引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
初めての怒り
シュンにはわからなかった。
自分はいったいどうすればいいのか。
セレスティアの言うように、モンスターと敵対するか。
それともロニンの肩を持つか。
どの選択が正しいのか。
そんなこと、たかが学生にわかるわけがない。いくら考えても、袋小路に追い込まれる気がする。
これまでのように、めんどくさいの一言で片づけられれば楽だ。
でも、いまのシュンにそれはできなかった。ロニンの寂しそうな後ろ姿を見てしまったから。
黙りこくるシュンを、セレスティアは真っ直ぐな瞳で見据えた。
「アルスから聞いたわ。あなた、家に引きこもるのが好きなんだって?」 
「……それが?」
「私に協力してくれたら、学生になんかならなくても、豪華な家を譲ってあげられる」
「…………」
「ご飯も飲み物も届けさせる。なにせ魔王を倒してくれるんだものね。どう、悪くないんじゃない?」
たしかに、シュンにとってこの上なく魅力的な申し出だった。
いくら魔王に就任したといえど、ロニンはまだまだ赤子のようなもの。シュンがその気になれば、ロニンなぞ一瞬で塵にできる。
そう、たった一瞬だ。
それだけの時間を費やすだけで、念願の引きこもり生活を享受することができる。
食物を家に届けてくれるのであれば、まさに外出の必要さえない。文字通り引きこもっているだけでいいのだ。
だけど。
だけど……
「断る」
シュンは強固たる決意を胸に、セレスティアの誘惑を真っ正面から拒否した。
「俺は俺のやりたいようにやる。おまえの誘いには乗らん」
「……そう。残念ね」
セレスティアは一瞬だけ目を伏せ、続けて言った。
「でも、あなたがいなくてもこの好機を逃すわけにはいかない。明日には大勢の騎士が魔王城に攻め込むでしょう」  
「なんだって……!」
シュンは思わず立ち上がった。
明日。
いまがチャンスなのはわかるが、いくらなんでも急すぎる。 
シュンのそんな心境を読んだかのように、セレスティアがうふふと笑い出した。
「あなたがもうひとつの好機を持ってきてくれたのよ。この王都にね」
「好機だと……?」
「ロニン。聞けばあの子、魔王の娘だというのにE判定だったみたいね。ーー彼女、この上なく素晴らしい人質じゃなくて?」
「てめえ!」
知らず知らずのうちにシュンはセレスティアの胸ぐらを掴み上げていた。 
「私じゃないわ。これは勇者さんの発案よ。彼女はたいして強くないから、隙を見て捕らえようって」
「ぐっ……!」
なにを馬鹿な。そこいらの人間にロニンを捕らえることなんてできやしない。
だが、彼女の精神はいま非常に不安定だ。
このうえまた見ず知らずの人間に襲われでもしたらーー
気づいたとき、シュンは孤児院を出て、ひとり、走り出していた。
俺がこんなに熱くなるのは初めてかもしれないーーふと、心の片隅でそう思った。
自分はいったいどうすればいいのか。
セレスティアの言うように、モンスターと敵対するか。
それともロニンの肩を持つか。
どの選択が正しいのか。
そんなこと、たかが学生にわかるわけがない。いくら考えても、袋小路に追い込まれる気がする。
これまでのように、めんどくさいの一言で片づけられれば楽だ。
でも、いまのシュンにそれはできなかった。ロニンの寂しそうな後ろ姿を見てしまったから。
黙りこくるシュンを、セレスティアは真っ直ぐな瞳で見据えた。
「アルスから聞いたわ。あなた、家に引きこもるのが好きなんだって?」 
「……それが?」
「私に協力してくれたら、学生になんかならなくても、豪華な家を譲ってあげられる」
「…………」
「ご飯も飲み物も届けさせる。なにせ魔王を倒してくれるんだものね。どう、悪くないんじゃない?」
たしかに、シュンにとってこの上なく魅力的な申し出だった。
いくら魔王に就任したといえど、ロニンはまだまだ赤子のようなもの。シュンがその気になれば、ロニンなぞ一瞬で塵にできる。
そう、たった一瞬だ。
それだけの時間を費やすだけで、念願の引きこもり生活を享受することができる。
食物を家に届けてくれるのであれば、まさに外出の必要さえない。文字通り引きこもっているだけでいいのだ。
だけど。
だけど……
「断る」
シュンは強固たる決意を胸に、セレスティアの誘惑を真っ正面から拒否した。
「俺は俺のやりたいようにやる。おまえの誘いには乗らん」
「……そう。残念ね」
セレスティアは一瞬だけ目を伏せ、続けて言った。
「でも、あなたがいなくてもこの好機を逃すわけにはいかない。明日には大勢の騎士が魔王城に攻め込むでしょう」  
「なんだって……!」
シュンは思わず立ち上がった。
明日。
いまがチャンスなのはわかるが、いくらなんでも急すぎる。 
シュンのそんな心境を読んだかのように、セレスティアがうふふと笑い出した。
「あなたがもうひとつの好機を持ってきてくれたのよ。この王都にね」
「好機だと……?」
「ロニン。聞けばあの子、魔王の娘だというのにE判定だったみたいね。ーー彼女、この上なく素晴らしい人質じゃなくて?」
「てめえ!」
知らず知らずのうちにシュンはセレスティアの胸ぐらを掴み上げていた。 
「私じゃないわ。これは勇者さんの発案よ。彼女はたいして強くないから、隙を見て捕らえようって」
「ぐっ……!」
なにを馬鹿な。そこいらの人間にロニンを捕らえることなんてできやしない。
だが、彼女の精神はいま非常に不安定だ。
このうえまた見ず知らずの人間に襲われでもしたらーー
気づいたとき、シュンは孤児院を出て、ひとり、走り出していた。
俺がこんなに熱くなるのは初めてかもしれないーーふと、心の片隅でそう思った。
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