ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
ー過去の暴走ー
ほんの数分の間に、あらゆる兵器の攻撃を通さない隔壁が破壊されている。その脅威たるや、上位のドミネーターに匹敵、もしくはそれ以上のものがあるのだ。
施設の研究員の誰しもがひどく取り乱しながらも最善を尽くしながら、ある一人の男の到着を待っていた。
【遅れてすまない】
【高部局長!】
制御室に入るなり開口一番、謝罪の言葉を口にした高部に対し研究員達はめっそうもない、助かりましたと返答する。
高部はその返答を聞き流しながらコンソールの傍まで歩み寄り、第三隔離室との通信回線を開いた。
その瞬間、響き渡ったのは暴走するステイシスの叫び声。
それこそ、人間の声帯からは出ないのではないかというほどの叫びだった。
そのつぎの瞬間、凄まじい音とともに第三隔離室の隔壁が破壊された音が入る。
その破砕音にひと段落ついたところで、高部は極めて冷静にステイシスに問いかけた。
【アルマ、私だ。聞こえているか、アルマ】
【グッ……ぅぅうう……】
今までどの研究員の呼びかけにも反応を示さず、ただただ暴れ続けていたステイシスが高部の言葉に反応を示し、頭を抱えた。
それまで周囲に展開していたグレアノイドの光の槍その全てを消滅させたところで再び高部が呼びかけた。
【今日はどうした? 薬が合わなかったか? それとも体を弄られたのが気に食わなかったのか? 君がひどく暴れたせいでみな困っているぞ】
なんとも頼りのない呼びかけ方だが、これでいい。これでなくてはならなかった。
ステイシスにとって、今かろうじて天秤を安定させる要素は普段通りの高部総一郎……お父様の声なのだから。
だが、その声を聞いたステイシスは手近にあった隔離壁の残骸に攻撃を加えて粉々にした。
【オトウ様ァ……】
【そうだ、私だ。アルマ】
【ゥゥグゥゥ……どこぉ、どこに……】
頭を抱えてうずくまってしまったアルマは、うわ言のように言葉を繰り返す。
鎮静ガスを大量に吸い込んでいるはず。いつもならばここである程度大人しくなってくれたはずなのだが、まだ様子がおかしい。
それを不可解に思った高部が一人の研究員に問う。
【先刻の調査で投与した薬剤は資料どおりのものだったか?】
【いえ……その。つい先日開発されたグレアノイド因子活性剤の臨床試験を急遽……】
【馬鹿な。あれを投与する許可は与えていなかったはずだ】
その研究員に詰め寄り、問い正そうとした高部ではあったが……。
【ごめんよぉ高部ちゃん。活性剤投与の臨床結果を出せって上がうるさくて】
【雨霧主任……。勝手なことをされては困る。それを投与したことによって今回どれだけの死人が出たかわかっているのか】
【もちろんわぁかってるよん。目の前で見てたんだから、さ!】
こんな状況にもかかわらずふざけた口調の研究所女性主任が肩をすくめながら壁にもたれかかっている。
高部は腹の底から湧き上がる怒りを堪え、あくまでも冷静に現状を見た。
今、ここで言い争っている場合ではない。
【うあ……アァアアァア】
【まずいな……】
高部はおもむろに通信機を取り出し、最終隔離室にいるであろう人物に言った。
【すまないRB。彼女を頼めるだろうか】
《オーライ、仕方ねェなホント。まあ厄介ごとは慣れっこだ。任せときな》
施設の研究員の誰しもがひどく取り乱しながらも最善を尽くしながら、ある一人の男の到着を待っていた。
【遅れてすまない】
【高部局長!】
制御室に入るなり開口一番、謝罪の言葉を口にした高部に対し研究員達はめっそうもない、助かりましたと返答する。
高部はその返答を聞き流しながらコンソールの傍まで歩み寄り、第三隔離室との通信回線を開いた。
その瞬間、響き渡ったのは暴走するステイシスの叫び声。
それこそ、人間の声帯からは出ないのではないかというほどの叫びだった。
そのつぎの瞬間、凄まじい音とともに第三隔離室の隔壁が破壊された音が入る。
その破砕音にひと段落ついたところで、高部は極めて冷静にステイシスに問いかけた。
【アルマ、私だ。聞こえているか、アルマ】
【グッ……ぅぅうう……】
今までどの研究員の呼びかけにも反応を示さず、ただただ暴れ続けていたステイシスが高部の言葉に反応を示し、頭を抱えた。
それまで周囲に展開していたグレアノイドの光の槍その全てを消滅させたところで再び高部が呼びかけた。
【今日はどうした? 薬が合わなかったか? それとも体を弄られたのが気に食わなかったのか? 君がひどく暴れたせいでみな困っているぞ】
なんとも頼りのない呼びかけ方だが、これでいい。これでなくてはならなかった。
ステイシスにとって、今かろうじて天秤を安定させる要素は普段通りの高部総一郎……お父様の声なのだから。
だが、その声を聞いたステイシスは手近にあった隔離壁の残骸に攻撃を加えて粉々にした。
【オトウ様ァ……】
【そうだ、私だ。アルマ】
【ゥゥグゥゥ……どこぉ、どこに……】
頭を抱えてうずくまってしまったアルマは、うわ言のように言葉を繰り返す。
鎮静ガスを大量に吸い込んでいるはず。いつもならばここである程度大人しくなってくれたはずなのだが、まだ様子がおかしい。
それを不可解に思った高部が一人の研究員に問う。
【先刻の調査で投与した薬剤は資料どおりのものだったか?】
【いえ……その。つい先日開発されたグレアノイド因子活性剤の臨床試験を急遽……】
【馬鹿な。あれを投与する許可は与えていなかったはずだ】
その研究員に詰め寄り、問い正そうとした高部ではあったが……。
【ごめんよぉ高部ちゃん。活性剤投与の臨床結果を出せって上がうるさくて】
【雨霧主任……。勝手なことをされては困る。それを投与したことによって今回どれだけの死人が出たかわかっているのか】
【もちろんわぁかってるよん。目の前で見てたんだから、さ!】
こんな状況にもかかわらずふざけた口調の研究所女性主任が肩をすくめながら壁にもたれかかっている。
高部は腹の底から湧き上がる怒りを堪え、あくまでも冷静に現状を見た。
今、ここで言い争っている場合ではない。
【うあ……アァアアァア】
【まずいな……】
高部はおもむろに通信機を取り出し、最終隔離室にいるであろう人物に言った。
【すまないRB。彼女を頼めるだろうか】
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