ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
38話ー企てー
《首尾はどーお?》
「サイコーに上手くいったよクソッタレ。おかげで完全に結月さんには敵視されたな……。最悪だよ、いい女だったのに」
《それは良かったわ。彼女の企業連上層部への不信感は煽れるだけ煽っておかないとねぇ》
「くだらない仕込みだよ。確かに彼女は強いが、キーになる程とは思えないね」
《どうかしら。……まあその様子じゃあ、体の調子も良さそうねぇ》
「今の所なんの問題もないね。言ったろ、俺なら受け入れられるって」
《あまり調子に乗らないことね。あくまでもあなたに渡したのは完成品一歩手前のもの。上手く行く保証はないわ》
先ほど静流と話していた伊庭は右耳に仕込んだ通信機を使用し、何者かと話していた。
相手は甘ったるい声を出す女性であるが、それ以外のことは不明である。
伊庭の通信相手だ。普通なら限られている。企業連の者か、GNCの者か。
 公園を抜け、留めてあったエアバイクに跨りエンジンをかけた。
「まあ、期待しておきなよ。僕は適合者だ。あいつがそうで、僕がそうじゃないわけがないだろ」
そう言って一方的に通信を切り、車体を浮かせてビルとビルの狭間めがけて飛び立って行った。
……。
「……お金がいいから軽はずみな気持ちで受けてしまったけれど。まさか採掘シャフト内の任務依頼だなんて」
「なにかまずかったか」
「いえ、シャフト内の任務ならあなた以上の適任はいないわ。でも今のシャフト内は少し……そう。不安な要素が多すぎてね」
夜刀神PMC事務所に到着し、先ほど受けてきた任務の概要について葉月と話していた。
今ですらこの落ち着きようだが、ほんの少し前までは大騒ぎだったのだ。
それもそのはず。
雛樹はここに入ってきた時、首から思いっきり血を流して真っ青な顔をしていたのだから。
「ともかく、面子が厚いのはよかったわ。それだけ危険な任務になるかもしれないってことだけど」
ここ最近も法人相手の危険な任務は増えてきていたが、安く小さな任務も聞き入れてくれると、個人の依頼者が来圧倒的に多い。
そういった任務は大抵が軽く、よく聞く行方不明になったペットを探してくれだの、とある組織の内情調査だのといったことも依頼されていた。
喧嘩の仲裁をして欲しいなどという依頼が来た時はさすがに目を丸くしたものだが。
まあ、それはそれとしてだ。いつもの勤務態度と随分と違う一人の様子に、葉月は怪訝な顔をしながら言う。
「あの、ガーネットさん?」
「……なによぅ」
「いつもそんな距離感だったっけ」
「……」
今現在、ガーネットはソファーに座る雛樹の隣で同じように座っている。
いつもなら別のソファーで仰向けかうつ伏せで寝っ転がり、あられもない姿をさらしているのだが……。
今日は姿勢良く座り、かつ雛樹の太ももに自分の太ももを、肩や腕をぴったりとくっつけるように座っている。
言うなれば距離感がやたら近いのだ。
近いうえ、雛樹のジャケットの右裾を膝の上で握っていた。
不自然なほど無表情であり何を考えているかわからない……というより意図的にわからないようにしているようだ。
「さっきから離れないんだ。結構血が出たからびっくりしたんだろ、な」
「違うし。別にびっくりしてないし。そもそもしどぉが悪くてあたし悪くないし」
悪いのは自分ではないが、突き放されるのは怖いためとにかく離れたくないという意思の表れなのだろうか。
トイレに行こうと立つ雛樹のジャケットの裾を握り締めそのままぴったりついて行き、挙句には一緒にトイレに入ろうとするほどの徹底振りである。
さすがに雛樹に追い出され、トイレの扉に背中をつけてしゃがみこみつつ待っていたが。
「そんなにべったりなのに今回の任務にはついていかないと?」
「……」
「そうみたいだ。採掘シャフトに入りたくないんだと」
