引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

汚いゴブリン

 何分走っただろうか。

 駆け抜けながら、シュンはちらと背後を振り返った。

 生まれ故郷たる村はもう見えない。

 周囲に広がるのは、無限に広がる草原のみ。
 背の低い芝や、色とりどりの花が地平線まで続いている。
 空を見上げると、ぎらぎらと照りつける太陽。

 美しい場所だ。
 いまからここを血に染めるのは惜しい。

 だが仕方あるまい。あと何分かもすれば、モンスターの大群がここを訪れるだろう。 

 シュンはぴたりと足を止め、ふうと息を吐いてみせた。
 彼にとって、村が見えなくなる距離まで走ることは造作もないことだ。

 ちょっとは疲れてしまったが、息切れもしてないし、このくらいは屁でもない。

 ーー俺はなにしてるんだろうな。
 ロニンとはたった一週間前に出会ったばかりだ。それなのに、俺がここまでするなんて。

 もう辞めたはずだった。
 他人に興味を持つことなど。
 自分が傷つくだけだから。他人を信じて良いことなんてなかったから。

 そこまで考えて、シュンはふっと笑った。

 また昔のことを思い出してしまった。最近多いな。
 余計なことを考えてはいけない。いまはやらねばならないことがある。


 数分後。

 ザッザッザというおびただしい足音とともに、近づいてくる気配があった。それは確実に、シュンの立つ地点へ近づいてくる。

 やがて何十体ーーいや、何百体ものモンスターがこちらに進軍してくるのが見えた。

 そのほとんどがゴブリンだ。
 小さな身体に反して、でっぷりと膨れ上がった腹部。焦げ茶色の肌はどことなく不潔そうで、片手に大きな金槌を携えている。
 ゴブリン。職業剣士であればたいしたことのない相手だ。

 だが、こと村人は違う。
 村人というのは、いわば《戦いの才能》から見放された雑魚だ。モンスター中で最弱のゴブリンですら、一対一でも勝てない。

 そんなモンスターを、百体近くも派遣させてくるとは。

 ーー完全に村を潰すつもりで来やがったな……
 シュンは小さく舌打ちをした。

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