ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
ー触れぬ赤ん坊ー
生クリームの山が巻かれたクレープを右手、財布を左手に持ったガーネットがしたり顔で帰ってきて雛樹の膝の上にその小さなお尻を乗せた。
「かんたんだったわよぅ?」
「よく言うな。財布ごと出すか普通……」
「んん、なによう」
膝の上に乗ったガーネットの後ろから脇に手を差し込み、持ち上げて隣に下ろした。
少しばかりくすぐったそうな仕草をしたガーネットだったが、座り心地のいい椅子から降ろされてぶすくれている。
だが、クレープを一口、二口食べるとすぐに機嫌を直してしまった。
「ねえしどぉ、これおいしい」
「俺も見たことのない食べ物だな」
「食べるう?」
「ん、じゃあ一口もらおうかな」
と、ガーネットからクレープを手渡され、少しだけ口にすると生クリームの甘みとコク、薄焼きクレープ生地の香ばしさが口いっぱいに広がった。
デザートとしてかなり完成されたおいしさと言えるだろう。このまま食べていたい衝動に駆られたが、これはガーネットのものだ。
すぐに返すと、ガーネットに事細かに感想を求められた。
私が目をつけたものも馬鹿にできないでしょおと自慢げに。
と、大きなクレープをペロリとたいらげたガーネットは口の中の甘さの余韻に浸りながら、ふと隣のベンチに来た夫婦に目を向けた。
夫の方が押しているのは最新式の浮遊型ベビーカーだろうか。
ガーネットが興味を持ったのは、そのベビーカーの中身の方だ。
「ふう、今日はすごしやすい天気でよかったな」
「そうね。今くらいの季節が丁度いいかも。この子も……わっ」
仲睦まじい夫婦の会話をぶった切ったのは、いつの間にかベビーカーに接近していたフードとマントで身を隠した何者かだった。
突然不審者が来たものだから、夫婦はどう対応していいかわからず、戦々恐々としている。
「ちっちゃぁい。なにこれ、すっごいちっちゃいわよぉ?」
聞こえてきたのは、屈託のない綺麗な少女の声。顔を上げ、太陽光に照らされたフードの中には、褐色赤目の美しい顔。
その発言にすっかり毒気を抜かれてしまった若夫婦は笑顔を向け……。
「ついこないだ生まれた私たちの赤ちゃんなの。かわいいでしょう?」
「赤ちゃん……。へぇ、噂には聞いてたけど、本当に小さいのねぇ」
と、母親が赤ん坊を抱き上げてよく見えるようにガーネットに近づけた。
先ほどまで気持ち良く寝ていたのに抱き上げられたものだから、少しばかり赤ん坊はぐずってしまった。
しかし、ガーネットの好奇心まみれの表情を見るなりキョトンとしてしまっていた。
その小さな手をガーネットに向かって伸ばそうとしてきたところ……。
「だめよぉ。あたしに触ると真っ黒になっちゃうわよぅ」
と、自ら身を引いて赤ん坊の手から離れてしまった。
本当はその小さな手を握ったり、マシュマロのような頬をつついたりつねってみたりしたいのだが。
それはできない。
「しどぉも昔はこれくらい小さかったのかしらぁ。不思議ぃ」
人懐こい赤ん坊のようでしきりにガーネットに向かってその小さな両手を伸ばしてくる。
その愛らしい様子に、ガーネットはなにかあたたかい感情が胸に芽生えるのを感じ……。
「ねぇ。赤ちゃんってどうやって作るのぉ?」
と、いう夫婦両名が戸惑ってしまうような質問を投げかけてしまった。
しかしガーネットからすれば知らないことを純粋に聞いているだけであるため、その戸惑いの意味がわからなかった。
その純粋な質問に何とかして答えなければと考えた母親の方が、ガーネットに言った。
「あなたが一生一緒にいたいなって思える男の人を見つけて……お互い愛し合っていれば自然に来てくれるものなのよ。好きな人はいるのかな?」
「好きな人ぉ?」
と、ガーネットは後ろでうたた寝している男に視線を移し……。
「唯一、あたしと一緒に歩ける男ならいるけどぉ」
「ふふ。私もきみくらいの時はそういったこと、よくわからなかったかな。いつか、必ずわかる時が来るよ」
「ふぅん……たしかによくわかんないわぁ。ねー」
「あぶ」