「サイコーに上手くいったよクソッタレ。おかげで完全に結月さんには敵視されたな……。最悪だよ、いい女だったのに」
《それは良かったわ。彼女の企業連上層部への不信感は煽れるだけ煽っておかないとねぇ》
「くだらない仕込みだよ。確かに彼女は強いが、キーになる程とは思えないね」
《どうかしら。……まあその様子じゃあ、体の調子も良さそうねぇ》
「今の所なんの問題もないね。言ったろ、俺なら受け入れられるって」
《あまり調子に乗らないことね。あくまでもあなたに渡したのは完成品一歩手前のもの。上手く行く保証はないわ》
先ほど静流と話していた伊庭は右耳に仕込んだ通信機を使用し、何者かと話していた。
相手は甘ったるい声を出す女性であるが、それ以外のことは不明である。
伊庭の通信相手だ。普通なら限られている。企業連の者か、GNCの者か。
 公園を抜け、留めてあったエアバイクに跨りエンジンをかけた。
「まあ、期待しておきなよ。僕は適合者だ。あいつがそうで、僕がそうじゃないわけがないだろ」
そう言って一方的に通信を切り、車体を浮かせてビルとビルの狭間めがけて飛び立って行った。
……。
「……お金がいいから軽はずみな気持ちで受けてしまったけれど。まさか採掘シャフト内の任務依頼だなんて」
「なにかまずかったか」
「いえ、シャフト内の任務ならあなた以上の適任はいないわ。でも今のシャフト内は少し……そう。不安な要素が多すぎてね」
夜刀神PMC事務所に到着し、先ほど受けてきた任務の概要について葉月と話していた。
今ですらこの落ち着きようだが、ほんの少し前までは大騒ぎだったのだ。
それもそのはず。
雛樹はここに入ってきた時、首から思いっきり血を流して真っ青な顔をしていたのだから。
「ともかく、面子が厚いのはよかったわ。それだけ危険な任務になるかもしれないってことだけど」
ここ最近も法人相手の危険な任務は増えてきていたが、安く小さな任務も聞き入れてくれると、個人の依頼者が来圧倒的に多い。
そういった任務は大抵が軽く、よく聞く行方不明になったペットを探してくれだの、とある組織の内情調査だのといったことも依頼されていた。
喧嘩の仲裁をして欲しいなどという依頼が来た時はさすがに目を丸くしたものだが。
まあ、それはそれとしてだ。いつもの勤務態度と随分と違う一人の様子に、葉月は怪訝な顔をしながら言う。
「あの、ガーネットさん?」
「……なによぅ」
「いつもそんな距離感だったっけ」
「……」
今現在、ガーネットはソファーに座る雛樹の隣で同じように座っている。
いつもなら別のソファーで仰向けかうつ伏せで寝っ転がり、あられもない姿をさらしているのだが……。
今日は姿勢良く座り、かつ雛樹の太ももに自分の太ももを、肩や腕をぴったりとくっつけるように座っている。
言うなれば距離感がやたら近いのだ。
近いうえ、雛樹のジャケットの右裾を膝の上で握っていた。
不自然なほど無表情であり何を考えているかわからない……というより意図的にわからないようにしているようだ。
「さっきから離れないんだ。結構血が出たからびっくりしたんだろ、な」
「違うし。別にびっくりしてないし。そもそもしどぉが悪くてあたし悪くないし」
悪いのは自分ではないが、突き放されるのは怖いためとにかく離れたくないという意思の表れなのだろうか。
トイレに行こうと立つ雛樹のジャケットの裾を握り締めそのままぴったりついて行き、挙句には一緒にトイレに入ろうとするほどの徹底振りである。
さすがに雛樹に追い出され、トイレの扉に背中をつけてしゃがみこみつつ待っていたが。
「そんなにべったりなのに今回の任務にはついていかないと?」
「……」
「そうみたいだ。採掘シャフトに入りたくないんだと」
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
361
-
-
0
-
-
4503
-
-
59
-
-
439
-
-
841
-
-
23252
-
-
353
-
-
111
コメント