ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第5節6部—ステイシス、拘束—
「んあ!!」
今まさに、大量破壊兵器としての攻撃の一部、その威力を解放しようとしていたステイシスが、勢い余って床に倒れこんだ。
展開していた赤い光の矢は全て消え、無数の白い髪に戻り舞い散った。
「大丈夫か!?」
「んく……。いったぁい」
「拘束衣が……」
倒れこんだステイシスの足、そして腕は拘束衣の拘束帯によって強制的に縛られていた。それにより、動きを封じられた彼女は床に倒れこんだのだ。
「こちらが何の対策もせずにその生物兵器を奪おうとすると思ってたの? まあ、なんでも電子制御に頼ろうとするのは問題よねぇ」
ステイシスの拘束衣は、自動で着用者の動きを封じるものだった。いつ暴れ出すかわからないほど、不安定な彼女を縛る物だ。緊急の際は誰でもその拘束衣を有効にできるよう、セキュリティなどかけられてはいない。
真月も、のちに簡単に乗っ取れたと言ったほどだ。
「解けぇ……!! このぉ……んんー!!」
化け物じみた身体能力を誇るステイシスだったが、自分を縛るこの拘束衣には歯が立たないようだ。
床に倒れたまま、立ち上がりもせずにもがいていた。
「おいおい、そんな荷物抱えてどうするつもりよ? まさか逃げるつもりじゃねぇだろな?」
「随分と軽い荷物だ。なんとかなるさ」
銃を敵に向けながら、倒れたステイシスを担ぎ上げた雛樹を、飛燕は嘲笑した。
執念深いことは悪くない。だが、この状況でこれは良くない。ただしつこいだけだ。逃げられるわけがないのだから、さっさとステイシスを渡して己だけ逃げればいいものを。
「強がりもそこまでだっつーの。引き際すら見えねぇのかよ」
「引き際をわきまえていないのはお前たちの方だ」
「ふーん、言うじゃん。どうわきまえて——……」
いないのか、問おうとした時だった。けたたましいサイレン音と、あかいランプが明滅しだしたのは。
「もう来やがったのか!? はやすぎねぇかよさすがによ!」
雛樹の通信機に、葉月から連絡が入っていた。“センチュリオンテクノロジーのウィンバックアブソリューターが二機、その艦を囲んでいる”と。
海上の方では、他企業の援軍が到着したようで、そこを任せた結月静流の特殊二脚機甲ブルーグラディウスと、アインス・ノックノックの特殊二脚機甲コバルトスケイルが海中へ潜り、潜水艦を取り囲んでいた。
《こちら、センチュリオンノア、特殊二脚機甲部隊です。貴艦は包囲されています。いますぐ浮上し、投降しなさい》
静流の声が、艦内部に響き渡っている。通信をつなぎ、放送しているのだろう。
「だとさ、どうする。飛燕大佐」
「はぁん? 投降するわけーねーじゃん、バカじゃねーのお前。想定の範囲内だっつーの。ちょい早かったが、人型の機械二機ならまだなんとかなるぜ。まあ急がねえといけねぇが?」
「ほら、侵入者にはご退場願いなさい? 私の愛しい怪物ちゃん」
激しい悪寒。先ほどから動き出していた水槽の中のドミネーターの反応が活性化したのを感じた。右目が赤く染まった直後、ステイシスを投げて遠ざけたと共に、その水槽が弾け飛び黒く巨大な塊が雛樹の体を捉えた。
直撃。
ドミネーターによる強烈な一撃をもらった雛樹は、その部屋の壁に叩きつけられた。
胸部、脚部、頭部、腕、体の全てを抉る、もはやプレス機にやられたのではないかというほどの一撃。
強烈な打撃で絞り出された肺の空気を補充する間も無く、二撃目をもらう。
その二撃目で、壁は凹み、さらに追撃の三撃目。
壁が抜け、その向こうの格納庫へすっ飛ばされた雛樹は一、二度ほど硬い床を跳ねた後静止した。
