ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

19話ー言いつけー

「こぉいうときの盾にされちゃうのは企業連傘下に入らないセンチュリオンテクノロジーの弱いところよぉ。護る必要がないものぉ」

「傘下企業じゃなければ容赦なくスケープゴートにするのか……」

「特に企業連とセンチュリオンテクノロジーとは折り合い悪いわよぉ。この報道の裏でかなりの情報とお金が動いてる筈ぅ」

「その情報やら金やらの手綱を握ってるのが誰かわかるか?」

「んぅ……えーっとぉ」

 ガーネットは人差し指で雛樹の太ももをとんとんと叩きながら自分の頭の中を探り……やがてその指を止め。

「オスヴァルト情報局長よぉ」

「オスヴァルト……」

「お父様と仲が悪かったから覚えてるわぁ。胡散臭いジジィー」

「……なるほどな」

 そう言いながら、雛樹は傍にあったガスマスクを持ち上げた。
 黒くて無骨な、この都市からすれば時代遅れでただ姿を隠すことにしか役に立たない被り物。

「変なこと考えちゃダメよぉ? お父様にあのいけ好かない剣の男がいるように、オスヴァルトにも厄介なのが数人ついてるからぁ」

「どの程度だ?」

「丸腰、軽装備ならしどぉの敵じゃないわぁ。でも、しどぉはイバとかいうクソヤロぉにしてやられたんでしょぉ?」

「海上都市装備か……」

「特にいいやつ与えられてるわよぅ? 情報局長クラスだもの、当たり前よねぇ」

 そう、今現在の雛樹の課題として、海上都市に配備されているオーバーテクノロジー級の携行兵器にどう対処すればよいかが挙げられる。

 自分の命を狙ってきていた伊庭にもそれでしてやられたのだ。

「……」

「……だめよぉ?」

「へっ?」

「しどぉと一緒にいてわかったことひとつぅ。意外と考えてることわかりやすぅー」

 それはお前が敏いだけだと言ってやったが、ガーネットは髪で疑問符を形作り、膝の上でむず痒そうに動いただけだった。
 器用なことをするものだ。

「とにかくしどぉはあんまりあの子達の力を使わないことぉ」

「多少無理しないことにはなぁ……」

「見たでしょぉ? あんまり使いすぎるとどうなるか。それにぃ……」

「え、なになにどうしたよ」

 ガーネットは起き上がって雛樹の右腕を抱くようにしたあと、その腕に頬を擦り付け……。

「やっぱり、ここの変異が中心よぉ? 本当にダメだからぁ。あたしだってしどぉの言いつけ通りいい子にしてるんだから、しどぉもあたしの言うこときくことぉ」

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