引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
凶悪な大魔王
「で、出たぞ!」
「魔王ロニンだ!」
突如ワープしてきたロニンに、騎士たちはぴたりと進軍を止めた。警戒したように武器を構え、魔王の出方をうかがっている。
「ロ、ロニン様!」
騎士たちの背後からディストの叫び声が聞こえた。だが彼も自身の戦闘に手一杯のようで、こちらに向かってくるようすはまったくない。
人間の悲鳴。
モンスターの鳴き声。
戦場はまさに地獄絵図だった。
なぜ種族が違うだけでこんなにも敵対せねばならないのか。その答えはわからない。
ーーでも、私は戦わないといけない。
ロニンも覚悟を決め、鞘から剣を抜いた。
私はモンスターの王だ。私がみんなを導かないといけない。
「待て。俺も戦う」
ふいに若い男が聞こえた。
と同時に、馬車から人間が姿を現す。 
忘れもしない。
四ヶ月前、地下の洞窟で私を本気で殺しにかかった男。
ーー勇者アルス。
勇者は優雅に地面に足を降ろすと、片腕を横方向に突き出した。 
「構えを解け。俺は奴と話がしたい」 
言われるままに、騎士たちは剣を降ろす。だが彼らの瞳には、ロニンへの絶対的な敵対心が変わらず残っていた。
勇者は真顔でロニンを見据えると、ふんと鼻を鳴らした。
「これで会うのは三度目だな……思いもよらなかったよ。まさか貴様がいつのまに魔王になっていたとはな」
「……色々あったんです」
「色々? ほう。それはあの村人とも関係があるのかな」
「……村人。おーーシュンくんのことですね」
「へえ。名で呼び合う仲か」
勇者は嫌らしく片頬を吊り上げると、右手を鞘に添え、抜刀の姿勢を取った。
「四ヶ月前に俺が言った通りだ。おまえは将来、必ず人類の敵になる。あのとき殺せていれば、とっくに人類に平和が訪れていたかもしれないものを」
ーーなにも知らないくせに、知ったような口を……!
さすがに反論しようと思ったが、すんでのところで抑え込んだ。きっとなにを言っても信じてもらえない。火に油を注ぐだけだ。
戦って、勝利し、その先になにがあるのか。
それはロニンにもわからない。ただひとつ言えることは、ここで彼女が頑張らなければ、モンスターが滅んでしまうということだ。
「いまはあの厄介な村人もいない。これは好機だ」
勇者はひとりつぶやくと、騎士たちに向けて叫んだ。
「いくぞおまえたち! 結束して魔王を倒そう!」
「はっ!」
勇者の命令に、騎士たちもいっせいに戦闘の構えを取る。
ロニンもつられて剣を抜いた。
ーーここで大勢の人間を殺せば、きっとお兄ちゃんに嫌われるだろうな。
王都にもすくなからぬ打撃があるだろうし、クローディア学園で平和に勉強することもできなくなるかもしれない。
さようなら、お兄ちゃん。
最後にちゅうができて、本当に嬉しかったです。
私は今日から、凶悪な魔王になりますーー
そのときだった。
「まてまてまてい!」
ふいに、この戦場には不釣り合いな、場違いなほど明るい声が響き渡った。
「魔王ロニンだ!」
突如ワープしてきたロニンに、騎士たちはぴたりと進軍を止めた。警戒したように武器を構え、魔王の出方をうかがっている。
「ロ、ロニン様!」
騎士たちの背後からディストの叫び声が聞こえた。だが彼も自身の戦闘に手一杯のようで、こちらに向かってくるようすはまったくない。
人間の悲鳴。
モンスターの鳴き声。
戦場はまさに地獄絵図だった。
なぜ種族が違うだけでこんなにも敵対せねばならないのか。その答えはわからない。
ーーでも、私は戦わないといけない。
ロニンも覚悟を決め、鞘から剣を抜いた。
私はモンスターの王だ。私がみんなを導かないといけない。
「待て。俺も戦う」
ふいに若い男が聞こえた。
と同時に、馬車から人間が姿を現す。 
忘れもしない。
四ヶ月前、地下の洞窟で私を本気で殺しにかかった男。
ーー勇者アルス。
勇者は優雅に地面に足を降ろすと、片腕を横方向に突き出した。 
「構えを解け。俺は奴と話がしたい」 
言われるままに、騎士たちは剣を降ろす。だが彼らの瞳には、ロニンへの絶対的な敵対心が変わらず残っていた。
勇者は真顔でロニンを見据えると、ふんと鼻を鳴らした。
「これで会うのは三度目だな……思いもよらなかったよ。まさか貴様がいつのまに魔王になっていたとはな」
「……色々あったんです」
「色々? ほう。それはあの村人とも関係があるのかな」
「……村人。おーーシュンくんのことですね」
「へえ。名で呼び合う仲か」
勇者は嫌らしく片頬を吊り上げると、右手を鞘に添え、抜刀の姿勢を取った。
「四ヶ月前に俺が言った通りだ。おまえは将来、必ず人類の敵になる。あのとき殺せていれば、とっくに人類に平和が訪れていたかもしれないものを」
ーーなにも知らないくせに、知ったような口を……!
さすがに反論しようと思ったが、すんでのところで抑え込んだ。きっとなにを言っても信じてもらえない。火に油を注ぐだけだ。
戦って、勝利し、その先になにがあるのか。
それはロニンにもわからない。ただひとつ言えることは、ここで彼女が頑張らなければ、モンスターが滅んでしまうということだ。
「いまはあの厄介な村人もいない。これは好機だ」
勇者はひとりつぶやくと、騎士たちに向けて叫んだ。
「いくぞおまえたち! 結束して魔王を倒そう!」
「はっ!」
勇者の命令に、騎士たちもいっせいに戦闘の構えを取る。
ロニンもつられて剣を抜いた。
ーーここで大勢の人間を殺せば、きっとお兄ちゃんに嫌われるだろうな。
王都にもすくなからぬ打撃があるだろうし、クローディア学園で平和に勉強することもできなくなるかもしれない。
さようなら、お兄ちゃん。
最後にちゅうができて、本当に嬉しかったです。
私は今日から、凶悪な魔王になりますーー
そのときだった。
「まてまてまてい!」
ふいに、この戦場には不釣り合いな、場違いなほど明るい声が響き渡った。
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