今まさに、大量破壊兵器としての攻撃の一部、その威力を解放しようとしていたステイシスが、勢い余って床に倒れこんだ。
展開していた赤い光の矢は全て消え、無数の白い髪に戻り舞い散った。
「大丈夫か!?」
「んく……。いったぁい」
「拘束衣が……」
倒れこんだステイシスの足、そして腕は拘束衣の拘束帯によって強制的に縛られていた。それにより、動きを封じられた彼女は床に倒れこんだのだ。
「こちらが何の対策もせずにその生物兵器を奪おうとすると思ってたの? まあ、なんでも電子制御に頼ろうとするのは問題よねぇ」
ステイシスの拘束衣は、自動で着用者の動きを封じるものだった。いつ暴れ出すかわからないほど、不安定な彼女を縛る物だ。緊急の際は誰でもその拘束衣を有効にできるよう、セキュリティなどかけられてはいない。
真月も、のちに簡単に乗っ取れたと言ったほどだ。
「解けぇ……!! このぉ……んんー!!」
化け物じみた身体能力を誇るステイシスだったが、自分を縛るこの拘束衣には歯が立たないようだ。
床に倒れたまま、立ち上がりもせずにもがいていた。
「おいおい、そんな荷物抱えてどうするつもりよ? まさか逃げるつもりじゃねぇだろな?」
「随分と軽い荷物だ。なんとかなるさ」
銃を敵に向けながら、倒れたステイシスを担ぎ上げた雛樹を、飛燕は嘲笑した。
執念深いことは悪くない。だが、この状況でこれは良くない。ただしつこいだけだ。逃げられるわけがないのだから、さっさとステイシスを渡して己だけ逃げればいいものを。
「強がりもそこまでだっつーの。引き際すら見えねぇのかよ」
「引き際をわきまえていないのはお前たちの方だ」
「ふーん、言うじゃん。どうわきまえて——……」
いないのか、問おうとした時だった。けたたましいサイレン音と、あかいランプが明滅しだしたのは。
「もう来やがったのか!? はやすぎねぇかよさすがによ!」
雛樹の通信機に、葉月から連絡が入っていた。“センチュリオンテクノロジーのウィンバックアブソリューターが二機、その艦を囲んでいる”と。
海上の方では、他企業の援軍が到着したようで、そこを任せた結月静流の特殊二脚機甲ブルーグラディウスと、アインス・ノックノックの特殊二脚機甲コバルトスケイルが海中へ潜り、潜水艦を取り囲んでいた。
《こちら、センチュリオンノア、特殊二脚機甲部隊です。貴艦は包囲されています。いますぐ浮上し、投降しなさい》
静流の声が、艦内部に響き渡っている。通信をつなぎ、放送しているのだろう。
「だとさ、どうする。飛燕大佐」
「はぁん? 投降するわけーねーじゃん、バカじゃねーのお前。想定の範囲内だっつーの。ちょい早かったが、人型の機械二機ならまだなんとかなるぜ。まあ急がねえといけねぇが?」
「ほら、侵入者にはご退場願いなさい? 私の愛しい怪物ちゃん」
激しい悪寒。先ほどから動き出していた水槽の中のドミネーターの反応が活性化したのを感じた。右目が赤く染まった直後、ステイシスを投げて遠ざけたと共に、その水槽が弾け飛び黒く巨大な塊が雛樹の体を捉えた。
直撃。
ドミネーターによる強烈な一撃をもらった雛樹は、その部屋の壁に叩きつけられた。
胸部、脚部、頭部、腕、体の全てを抉る、もはやプレス機にやられたのではないかというほどの一撃。
強烈な打撃で絞り出された肺の空気を補充する間も無く、二撃目をもらう。
その二撃目で、壁は凹み、さらに追撃の三撃目。
壁が抜け、その向こうの格納庫へすっ飛ばされた雛樹は一、二度ほど硬い床を跳ねた後静止した。
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