなかったのである。
「で、どうすんだセレスティアさんよ。あんたはまだこの国に残るのか?」
「…………」
セレスティアは数秒黙りこくったあと、小さい声でぼそっと告げた。
「……あなたは、どうなの?」
「は?」
「私が残っていてくれたほうが……嬉しい?」
「そりゃまあな。当然だろ」
「そ、そっか……」
セレスティアは非常に貴重な人材である。王都に対してコネクションを持っているだけでなく、この二年間、なんのトラブルもなく国を維持させてきた。できればいなくなってほしくない。 
だが、彼女は人間世界での《皇女》。
反して、シュロン国はまだ立ち上げたばかり。
メリットだけを考えれば、この国に残る理由はないのだ。
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