ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

第3節9部ー上陸開始ー

 雛樹やステイシスが腹ごなしをしている中、ドミネーター制圧部隊はすでに島へ上陸し、偵察を始めていた。島の海抜はそれほど上昇してはいなかった。この島自体に深刻なグレアノイド侵食は無い。
 その結果、若葉マーク付き二脚機甲部隊は安堵していた。これならば対処不可能な脅威は発生し得ないだろうと。

《こちら西海岸Bブラボーゼロワン—01。付近にドミネーターの反応はない》
東海岸Cチャーリー-01。こちらも脅威は見当たらない。しかし、凄まじい量の対空火器だな。これが全て稼働しているかと思うと肝が冷える》
南海岸Dデルタ-01です。ドミネーターの反応はありませんが、対空火器に混じって陸戦用旧型粒子砲が見えます。スポットしました、東雲オペレーター、粒子砲の解析は可能でしょうか?》
「はいはーい、任せてー」

 待機している静流とは違い、オペレーターとして参加している東雲姫乃は各制圧部隊のオペレーションを担当していた。
 送られてきたスポットデータを元に、その旧型粒子砲を解析していく。

「収束率も粒子量もそれほど高くない旧式だけど……プログラムが厄介かな。有効射程内に入った物体を感知して自動迎撃するものなんだけど、旧式だからか、グレアノイド感知じゃなくて、動体感知型だわ。おおよそドミネーターの体長を持つものに反応するタイプ。システムはオンライン、あなたたちの機体装甲じゃ抜かれるわ。射程内には絶対に入らないこと」

 その旧式粒子砲は、どの海岸側でも発見された。ドミネーター並みの大きさのものを自動感知して迎撃するという、随分大味なプログラムのせいで二脚機甲部隊は下手に島の中心部へ進行できなくなった。

 そこで、二脚機甲部隊ではなく、輸送部隊に指令が下された。

“物資の輸送を開始せよ。そして、島中央にある火器管制塔へ向かい、対空砲、粒子砲のシステムを一時的にシャットダウンさせろ”

「オイオイ、結局歩兵部隊頼りになってんじゃねェか。つかえねェな、オモチャ共はよ」
「言ってやるなよRB。事前情報に粒子砲のデータはなかったんだぜ。探知されない俺らが行くのは当たり前だろが」

 第一護衛部隊が南海岸へ到着。物資を乗せた小型コンテナを海岸へ下ろし、集落を目指すことになった。

《第2輸送護衛部隊、上陸を開始してください》

 そのアナウンスが流れ、雛樹、ステイシスは部隊長に続いて上陸。小型コンテナを囲むように、彼らを含めた護衛部隊が展開した。
 目と鼻の先には、先に上陸していた二脚機甲の姿が見える。その旧型粒子砲とやらのせいで立ち往生しているようだ。

「ぶっ壊せばいいんじゃないのぉ?」

 行く手を阻むものなら破壊すればいいというステイシスの意見だったのだが、雛樹はそれを否定した。
 一応は島の防衛兵器なのだ。いくら邪魔だからといって破壊することなどできるはずもない。

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