引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
小難しい話はナシだ
魔王城へはなんの苦難もなく到着した。
なにしろロニンもディストもいる。一般の人間では知り得ないような抜け道を通り、ものの数時間でたどりついた。
もちろん、三人のすさまじい《俊敏性》の恩恵も大きいが。
かくして、三人はいま、もの寂しい森林にただずんでいた。
すべての樹木が天を貫かんばかりに巨大である。紫色の空を見上げても、木の天辺は窺えない。
いずこからか、鳥の不気味な声も聞こえてくる。ロニンやディストにとっては慣れた土地だろうが、シュンにとっては気持ちの悪い場所でしかなかった。
「……なんか、やな場所だな」
大量の落ち葉の上を歩きながら、シュンは呟いた。サクサクという小気味の良い音が響きわたる。
「……私が《人間の世界っていいね》って言ったの、これでわかったでしょ?」
隣のロニンが真顔で言う。
「モンスターだって、できることならもっと良いとこに住みたいよ。だけど……」
そこでロニンは言葉を区切り、うつむいた。
人間とモンスターの闘争が続いて久しいが、情勢は確実に人間側に傾きつつある。
その功績の多くが勇者アルスによるものだ。
領土を人間に奪われ続け、ついに魔王城周辺だけがモンスター安住の地になってしまった。
だからこそ、モンスターたちはいまピリピリしているのだ。逼迫している現状で、強者でない者に魔王を任せるわけにはいかないと。
暗い気分になりかけたロニンの肩を、シュンはぽんと叩いた。
「まあ、いまは小難しい話はナシだ。とりあえず、魔王たちを見返すことを考えようぜ」
「う、うん……」
だけど。
ロニンはどうしても懸念せずにはいられない。
もし私の実力が認められたとして、あなたはどうするの。
魔王城のなかに入った後じゃ、きっと誰も逃がしてくれない。
特にいまは、人間への嫌悪感が高まっているというのに。
それを告げようとしたが、シュンの場違いな明るさに負け、結局なにも言えなかった。
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