引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

最悪の入学式

 ーー手遅れだったか。

 路地で倒れる騎士たちを見下ろしながら、シュンは両拳を握り締めた。気づけば、にわか雨が降り始めている。

 騎士たちにはかすかな呼吸がある。死んではいない。優しいロニンのことだ、絶命まではできなかったのだろう。

 だが。
 戦いの最中、彼女はいったいなにを思っただろうか。

 騎士の適正試験において、道具のごとくモンスターを使役する人間。
 戦争を優位に進めようと、ロニンを人質に取ろうとした勇者たち。

 そのときに彼女が抱いたであろう虚しさは、シュンには察してあまりある。

「ちょっと、嘘でしょ?」

 背後から女の声がした。
 振り返ると、皇女セレスティアの姿が見えた。シュンのあとを走ってきたらしい。

 セレスティアは気絶している騎士たちをたっぷり数秒間見下ろし、息を切らしながら言った。

「あんなチビっ子に……城の騎士たちは負けたっていうの?」

「馬鹿野郎が。ロニンをただのモンスターだと思うなよ」

「え……でも、試験では判定Eだって……」

 セレスティアが口ごもった瞬間。

「う……ううっ……」
 騎士のひとりが呻き声をあげ、目を覚ました。彼は虚ろな瞳をしばらくさまよわせたあと、視線をセレスティアに固定した。
「セ……セレスティア様……申し訳ございません……。あの女、予想以上に強かったです」

 セレスティアは悲壮な表情でしゃがみこむと、騎士の額に手を当てた。

「ごめんなさい。私の判断が甘かったばかりに……」

「い、いえ……。それよりもまずいです……。あの女は……魔王本人でした……」

 どこかで、大きな雷がひとつ、落ちた。 

 セレスティアは呆けたようにシュンを見上げると、もう一度騎士に顔を向けた。

「魔王本人って……どういうこと?」

「あの女がみずからそう語っていました……。そして、モンスター側も戦う準備を整えると……」

「そ、そんな……」

「お気をつけください……。おそらく、魔王は勇者殿よりもはるかに強いと思われます……」

 ーーなんという最悪の結末か。
 雨に打たれながら、シュンは空を見上げた。

 記念すべき学園の入学式に、こんな大波乱が起きようとは。下手をすれば、授業を一度も受けることなく王都が滅んでしまう。

「シュン君……お願い……」

 セレスティアが泣き顔でシュンを見上げた。 

「人間を守って……。魔王を、倒して……」

「…………ああ。人間は守ってやる」

 固く目をつぶり、シュンは小さく答えた。

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