ガーネットが赤ん坊に同意を求めると、それに応じるように声を出してもらえた。
「かんたんだったわよぅ?」
「よく言うな。財布ごと出すか普通……」
「んん、なによう」
膝の上に乗ったガーネットの後ろから脇に手を差し込み、持ち上げて隣に下ろした。
少しばかりくすぐったそうな仕草をしたガーネットだったが、座り心地のいい椅子から降ろされてぶすくれている。
だが、クレープを一口、二口食べるとすぐに機嫌を直してしまった。
「ねえしどぉ、これおいしい」
「俺も見たことのない食べ物だな」
「食べるう?」
「ん、じゃあ一口もらおうかな」
と、ガーネットからクレープを手渡され、少しだけ口にすると生クリームの甘みとコク、薄焼きクレープ生地の香ばしさが口いっぱいに広がった。
デザートとしてかなり完成されたおいしさと言えるだろう。このまま食べていたい衝動に駆られたが、これはガーネットのものだ。
すぐに返すと、ガーネットに事細かに感想を求められた。
私が目をつけたものも馬鹿にできないでしょおと自慢げに。
と、大きなクレープをペロリとたいらげたガーネットは口の中の甘さの余韻に浸りながら、ふと隣のベンチに来た夫婦に目を向けた。
夫の方が押しているのは最新式の浮遊型ベビーカーだろうか。
ガーネットが興味を持ったのは、そのベビーカーの中身の方だ。
「ふう、今日はすごしやすい天気でよかったな」
「そうね。今くらいの季節が丁度いいかも。この子も……わっ」
仲睦まじい夫婦の会話をぶった切ったのは、いつの間にかベビーカーに接近していたフードとマントで身を隠した何者かだった。
突然不審者が来たものだから、夫婦はどう対応していいかわからず、戦々恐々としている。
「ちっちゃぁい。なにこれ、すっごいちっちゃいわよぉ?」
聞こえてきたのは、屈託のない綺麗な少女の声。顔を上げ、太陽光に照らされたフードの中には、褐色赤目の美しい顔。
その発言にすっかり毒気を抜かれてしまった若夫婦は笑顔を向け……。
「ついこないだ生まれた私たちの赤ちゃんなの。かわいいでしょう?」
「赤ちゃん……。へぇ、噂には聞いてたけど、本当に小さいのねぇ」
と、母親が赤ん坊を抱き上げてよく見えるようにガーネットに近づけた。
先ほどまで気持ち良く寝ていたのに抱き上げられたものだから、少しばかり赤ん坊はぐずってしまった。
しかし、ガーネットの好奇心まみれの表情を見るなりキョトンとしてしまっていた。
その小さな手をガーネットに向かって伸ばそうとしてきたところ……。
「だめよぉ。あたしに触ると真っ黒になっちゃうわよぅ」
と、自ら身を引いて赤ん坊の手から離れてしまった。
本当はその小さな手を握ったり、マシュマロのような頬をつついたりつねってみたりしたいのだが。
それはできない。
「しどぉも昔はこれくらい小さかったのかしらぁ。不思議ぃ」
人懐こい赤ん坊のようでしきりにガーネットに向かってその小さな両手を伸ばしてくる。
その愛らしい様子に、ガーネットはなにかあたたかい感情が胸に芽生えるのを感じ……。
「ねぇ。赤ちゃんってどうやって作るのぉ?」
と、いう夫婦両名が戸惑ってしまうような質問を投げかけてしまった。
しかしガーネットからすれば知らないことを純粋に聞いているだけであるため、その戸惑いの意味がわからなかった。
その純粋な質問に何とかして答えなければと考えた母親の方が、ガーネットに言った。
「あなたが一生一緒にいたいなって思える男の人を見つけて……お互い愛し合っていれば自然に来てくれるものなのよ。好きな人はいるのかな?」
「好きな人ぉ?」
と、ガーネットは後ろでうたた寝している男に視線を移し……。
「唯一、あたしと一緒に歩ける男ならいるけどぉ」
「ふふ。私もきみくらいの時はそういったこと、よくわからなかったかな。いつか、必ずわかる時が来るよ」
「ふぅん……たしかによくわかんないわぁ。ねー」
「あぶ」
ガーネットが赤ん坊に同意を求めると、それに応じるように声を出してもらえた。
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